インドネシア、西スマトラ州の高原地帯には、水牛の角のように天に向かって鋭く反り返った独特の屋根を持つ家々が立ち並んでいる。ここに住むのは、世界最大の母系社会を形成する民族、ミナンカバウ族だ。人口は約800万人以上。女性が土地や家を継承し、男性は政治や宗教を司るという独自の文化を持つ彼らは、教育熱心で商才に長け、インドネシア社会に多くの知識人を輩出してきた誇り高き民族である。
しかし、この豊かな文化の背後には、福音に対して鉄壁とも言える「霊的要塞」が存在する。彼らにとって「ミナンカバウ人であること」と「イスラム教徒であること」は、完全に同義語なのだ。彼らの社会には「アダット(慣習法)はシャリア(イスラム法)に基づき、シャリアはコーランに基づく」という格言が根付いており、伝統文化とイスラム教が不可分となっている。
そのため、キリスト教への改宗は、単なる宗教の変更とは見なされない。それは民族への裏切りであり、家族の絆を断ち切り、社会的な身分を失うことを意味する。母系社会の強い結束は、ひとたび異分子が現れたとき、残酷なまでの排斥圧力となって襲いかかるのだ。事実、福音を受け入れた少数の信者たちは、家族から勘当され、地域社会から追放されるという大きな代償を払っている。
長年、宣教師たちはこの厚い壁の前に涙を流し、種をまき続けてきた。そして今、閉ざされた扉の隙間から、わずかながらも確かな希望の光が差し込み始めている。
現地からの報告によれば、夢や幻を通してイエス・キリスト(イサ・アルマシ)に出会い、超自然的な導きによって救われる人々が起こされているという。また、進学や仕事のためにジャカルタなどの大都市へ移住した若者たちが、そこでキリスト信者と出会い、愛と真理に触れて回心するケースも増えている。
ある現地の働き人はこう語る。「私たちは彼らに、文化を捨てて西洋人のようになることを求めているのではありません。彼らがミナンカバウ人としてのアイデンティティーを持ったまま、イエスに従う道を見いだせるように手助けしているのです」
ミナンカバウ族のために祈ろう。彼らの誇り高い文化が福音によって聖められ、真の創造主をあがめる器として用いられるように。改宗を決断し、孤独と戦う信者たちが、教会という新しい家族の中で守り支えられるように。そして、母系社会特有の強いネットワークが、ひとたび福音が入り込んだとき、家族から家族へと救いが広がる「リバイバルの水路」へと変えられるように祈っていただきたい。
■ インドネシアの宗教人口
イスラム教 80・3%
プロテスタント 10・8%
カトリック 3・1%
儒教 0・9%
仏教 0・4%
ヒンドゥー教 1・3%
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