人工知能(AI)の倫理的な使用に取り組む英キリスト教団体「AIクリスチャン・パートナーシップ」(AICP)は14日、「キリスト教ミニストリーのためのAIガイドライン」(英語)を発表した。英ケンブリッジに拠点を置くファラデー科学・宗教研究所と共同で開発した実践的な資料で、教会指導者がAIを賢明に使用するための手助けとなることを目指している。
多くの教会でAIが「静かに導入」されている現状を受け、ガイドラインは、説教や牧会、教会運営におけるチャットGPTやジェミニ、コパイロットなどの生成AIツールの使用に焦点を当てている。
AIがもたらす倫理的、牧会的、実践的な影響を探究するとともに、日々の活用に関する提言や、各教会がAIに対する立場を明確にするため、自らの状況に合わせて調整できる声明文のテンプレートも提供している。
ガイドラインは主に教会指導者を対象にしたものだが、倫理的な原則と実践的な提言は全てのクリスチャンに関連していると著者らは述べている。
AICPの創設者であるクリス・ゴスワミ氏は、教会がなんとなく流されるままAIを導入すべきではないと警告する。
「AIはミニストリーにとって素晴らしい資産になり得ますが、私たちにファストフード版のミニストリーを残すことにもなりかねません。ソーシャルメディアと同様に、AIの影響を理解できるようになるのは、ずっと後になってからかもしれません。だからこそ、私たちは教会が先見の明を持って、今この問題について真剣に検討することを奨励するのです」
ガイドラインは今年初め、4教派の教会で試験的に導入され、専門家による検討を受けた後、寄せられたフィードバックを踏まえて改訂されたものが公表された。
検討されているテーマには、教会がAIをどのように活用すべきかだけでなく、どのような場合にAIの使用を控えるべきかも含まれている。
ガイドラインは、教会の運営管理、調査、翻訳、創造性の支援といった分野で、AIの利点を強調している。しかし一方で、不正確な情報、批判的思考の喪失、データプライバシーに関する懸念、霊的形成の衰え、AIが意味ある人間同士の交流を置き換えてしまう可能性などのリスクについても警告している。
AIは身体性、道徳的主体性、「神との関係」を築く能力を欠いているため、人間によるミニストリーを代替することは決してできないとガイドラインは述べている。
そのため教会に対し、AIを「専門家ではなくインターン」として扱うよう促しており、AIが生成した素材は人間が慎重に確認した上で、一から作らせるのではなく、主に人間が作ったものの吟味や推敲(すいこう)に用いることを推奨している。
ファラデー科学・宗教研究所の教会エンゲージメント責任者であり、AICPの中核チームのメンバーでもあるルース・バンスウィッツ氏は、教会が責任を持ってAIを使いこなすためには実践的な支援が必要だと言う。
「これらのガイドラインは歓迎すべき貢献であり、クリスチャンが思慮深く責任を持ってAIに取り組むよう促すものです」
ガイドラインは、規則や方針を細かく定めた文書、AI倫理に関する学術的議論、過度に単純化された助言のいずれにも偏らないバランスを取ることを目指しており、規模や教派を問わずあらゆる教会が利用しやすいものとなっている。
ガイドラインは、教会活動におけるAIの役割を巡る議論が活発化する中で発表された。ファラデー科学・宗教研究所は昨年11月、AIの進歩が人間の尊厳や人間関係、霊的形成、人間の本質にどのような影響を与えるかを調査するため、グラハム・バッド氏が率いる「人間性のためのAI研究ハブ」を立ち上げた。
この取り組みでは、神学者や哲学者、心理学者、コンピューター科学者らが協力し、人間の繁栄を損なうのではなく支援する形で、AIをどのように開発・活用し得るかを探究している。
米キリスト教世論調査機関「バーナグループ」などが3月に発表した調査報告書(英語)によると、多くの教会指導者が、文章作成やコミュニケーション、コンテンツ作成などの支援ツールとして、AIを既に使用している一方、その使用を管理する正式な方針を定めている教会は比較的少ない。
調査では、盗作やデータプライバシー、説教の真正さへの懸念に加え、牧師と会衆の間の信頼関係が損なわれかねないことへの懸念も広く共有されていることが明らかになった。
教会がAIをいかに扱うかというテーマは、著名なキリスト教思想家らによっても取り上げられている。
5月にロンドンで開催された英キリスト教放送協議会(CBC)主催の「リバイブ2026」で講演した数学者のジョン・レノックス氏(オックスフォード大学名誉教授)は、医学や聖書翻訳などの分野におけるAIの可能性を歓迎する一方で、AIへの過度な依存が批判的思考を弱め、社会を実質的に怠惰にする恐れがあると警告した。さらに、誤情報やディープフェイクによる欺瞞(ぎまん)のリスクが高まっていることについても警鐘を鳴らした。

















