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聖ニコラスの生涯

サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(38)3人の将校

2026年2月4日15時46分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(1)孤児ニコラス+
聖ニコラスの肖像画(画:ヤロスラフ・チェルマーク)

「ミラノ勅令」により、キリスト教が公認されてから12年目を迎えた。ローマ帝国はリキニウスが帝位を退き、コンスタンティヌス大帝によって統一国家の道を歩み出していた。

ニコラスはこの時、既に55歳を越しており、白いひげと赤い服で広く人々に親しまれていた。

そんなある日のこと。ニコラスが司教館で聖日礼拝の説教を準備していると、長老のクリスポとアペレがあたふたと駆け込んで来て言った。「ニコラス司教様。昨夜からの嵐で船が難破し、溺れかけた人が救助されました。漁師たちはそのまま教会に運びたいと言っていますがどうしましょう」

ニコラスは、その人たちを教会に運ぶように言ってから、自分も浜辺に行ってみた。すると、漁師たちが3人の遭難者を担架に乗せて運んでくる途中だった。彼らは司教館の中に運び入れられたが、瀕死の状態だった。

ニコラスは助祭のヨシュアと長老のクリスポ、そしてアペレの手を借りて、ずぶ濡れになった衣服を脱がせて替わりの衣服に着替えさせた。浜辺で漁師たちが水を吐かせ、応急処置を施してくれていたので意識はあった。

ぶどう酒をその口に含ませ、冷え切った体のマッサージを続けるうちに、ようやく彼らの頰に赤みがさしてきた。

「これで大丈夫」。ニコラスはそのまま3人を司教館にとどまらせ、自ら介護をしたので、その翌日に彼らは回復したのだった。

「ニコラス司教様。ご親切にありがとうございます」。3人は礼を言い、自分たちのことを語り始めた。それによると、彼らはコンスタンティヌス大帝の3人の将校だった。

その頃、ゲルマン人が北方からローマに侵入して市民を悩ませていたので、大帝は特別に信頼するこの3人の将校を呼んで、彼らを制覇するよう言いつけたのだった。

しかしながら、敵の首領が潜伏すると見られるビザンチウム目指して航海を続けるうちに、ミラの海上で突然暴風雨に襲われ、船は大破してしまった――ということだった。

3人がミラを出発するその朝、ニコラスは心を込めて彼らのために上等のパンを焼き、大切に取っておいたぶどう酒を添えて出した。「あなた方の航海が安全でありますように」

彼は3人を祝福して言うのだった。「そして、もしこのニコラスのことを思い出してくださったら、一つだけお願いを聞いてください。反乱を起こしたゲルマン人の本拠地を攻めに行くというお話だが、どうか彼らに対し、寛大な処置をとってやってくださいませんか。決して血を流すことなく話し合いで解決してくださるように」。そして彼らに、イエス・キリストの十字架の愛を語って聞かせたのだった。

感動した3人の将校は、お言葉通りにしたします――と約束し、ミラを出航したのだった。そして、ビザンチウムに着くと、彼らはコンスタンティヌス大帝からの特使だと名乗り、ゲルマン人の首領と面会した。そして、自分たちは決して戦争をしかけるためにやって来たのではないこと。あくまでも平和に話し合いをして問題を解決したいのだと伝えた。

「コンスタンティヌス大帝は、できれば血を流すことなく平和的に話し合いで解決することを望んでおられます。それで、あなたがたが条件を出すならそれを聞き入れるとおっしゃいました」

将校の一人がこう言うと、彼らは突然友好的な態度になり、矢を向けていた者もそれを下ろし、首領を中心に円を描いて座った。

「われわれの要求は2つある」。首領は言った。「1つはローマ軍が二度とゲルマン人の村を襲撃して乱暴を働かないこと。2つは戦争に負けて捕虜になっている仲間の兵士たちを全員解放することだ。この2つの条件をのむなら、われわれは二度と再び反乱を起こさないことを誓う」

3人の将校はこれを承知し、帰ったら大帝に報告し、必ずやこの要求が通るようにすると約束した。そして両者は握手をし、ゲルマン人の若者たちはそれぞれの故郷に帰って行った。

それから3人の将校たちはローマに帰り、この報告をしたところ、コンスタンティヌス大帝はことのほか喜び、直ちにゲルマン人の捕虜を全員釈放した。そして3人の将校に勲章を与え、軍隊の中でも特に名誉ある地位に昇格させた。

ローマ市民もまるで英雄が帰ってきたように彼らを迎え、戦争にならずにローマに平和が戻ったことを喜び合うのだった。

しかしながら、コンスタンティヌス大帝の部下の中で、この将校たちをねたむ者がいた。彼らは大帝にある事ない事を吹き込んだので、困った大帝はそれが事実かどうか調べさせる間、3人を牢に入れておくことにした。

*

<あとがき>

ある時、ミラの海岸に3人の遭難者が打ち上げられ、漁師たちの手によって教会に運び込まれました。ニコラスは、助祭や長老たちの手を借りて彼らを手厚く介護した結果、間もなく彼らは意識を取り戻しました。

この3人はコンスタンティヌス大帝の将校たちで、この頃、北方からゲルマン人たちが度々ローマに侵入し、市民を脅かしていたので、ビザンチウムに行って彼らを制覇するよう言いつかったのでした。しかしながら、ミラの海岸近くで暴風雨に遭い、遭難した――というわけでした。

彼らが出発する朝、ニコラスは心を込めて朝食を振る舞い、どうかゲルマン人たちの地に行ったとき、これを攻めたり血を流したりすることなく平和的に解決してほしいと懇願し、彼らにイエス・キリストの十字架の赦(ゆる)しと愛を語って送り出しました。

将校たちはニコラスの話に深く心を打たれ、やがてビザンチウムに着くと、ゲルマン人の首領と直接会って話し合い、友好的に解決してローマに戻ったのでした。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)刊行。また、猫のファンタジーを書き始め、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイで中・高生向けの信仰偉人伝の連載を始める。20年『ジーザス ラブズ ミー 日本を愛したJ・ヘボンの生涯』(一粒社)刊行。現在もキリスト教書、伝記、ファンタジーの分野で執筆を続けている。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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