こころと魂の健康(3)自己概念 渡辺俊彦

2014年9月23日15時35分 コラムニスト : 渡辺俊彦 印刷
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+渡辺俊彦氏

私には、大手企業の人事課に所属する大学の後輩がいます。ある時私は、後輩に採用面接の際「どんな質問をするのか」「何を目的に質問するのか」を尋ねたことがあります。すると、「自己理解がどの程度できているかを知るためだ」というのです。

私たちは、様々な場面で自己紹介を求められることがあります。そのようなとき、「私はどんな人間なのだろう」と改めて考えるのではないでしょうか。私たちは少し考えた後、まじめ、外向的、内向的、明朗快活、陰気、陽気などの表現で自分を紹介するのではないでしょうか。実は、この内容が自己イメージであり自己概念なのです。

そこで大切なことは、自己概念はどのように形成されるか(なぜ、人は自分をそのように見るのか)を知ることです。そのポイントはいくつかあります。その第一は、「他者の評価と反応」です。人は他者が自分に対してどのような評価をしているかに関心を持つものです。その評価によって自己を捉えようとする傾向を持っているものです。クーリー(Cooley, 1902)という人は、このことを「鏡映的自己」という言葉で説明しています。人間は互いに他者の言動を鏡として自己を形成するというものです。

ここでクーリーの主張に耳を傾けてみましょう。クーリーは鏡映的自己の自己形成には三つのことが大きく作用していると言います。第一は、「自分の姿が他者にどのように映っているかの想像」。第二は、「その姿に対する他者の判断に関する想像」。第三は、「これらの想像に伴って生じる自己感情(誇りや恥辱感)」。以上の三つです。思いあたる点があるのではないでしょうか。

ある人は他者に自分がどう映っているか気になって仕方がありません。また、ある人は他者評価が気になって仕方がありません。その他者評価等を過度に気にするあまり、周囲に振り回され自分を見失っている人が少なくないのです。そして、自分を駄目な存在と認識し、息苦しさを感じ生活しています。何をしても自信を持つことができず、不安を抱えてしまいます。自己概念(セルフ・イメージ)が低くなってしまった姿です。

この様な姿は、私たちの霊性にも影響を与えます。神様も人も私を駄目なキリスト者として見、評価しているに違いないと不安を抱えながら教会生活をしてしまいます。思い込みが激しくなってしまうのです。

先日ある教会で、幼児虐待を受けて育った方が洗礼を受けられました。その方と何度か関わりを持ちました。一番困難を感じたのは自己概念が低すぎることでした。それは、人に愛され肯定されることよりも、否定される体験の方が多かったためです。そのため神の愛がわからないのです。ありのままを愛され受容されることがわからないのです。しかし、聖霊は様々なことを通して、そのことを彼に教えて下さったのです。

私たちは、神と人との交わりの中で自己概念を回復することが大切なのです。サクラメント(聖礼典)を中心とした広がりの中で展開される聖徒の交わりとは、そのような交わりではないでしょうか。

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渡辺俊彦(わたなべ・としひこ)

1957年生まれ。多摩少年院に4年間法務教官として勤務した後、召しを受け東京聖書学院に入学。東京聖書学院卒業後、日本ホーリネス教団より上馬キリスト教会に派遣。ルーサーライス神学大学大学院博士課程終了(D.Mim)。ルーサーライス神学大学大学院、日本医科大学看護専門学校、千葉英和高等学校などの講師を歴任。現在、上馬キリスト教会牧師、東京YMCA医療福祉専門学校講師、社会福祉法人東京育成園(養護施設)園長、NPO日本グッド・マリッジ推進協会結婚及び家族カウンセリング専門スーパーバイザー、牧会カウンセラー(LPC認定)。WHOのスピリチュアル問題に関し、各地で講演やセミナー講師として活動。主な著書に『神学生活入門』『幸せを見つける人』(イーグレープ)、『スピリチュアリティの混乱を探る』(発行:上馬キリスト教会出版部、定価:1500円)。ほか論文、小論文多数。

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