テロと灼熱(しゃくねつ)のサヘル地域で、宣教師キャロル・ウォードは「すでに死んだ者」として、自らの命を主の御手に委ね仕えている。「恐怖以上に、信仰は伝染する」。そう、彼女の献身は3代にわたる宣教師一家の霊的遺産によるところが大きい。彼女の使命である「南北の最も暗いイスラム圏へ福音を前進させる」活動の基盤となっている国が、サヘル地域のちょうど中央に位置するチャドだ。彼女はそこで、武器による戦闘ではなく「祈りで戦う軍隊」を組織し始めたのだ。(第1回から読む)
キャロルが組織したのは、「全国規模の祈りのムーブメント」と現地のチャド人信徒を訓練して送り出す「宣教師訓練学校」だ。両者は、車の両輪のように一体のビジョンを構成する。
ウォードは、祈りの重要性についてこう述べる。「祈りは私たち自身を変容させ、いかなる代償を払っても大宣教命令を果たす意思を持たせるものです」。祈りは、サヘル地帯の暗闇との戦い、そして福音の前進に必要な霊的な力を引き出し、宣教師たちが命を懸けて働きに出るための霊的な援護射撃を提供する。祈りのムーブメントが、全てのチャド人宣教師や支援者の覚悟を形成するのだ。
そして宣教師訓練学校では、祈りのムーブメントの中で立ち上がった「行く」という召命を持つ現地チャド人信者たちに勇気を与え、実際に福音を伝えるための知識と技術を備えさせる。彼ら現地の信者たちは、土地の文化や風習、言語に通じ、そしてその地域でイエスを信じるということがどのような「代償」を伴うのか知る専門の宣教師として最前線に送り出される。
これまでにチャド国内で5期にわたって宣教師訓練学校が開かれ、すでに150人以上のチャド人宣教師が送り出された。彼らは外国人ではない。訓練を受け、霊に燃え、他の誰も行こうとしない場所へ出ていく現地の勇士だ。
そして今、この働きが驚くべき実りをもたらしている。宣教師訓練学校には、かつてキリスト教徒を敵視していたボコ・ハラムのメンバーたちが導かれ、イエスを受け入れるという奇跡が起きている。かつての「死の使者」が「命の使者」へと変えられているのである。
また、ある宣教師たちは東部へ向かい、戦争から逃れてきたスーダン難民の一群の中へと入っていった。そこで彼らが実施した弟子訓練プログラムが豊かに実を結び、最初期の者たちの間だけでも、202人もの人々が洗礼を受けるというリバイバルが起きている。
彼らはただの信徒ではない。死を覚悟して「死の陰の谷」を歩む、訓練された兵士たちだ。その足は、確実に暗闇の領土を奪還しつつある。(続く)
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