米福音派最大規模のパラチャーチ団体「フォーカス・オン・ザ・ファミリー」の創設者で、福音派の重鎮として知られるジェームス・ドブソン氏が21日、死去した。89歳だった。ジェームス・ドブソン家族研究所が同日、発表した。
同研究所のゲイリー・バウアー上級副会長(公共政策担当)は、発表(英語)の中で次のように述べた。
「ドブソン博士は先駆者であり、深い信念を持つ人物で、その声は世代を超えて、信仰、家族、文化の捉え方を形作ってきました。彼の勇敢なリーダーシップ、誠実さ、そして慈愛は、価値観が変化する世界で数多くの家族が繁栄するための支えとなりました。彼はメンターであり、カウンセラーであり、激動の時代において、真実を伝える確かな声でした」
ドブソン氏の訃報を受け、多くの人がSNS上で哀悼の意を示した。保守派のベストセラー作家でラジオパーソナリティーのエリック・メタクサス氏は、自身のX(旧ツイッター、英語)でドブソン氏を「英雄」と呼び、次のように述べた。
「ドブソン博士を知ることができたことは、私の人生における最大の栄誉の一つでした。彼は神の目的のために信仰を公の場に持ち込むことを恐れませんでした。彼はレースを走り終えました――神の栄光のために!ハレルヤ!私たちも皆、彼の足跡をたどろうではありませんか」
ドブソン氏が創設した団体の一つである「家族政策同盟」(旧フォーカス・オン・ザ・ファミリー・アクション)のクレイグ・デロッシュ会長兼最高責任者(CEO)も、声明(英語)で哀悼の意を表した。
「信仰、家族、聖書の価値観の信頼できる擁護者として、ドブソン博士の遺産は比類ないものであり、彼の生涯にわたった働きは、今も私たちの国を形成し続けています。彼は揺るぎない信念で、結婚の聖性、生命の聖性、親の権利の重要性を擁護しました。これらの原則は、私たちの運動のDNAに織り込まれています」
ドブソン氏は1936年、ルイジアナ州シュリーブポートで生まれた。67年、南カリフォルニア大学で児童発達学の博士号を取得。同大学医学部で小児科の教授を務め、ロサンゼルス小児病院の児童発達と遺伝医学部門のスタッフとして勤務した。
その後、作家として注目を集めるようになる。最初の著書『Dare To Discipline』は、300万部以上を売り上げた。他の代表作には、『Hide or Seek』『What Wives Wish Their Husbands Knew About Women』『Love Must Be Tough』『Parenting Isn't For Cowards』『Children At Risk』『When God Doesn't Make Sense』『Life On The Edge』『Home With a Heart』などがある。
77年、キリスト教に根ざした教育リソースや子ども向けの娯楽リソースで知られる「フォーカス・オン・ザ・ファミリー」を設立。同団体が手がけるラジオ番組は、北米や海外の数千のラジオ局で放送され、ドブソン氏はラジオで幅広く聴かれる人物となった。
ロナルド・レーガン、ジョージ・H・W・ブッシュ両政権下では、大統領諮問委員に任命され、ポルノやギャンブル、10代の妊娠防止などの分野で重要な役割を果たし、人命の尊厳に関する国民的議論の形成に尽力した。また、ドナルド・トランプ第1次政権下では、トランプ氏が組織した福音派指導者の私的諮問機関の一員として参画した。
一方、ドブソン氏の性倫理に関する保守的な見解や広範なロビー活動は、リベラル層からは多くの批判を招いた。
フォーカス・オン・ザ・ファミリーを「過激派グループ」と位置付けている米公民権団体「南部貧困法律センター」(SPLC)は、その説明(英語)の中で、ドブソン氏の言動に広く言及し、次のように述べている。
「ドブソン氏は、現代の反LGBTQ+(性的少数者)および反中絶運動の基盤となった組織の設立、資金調達、プラットフォーム構築に重要な役割を果たした」
「81年、極右の宗教家たちによる強力な秘密結社『国家政策評議会』が結成され、ドブソン、R・J・ラッシュドゥーニー、ジェリー・ファルウェル、トニー・パーキンス、ビバリー・ラヘイ、ティム・ラヘイ、フィリス・シュラフライの各氏が主要メンバーとなった」
ドブソン氏は、2010年にジェームス・ドブソン家族研究所を設立するまで、フォーカス・オン・ザ・ファミリーを率いた。同研究所設立後も、全米配信のラジオ番組「ファミリー・トーク」を新たに始めるなどして、活動を継続した。
昨年7月には、ジョー・バイデン大統領(当時)宛ての公開書簡(英語)を公表し、「国に回復不可能な損害を与える」政策を推進しているとして非難。「大統領、私たちの共和国を支える道徳的および憲法上の枠組みは、あなたの愚かで非米国的な政策により、崩壊の危機にひんしています。私たちは、あなたとあなたの政権が、圧倒的に低い支持率と失敗した政策を真剣に検討し、即座に是正措置を講じるよう強く求めます」などと述べていた。
ドブソン氏の遺族には、64年間連れ添った妻のシャーリーさん、子ども2人、孫2人がいる。