こころと魂の健康(11)走り方 渡辺俊彦

2015年1月12日07時33分 コラムニスト : 渡辺俊彦 印刷
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+渡辺俊彦氏

走り方と言えば陸上競技、中でもトラック競技を思い起こします。トラック競技には、短距離、中距離、長距離とそれぞれのペース配分や走法があるようです。そして競技者は、誰よりも速く走るために他の選手と比較しながら目標を設定し努力します。それは、栄冠を得るためです。

私たちの人生の走り方はどうでしょうか。また、どんな走り方を学習してきたでしょうか。私は、親からほめられた記憶があまりありません。むしろ、「もっと~せよ」「~より良い成績を取れ」「~に負けるな」「~はこうなのにお前は~だ」などの言葉を沢山受けてきました。その要求に応えるために、自分なりに努力しました。しかし、努力は辛く決して楽しいものではありませんでした。もちろん達成感など味わったことはありません。むしろ、惨めさ、無力感を味わっていたのです。

そんな時、ふと「ウサギとカメ」の昔話を思い起こしました。ウサギとカメは同じスタートラインに立ち、ゴールを目指して走り出しました。途中でウサギは昼寝をします。考えて見ると、そのウサギはウサギの世界で一番早いかどうか不明です。ウサギはカメを見て比較しながら走ったのです。その結果、ウサギはカメの姿が見えなくなり安心して昼寝をしました。ウサギは、優越感を味わっていたのかも知れません。

しかし、カメは違いました。カメは自分の力を知っていました。ウサギよりも速く走ることが不可能です。そこで、カメはウサギと比較せずにゴールを目指しひたむきに走ったのです。結局、カメが最初にゴールしました。

私は、自分の走り方がウサギの様な走り方をしていたことに気がつきました。それは、自分と人を比較しながら、愛されるために努力していた自分の姿です。だからこそ、努力が辛かったのです。それから、カメの様な走り方に変えました。何と楽で自由な走り方でしょうか。ひたすら辛かったものが、努力が楽しいと思えるようになったのです。目標を設定し、カメの様に走る世界は愉快です。もう人と比較し優越感や劣等感を抱く必要がないのです。

私は、学校の授業で「ウサギとカメ」の話をすることがあります。すると、いつも何人かの学生たちが、涙を流しながら聞いています。そして、学生たちは「先生、努力することは大切だと思っています。でも辛かった。私も走り方を変えたいと思います」「楽になりたかったのです」と言います。

私たちの教会生活の中に同じことが起こっています。私たちは「あなたは良い教会員ですね」「あなたは忠実な人ですね」などの評価をもらうために努力していることがあります。また、人と比較しながら奉仕をすることもあります。教会生活がウサギの様な走り方になっているのです。パウロは「キリスト・イエスにおいて上に召してくださる神の栄冠を得るために、目標を目ざして一心に走っているのです」(ピリピ3:14)と言います。パウロは、主イエス様との出会いによって目標設定と走り方が変わりました。その目標設定こそ「神の栄冠を得る」ということです。神の栄冠を得るために走りだしたのです。もう、競争する必要がありません。

自分の走り方を振り返ってみてはいかがでしょうか。

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渡辺俊彦(わたなべ・としひこ)

1957年生まれ。多摩少年院に4年間法務教官として勤務した後、召しを受け東京聖書学院に入学。東京聖書学院卒業後、日本ホーリネス教団より上馬キリスト教会に派遣。ルーサーライス神学大学大学院博士課程終了(D.Mim)。ルーサーライス神学大学大学院、日本医科大学看護専門学校、千葉英和高等学校などの講師を歴任。現在、上馬キリスト教会牧師、東京YMCA医療福祉専門学校講師、社会福祉法人東京育成園(養護施設)園長、NPO日本グッド・マリッジ推進協会結婚及び家族カウンセリング専門スーパーバイザー、牧会カウンセラー(LPC認定)。WHOのスピリチュアル問題に関し、各地で講演やセミナー講師として活動。主な著書に『神学生活入門』『幸せを見つける人』(イーグレープ)、『スピリチュアリティの混乱を探る』(発行:上馬キリスト教会出版部、定価:1500円)。ほか論文、小論文多数。

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