こころと魂の健康(12)心の刃 渡辺俊彦

2015年1月26日15時44分 コラムニスト : 渡辺俊彦 印刷
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+渡辺俊彦氏

先日、友人からカウンセリングを依頼する電話がありました。職場に情緒不安定な人がいるので話を聞いてあげてほしいということでした。早速、時間を調整しその友人の会社に向かいました。会社に到着するやいなや当人に紹介され、カウンセリングが始まりました。この方は大変にまじめで、コツコツ仕事をする管理職の方でした。この方は、何でも自分で引き受け、ミスのないように気配りをする方でした。そして、完全にこなさなければならないと一生懸命に仕事をしてきたというのです。彼は、自分の過去の心の姿に気がつき始め、涙を流しはじめました。今までその様に仕事をするのが当たり前と思い頑張ってきた自分。そして、完全に出来ないと責めてしまう自分について話し始めたのです。やがて、カウンセリングが終わりました。

これで務めを終え、帰宅しようとしました。すると友人は、もう一人の社員を連れて来ました。そして、「この人もお願いします」と私に預けて行きました。帰ることができなくなりました。覚悟を決め、カウンセリングを開始しました。

二人目の方は、「最近どうも涙もろくて駄目なんです」「原因が分からないのですが、涙が出て仕方がありません」と話し始めました。この状態が2年前頃から続いていると言います。いつも、自分の心の中に「お客さんに満足をしてもらうために一生懸命に努力しなければならない」という思いがあるというのです。そればかりか、同僚が仕事の失敗で他の部署に異動させられる姿を見て来たこともあり、「もっと努力しなければ異動となってしまうという恐怖感がある」ことを語り出しました。この方は、常に緊張しており心をコントロールしながら生活していたのです。すでに限界が来ていたのです。

私たちの周囲には、大変頑張っている方々が多いということを感じます。子どもも、お大人も、皆頑張っています。精一杯頑張っているから辛くなるのです。そして、ある人たちは鬱になってしまいます。鬱的傾向を持つ人、鬱になってしまう人の中にある心のメッセージがあります。それをカウンセリングではドライバー(駆り立てるもの)と言います。どんなメッセージがあるでしょうか。①完全であれ②急げ③もっと努力せよ④他人を喜ばせよ⑤強くあれ、です。これがないと自分が受け入れられないと感じています。

これらの心のメッセージは、心の刃です。自分で自分の心を串刺しにしているのです。患者の「患」という字は心を刺すということです。ドライバーは、そういう姿ではないでしょうか。

このような方々に次のような言葉をかけてあげましょう。①「完全であれ」に対して「そのままで十分ですよ」②「急げ」に対して「ゆっくりでいいですよ」③「もっと努力せよ」に対して「そこまで出来ればいいですよ、十分ですよ」④「他人を喜ばせよ」に対して「もっと自分を大切に」⑤「強くあれ」に対して「そんなに頑張らなくてもいいよ」。

パウロは霊的鬱であったという評価もあります。私たちは、霊的側面でドライバーがあります。そのドライバーが霊的鬱を駆り立てることがあります。特に、奉仕の中に表れてきます。そんな時、他者だけではなく自分自身にも慰めの言葉を語りかけると楽になるはずです。

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渡辺俊彦(わたなべ・としひこ)

1957年生まれ。多摩少年院に4年間法務教官として勤務した後、召しを受け東京聖書学院に入学。東京聖書学院卒業後、日本ホーリネス教団より上馬キリスト教会に派遣。ルーサーライス神学大学大学院博士課程終了(D.Mim)。ルーサーライス神学大学大学院、日本医科大学看護専門学校、千葉英和高等学校などの講師を歴任。現在、上馬キリスト教会牧師、東京YMCA医療福祉専門学校講師、社会福祉法人東京育成園(養護施設)園長、NPO日本グッド・マリッジ推進協会結婚及び家族カウンセリング専門スーパーバイザー、牧会カウンセラー(LPC認定)。WHOのスピリチュアル問題に関し、各地で講演やセミナー講師として活動。主な著書に『神学生活入門』『幸せを見つける人』(イーグレープ)、『スピリチュアリティの混乱を探る』(発行:上馬キリスト教会出版部、定価:1500円)。ほか論文、小論文多数。

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