こころと魂の健康(9)自立 渡辺俊彦

2014年12月15日06時51分 コラムニスト : 渡辺俊彦 印刷
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+渡辺俊彦氏

普段の会話や教育、医療、福祉の現場のなかで「自立」という言葉がしばしば用いられます。あるお母さんは「内の子は人に迷惑ばかりかけて困ったものだ。どうしてこんな子になったのだろう」と言います。また、ある祖父母は「うちの孫は人に迷惑ばかりかけて困ったものだ。親のしつけが悪いからだ」と批判します。この二人には「人に迷惑をかけて情けない」という共通した理解があります。さて、社会に目を向けると、学校現場の教育目標のひとつとして「自立した子ども」というスローガンをよく見聞きします。臨床現場では患者さんに、「自立した生活」を目標として関わります。企業においては、「自立した社員」などという言葉を聞きます。

そして、若者は「人に迷惑をかけていないからよいではないか」「人に迷惑をかけなければ何をしてもよいのだ」と言います。大人たちは、この言葉に違和感を覚えながらも「それは違う」と言えません。なぜなら、私たちは「人に迷惑をかけてはいけません」と教えられ今に至っているからです。その結果、私たちは自立を「自己決定」「自己責任」「人に迷惑をかけないで生きること」などと理解するようになっています。そのような理解を前提として、「人に迷惑をかけてはいけません」と子育てをしてきたのです。

このような自立の意味を突きつめると自己中心、利己主義になります。そもそも人は、一人で生きていくことは出来ません。そればかりか、人は、人に迷惑をかけないで生きることは出来ないのです。健康的な自立とは、「共生」「共存」です。私たちは、互いに迷惑を掛け合いながら生きる存在です。この姿こそ、互いに助け合いながら生きるということです。これが人間関係です。人間関係と書いて「ジンカンカンケイ」と読む人もいるくらいです。私たちは、どのように隣人と助け合い、互いの距離感を保ち生きるかを身につけながら自立していくのです。

神は、イエスにおいて私たちと一緒にいて下さいます。私たちはイエスを必要とし、イエスも私たちを必要としています。だから、神は私たちを用いるのです。これが自立した関係です。神を信じて生きるとは、神との相互依存の中で生きることです。弱い者だけが教会に行き、神を必要とするのではありません。より自立した人間になるために、より主体的人間になるために、神を必要とするのです。私たちは、自分が弱く空しい存在だと知れば知るほど、神なしでは生きることができない者だと分かります。だから、恵みが分かるのです。また、恵みに生かされている自分が分かるのです。

教会の人間関係で生じる問題のひとつは、自立の理解です。様々な奉仕の中で、互いに助け合うこと、迷惑を掛け合うことが出来ないのです。共生、共存が出来ないため、奉仕を自分で抱え込んでしまうのです。そして、「誰も自分の奉仕を理解してくれない」「誰も自分の奉仕を助けてくれない」と不平不満を言い出します。そして、人が自分に振り向いてくれることだけを期待してしまいます。素直に私は、「あなたを必要としています」「助けてください」と言うことができません。私たちは、互いに助け合い必要とされる関係の中で存在理由を発見するものです。神との関係において、それが使命という言葉に変わるのです。

教会が自立することは経済的に安定することではありません。教会の自立は「あなたを必要としています」と互いに認め合うところに生じるのです。それでこそ、教会は慰めの共同体となり連帯性が豊かになるのです。

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渡辺俊彦(わたなべ・としひこ)

1957年生まれ。多摩少年院に4年間法務教官として勤務した後、召しを受け東京聖書学院に入学。東京聖書学院卒業後、日本ホーリネス教団より上馬キリスト教会に派遣。ルーサーライス神学大学大学院博士課程終了(D.Mim)。ルーサーライス神学大学大学院、日本医科大学看護専門学校、千葉英和高等学校などの講師を歴任。現在、上馬キリスト教会牧師、東京YMCA医療福祉専門学校講師、社会福祉法人東京育成園(養護施設)園長、NPO日本グッド・マリッジ推進協会結婚及び家族カウンセリング専門スーパーバイザー、牧会カウンセラー(LPC認定)。WHOのスピリチュアル問題に関し、各地で講演やセミナー講師として活動。主な著書に『神学生活入門』『幸せを見つける人』(イーグレープ)、『スピリチュアリティの混乱を探る』(発行:上馬キリスト教会出版部、定価:1500円)。ほか論文、小論文多数。

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