2017年に神奈川県座間市のアパートで男女9人を殺害したなどとして、死刑が確定していた白石隆浩死刑囚(34)の刑が6月27日、執行された。これを受け、日本カトリック司教協議会社会司教委員会と日本キリスト教婦人矯風会は、それぞれ抗議する声明や要望書を発表した。いずれも事件の悲惨さを認め、遺族に対しては哀悼の意を示しつつ、死刑制度の問題や、死刑廃止が国際的な潮流であることなどに言及し、死刑制度の見直しを求めた。
日本カトリック司教協議会社会司教委員会は声明(7日付)で、死刑に反対する理由について、たとえ犯罪者であっても、神から与えられた命を生きる不可侵の権利を持っていると考えるからだと説明。昨年末までに、死刑の執行停止を求める国連決議が計10回にわたり採択されていることに触れ、「死刑は人権の核心である生命権を剥奪する残酷な刑罰であるとする理解が、世界的に広がっている」とした。
事件については、「凶悪な犯罪」とした上で、「本来ならば彼(白石死刑囚)は、その罪の重さに気付き、生涯をかけてその責任を負うべきでした」と指摘。そうした中での死刑執行は、「彼が改心し、更生する機会も、遺族に償い、事件で受けた心の傷に深く報いる機会をも、奪ったということでもあります」とした。
日本キリスト教婦人矯風会は要望書(2日付)で、有識者で構成される「日本の死刑制度について考える懇話会」が昨年11月、現行の死刑制度とその運用に対する早急な検討を求める報告書を発表していたことを指摘。「このような状況の中で死刑執行が行われたことに抗議します」とし、昨年10月に無罪が確定した元死刑囚の袴田巌さんの状況にも触れた。
事件については、「遺族にとっては言葉では言い表すことのできない悲しみ苦しみに違いありません」としつつ、「(白石死刑囚が)罪を背負い続ける」ことを求める遺族もいるとし、死刑制度の見直しと、その間の死刑の執行停止を求めた。
声明と要望書はいずれも、石破茂首相と、執行を命じた鈴木馨祐(けいすけ)法相に宛てて出された。
確定判決などによると、白石死刑囚は2017年8~10月、SNSを通じて自殺願望のあった当時15~26歳の男女9人を自宅のアパートに誘い、首を絞めて殺害。このうち女性8人に対しては性的暴行も加えた。所持金などを奪った上で遺体は切断し、室内やごみ集積所などに遺棄した。
鈴木法相は臨時記者会見で、「自己の性的・金銭的欲求を満たすという誠に身勝手な理由から、約2カ月間に9人もの被害者の若く尊い人命が奪われるといった極めて重大な結果を発生させ、社会にも大きな衝撃と不安感を与えた事件」だとし、「慎重な上にも慎重な検討を加えた上で、死刑執行を命令した」と説明した。
日本における死刑執行は、22年7月以来2年11カ月ぶり。7人が死亡し、10人が負傷した08年の秋葉原無差別殺傷事件で死刑が確定した加藤智大元死刑囚(執行時39)の執行が最後だった。