こころと魂の健康(7)福音という名の律法 渡辺俊彦

2014年11月17日17時57分 コラムニスト : 渡辺俊彦 印刷
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+渡辺俊彦氏

先日、定年退職された方が教会を訪ねて来られました。「なかなか教会は敷居が高くて中に入ることができませんでした。教会の回りを何回かうろうろし勇気を振り絞ってやっと入りました」と話されました。昔も今も変わらない教会に対する感覚の一つは、「教会は敷居が高い」ということです。人々は、大きな勇気と決断を持って教会を訪ねます。そんな思いまでして、人は何かを求めて教会の敷居を越えるのです。思い起こせば、私たちも同じ思いで教会を訪れたのではないでしょうか。やがて、イエスを救い主と信じ、洗礼を受け神の民とされます。そして、共同体の一員として教会生活が始まります。

ところが、教会生活が始まりしばらくすると「何かおかしい」と感じ始める人が少なくありません。私もその一人でした。何がおかしいのでしょうか。福音は慰めと解放の言葉です。それにも関わらず、「お酒、映画、遊びなどは駄目」という言葉が耳に入って来ます。禁止令が多いのです。それに従わないと、霊性を破壊するばかりかキリスト者としてふさわしくないと思っているのです。この禁止令がいつのまにか「福音という名の律法」となって語られていることころで起こる混乱です。

ある人が、どうしても見たい映画がありました。何とかして忙しい時間を調整し映画館の前に立ったのです。ところが、映画館の看板の中から誰かに見られているような感じがして恐怖感とともに罪責感が自分を責めるのです。そして、映画館から逃げるように帰り悔い改めたというのです。私は、よく似たような出来事を見聞きします。

福音は人を自由にするものです。しかし、「福音という名の律法」は、むしろ人々を不自由にしてコントロールしてしまうことがあります。また、「福音という名の律法」は、人の心や信仰及び霊性を傷つけ、精神疾患を起こすこともあるのです。そればかりか、共同体の霊性をも傷つけてしまいます。そうならないためには、福音は何であり何でないかを吟味すればよいのです。神が創造したものにひとつも悪いものはありません。創造の神を知っているキリスト者こそ、人生を誰よりも自由に楽しむことができるのです。

教会に人々は、何らかの問題解決や癒やし、自分らしい生き方や生きる意味を求めて尋ねて来られます。特に現代人は、深い心の傷(トラウマ)を負っています。誰でも、傷を負いたくありません。できれば避けたいのが普通の感覚です。しかし、傷つくことを避けることはできません。私たちは、避けることの出来ない心の傷が癒やされ、感情が回復されることを教会に期待しています。確かに福音は、傷ついた感情を回復することができます。しかし残念ながら、神の共同体が傷ついた感情をさらに抑圧することがあります。

福音を福音として語り提供するために、語り手が癒やされていなければ、語り手の怒りの感情が会衆に伝わります。語り手が癒やされていなければ、慰めの言葉(福音)が裁きの言葉になります。そして、語り手と会衆の間に感情的な問題が生じるのです。語り手の人生経験や生育史で受けてきたものがフィルターとなって、福音の非福音化が起こることがあります。誰よりも福音の語り手が自己吟味、自己点検することが大切です。

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渡辺俊彦(わたなべ・としひこ)

1957年生まれ。多摩少年院に4年間法務教官として勤務した後、召しを受け東京聖書学院に入学。東京聖書学院卒業後、日本ホーリネス教団より上馬キリスト教会に派遣。ルーサーライス神学大学大学院博士課程終了(D.Mim)。ルーサーライス神学大学大学院、日本医科大学看護専門学校、千葉英和高等学校などの講師を歴任。現在、上馬キリスト教会牧師、東京YMCA医療福祉専門学校講師、社会福祉法人東京育成園(養護施設)園長、NPO日本グッド・マリッジ推進協会結婚及び家族カウンセリング専門スーパーバイザー、牧会カウンセラー(LPC認定)。WHOのスピリチュアル問題に関し、各地で講演やセミナー講師として活動。主な著書に『神学生活入門』『幸せを見つける人』(イーグレープ)、『スピリチュアリティの混乱を探る』(発行:上馬キリスト教会出版部、定価:1500円)。ほか論文、小論文多数。

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