こころと魂の健康(19)成育環境を豊かにするために 渡辺俊彦

2015年5月4日07時19分 コラムニスト : 渡辺俊彦 印刷
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昨今、「子どもの貧困」ということが報道されるようになりました。子どもの貧困の背景にあるものは家庭の崩壊です。この家庭の崩壊の原因は夫婦関係の破綻です。私は献身する前、大学を卒業し少年院で法務教官として勤務しました。少年院は矯正教育施設です。そこで生活する少年たちの姿を通して教えられたことがあります。私は、大学で子どもの人格形成に大きな影響を与えるのは環境であるということを学びました。しかし、彼らの育った家庭環境を研究しているうちに気がついたことがありました。それは、確かに人間の人格形成に影響を与えるのは環境ですが、その環境をつくる夫婦関係の善し悪しが大きく影響しているということです。

ですから、夫婦関係の善し悪しこそ重要な鍵となるということになります。では、夫婦関係を豊かにするためには何が必要なのでしょうか。その第一は、「お互いにいたわり合う」ことです。私たちは、結婚当初は「お互いにいたわり合う」ことができていたはずです。これを維持することが必要です。しかし、現実はうまくいきません。そこで大切なことは、お互いに「パートナーを理解する」ことです。次に、コミュニケーションの促進です。基本的なコミュニケーションの内容として以下のようなことが求められるでしょう。

1)私はパートナーに何を期待しているのか。

私たちは、お互いに対話しながら具体的に話し合うことが大切です。

2)パートナーは私のどこを愛してくれたのか。

私たちは「自分のような者を愛してくれた」と思うことがあります。この言葉は、「自分を無価値な者」と言っているようなものです。そうではなく、私たちは、愛される価値のあるひとり一人であることを確認する必要があります。

3)互いにパートナーの家族について情報を提供しているか。

具体的に、パートナーは養育者を「反面教師として見ているのか」「理想像として見ているのか」などです。また、養育者とどのような関係を築いてきたのかも大切な事柄です。

私たちは、自分が産まれ育った家庭で学習したものが夫婦関係において様々出てくるものなのです。また、子どもの頃「傷ついた自分」「良い子でいた自分」「わがままな自分」「寂しかった自分」など我慢し抑圧してきたそれ自体が感情です。これらの感情が夫婦関係において、傷つき合う原因のひとつです。夫婦関係で傷つき合うとき、そこにお互い何らかのこだわりがあるものです。そのこだわりとは、前述した「子どもの頃の私」なのです。

このような時に助けになるのがコミュニケーションのあり方です。私たちは、分かっているけれども難しいと感じてしまいます。その通りです。一番難しいのはコミュニケーションです。だからこそ、養育者から何を学習し、どんな感情を我慢し抑圧してきたのかを適切に伝えることが大切です。その結果、夫婦関係が円満になり良き環境が生じ「家庭が祝福に向かう」のです。祝福された家庭の秘訣は、お互いいたわり合うコミュニケーションではないでしょうか。

パウロは教会について「かっこうの良い器官にはその必要がありません。しかし神は、劣ったところをことさらに尊んで、からだをこのように調和させてくださったのです。それは、からだの中に分裂がなく、各部分が互いにいたわり合うためです。もし一つの部分が苦しめば、すべての部分がともに苦しみ、もし一つの部分が尊ばれれば、すべての部分がともに喜ぶのです」(Ⅰコリント12:24~26)と教えています。パウロは「調和」という言葉を使っています。この調和は「シンフォニー」(symphony)です。この言葉はギリシャ語の「混合されブレンドされた」という意味からきているようです。パウロは続いて「いたわり合う」という言葉も使っています。

神の家族である教会は、お互いの弱さ、得意、不得意、賜物などが混合されブレンドされお互いいたわり合いながらキリストの教会を形成していくものです。私たちの家庭も教会と同じように、夫婦の様々なものが混合されブレンドされ、お互いいたわり合うところに健全な成育環境が形成されていくのではないでしょうか。

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渡辺俊彦

渡辺俊彦(わたなべ・としひこ)

1957年生まれ。多摩少年院に4年間法務教官として勤務した後、召しを受け東京聖書学院に入学。東京聖書学院卒業後、日本ホーリネス教団より上馬キリスト教会に派遣。ルーサーライス神学大学大学院博士課程終了(D.Mim)。ルーサーライス神学大学大学院、日本医科大学看護専門学校、千葉英和高等学校などの講師を歴任。現在、上馬キリスト教会牧師、東京YMCA医療福祉専門学校講師、社会福祉法人東京育成園(養護施設)園長、NPO日本グッド・マリッジ推進協会結婚及び家族カウンセリング専門スーパーバイザー、牧会カウンセラー(LPC認定)。WHOのスピリチュアル問題に関し、各地で講演やセミナー講師として活動。主な著書に『神学生活入門』『幸せを見つける人』(イーグレープ)、『スピリチュアリティの混乱を探る』(発行:上馬キリスト教会出版部、定価:1500円)。ほか論文、小論文多数。

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