ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会(東京都新宿区)で6月29日、新主管牧師就任式・祝賀会が行われた。同教会を半世紀以上にわたって牧会してきた峯野龍弘牧師が、主管牧師としては退いて元老牧師となり、金聖燮(キム・ソンソブ)副牧師が新たな主管牧師として就任した。
就任式は同日午前の礼拝の中で行われ、ウェスレアン・ホーリネス教団委員長の岡田順一牧師が司式をした。岡田牧師が、「主の栄光のために、その身をこの職にささげる覚悟がありますか」「御言葉の奉仕者として、ふさわしい言行をなし、この教会の牧師の務めを忠実に果たすことを約束しますか」と問うと、金牧師は「神と教会の前に謹んで約束します」と誓約。その後、岡田、峯野両牧師が金牧師に按手(あんしゅ)の祈りをささげた。
昨年創立120周年を迎えた淀橋教会は、日本のホーリネス派諸教会の源流的教会。初代牧師は笹尾鉄三郎で、その後も車田秋次、中田重治、小原十三司と、いずれもホーリネス派を代表する牧師らが牧会してきた。5代目の峯野牧師の時代からは、各地にブランチ教会やグループ教会などが広がったことで、それらにも責任を負う主管牧師の役職が設けられ、金牧師は、淀橋教会の主任牧師としては6代目、主管牧師としては2代目となる。
金牧師は就任式のあいさつで、「英語の表現で、『大きな靴を満たす(big shoes to fill)』という慣用句があります。大きな功績を残した前任者の後任として、自分には大き過ぎる靴を履く感覚を表す言葉です。まさしく私の現在の心境です」と吐露。しかし、使徒パウロが聞いたイエスの言葉「私の恵みはあなたに十分である。力は弱さの中で完全に現れるのだ」(2コリント12:9)に、「私も耳を傾け、ただそれに従いたい」とし、「自らの経験と力に頼らず、真実と謙遜をもって、不思議なご摂理のうちに、この道に導いてくださった主イエスだけに従う所存です」と話した。

1977年に韓国・釜山で生まれた金牧師は、小学3年生の時、宣教師の両親と共に家族で来日。来日後は、淀橋教会の日曜学校で教会生活を送った。韓国の母教会が長老派であったため、幼児洗礼を受けており、中学生の頃、淀橋教会の夏期洗礼式で信仰告白に導かれた。高校卒業後に渡米し、故ビリー・グラハム氏の出身校としても知られるホイートン大学に留学。帰国後、淀橋教会韓国部から独立したヨハン東京キリスト教会で献身。2000年に渡韓し、長老会神学大学(PUTS)で修士号(牧会学)を取得。05年に大韓イエス教長老会(統合)で牧師按手礼を受けた。
その後再び渡米し、プリンストン神学校で組織神学(教義史)を専攻し、2012年に博士号取得。帰国後、ヨハン東京キリスト教会での牧会を経て、15年に淀橋教会に赴任。ブランチ教会である沖縄共生エルシオン伝道所(現沖縄共生エルシオン教会)を担当し、18年から本教会の副牧師を務めていた。

就任式には、同じプリンストン神学校出身で、現在同校の理事を務めている大韓イエス教長老会明声(ミョンソン)教会主任牧師のキム・ハナ牧師も出席し、祝福の言葉を述べた。
午後に行われた祝賀会は2部制で行われた。第1部は、淀橋教会のインマヌエル聖歌隊とアンサンブル・アガペによる演奏で始まり、元東京交響楽団首席チェロ奏者で牧師のベアンテ・ボーマン氏と、妻でピアノ奏者のルリ子氏が祝賀演奏を披露した。

祝辞では、飯島延浩(山崎製パン社長)、岡田順一(ウェスレアン・ホーリネス教団委員長)、錦織寛(日本ケズィック・コンベンション東京委員会委員長)、片山信彦(ワールド・ビジョン・ジャパン理事長)、山崎忍(ウェスレアン・ホーリネス神学院学院長)の各氏が登壇。副牧師として4年、主任牧師として53年の計57年にわたって淀橋教会を導くとともに、教会外でもさまざまな役割を担ってきた峯野牧師の労をねぎらうとともに、後継となる金牧師に励ましと期待の言葉を送った。
海外からも映像で祝辞が届き、米国からはデビッド・オルフォード(スティーブン・オルフォード説教研修センター総裁)、ロジャー・ウィルモア(アラバマ州教会協力会主幹)、韓国からはキム・ジョンソク(基督教大韓監理会光林教会監督会長)、イ・ジェフン(大韓イエス教長老会オンヌリ教会主任牧師)、キム・ハナ(大韓イエス教長老会明声教会主任牧師)の各氏が、それぞれ祝福の言葉を送った。

最後には、元日本聖書協会総主事の渡部信牧師と、チャーチ・オブ・ゴッド川崎キリスト教会の古波津保秀牧師が祈りをささげた。
第2部は、テノール歌手の兎束康雄氏と、妻でソプラノ歌手の亜紀氏による特別賛美でスタート。淀橋教会の教師、ブランチ教会、グループ教会の各代表者のほか、性別・年代別・言語別の計8つの宣教会が、それぞれの方法で、峯野牧師への感謝と、金牧師への祝福を表現した。最後に登壇したアガペー・ファミリー(日曜学校)の教師と子どもたちは、2人を囲んで手を置き、それぞれ声を出しながら祈りをささげた。

金牧師は祝賀会のあいさつの中でも、「私の恵みはあなたに十分である。力は弱さの中で完全に現れるのだ」(2コリント12:9)を引用。「私自身一人の弱い人間に過ぎません。教会は教師のものでも、信徒のものでもなく、ただ主キリストのものです」と言い、互いの弱さを理解し合い、支え合うとき、「優しいながらも、より強い教会」になることができると語った。その上で、「私と妻のただ一つの願いは、主イエスの良い僕(しもべ)になることです」と言い、「主の前に立つ最後の日、『よくやった。良い忠実な僕だ』と言っていただけるなら、何と幸せでしょうか。淀橋教会の愛する兄弟姉妹と共に、その日を待ち臨み、備えることが、私のこれからの仕事」と話した。

峯野牧師は今後も元老牧師として、牧会に当たる。礼拝の中では、現在も健康に問題がないことを語り、「私が元気なうちに、次の主管牧師を主から頂き、背後からそれをしっかりと支え、守りながら、主の栄光のため、人々の祝福のため、世界の祝福のためにお仕えしていきたいと願って交代をした次第です」と話した。