アフリカのサヘル地域という “死の前線” で、米国人宣教師が、武器ではなく祈りによる「軍隊」を立ち上げている。
アフリカ大陸の北域、砂と炎と恐怖が混ざり合う厳しい地――それが、サヘル地域だ。地理的には、サハラ砂漠の南縁に東西約4千キロにわたって広がる半乾燥地域で、干ばつ、飢餓、武装勢力の活動が特に深刻な「危機の帯」だ。モーリタニア、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、チャド、スーダンなどが含まれ、宗教、民族、政治が入り混じる複雑な地域である。故にこの地域は「世界のテロ関連死の過半数」が発生する死の前線とも言われている。
そこに一人の米国人宣教師、キャロル・ウォード氏が立っていた。彼女はこう語る。「この土地は、ただ『ふらり』と立ち寄るような場所ではありません。明確な召命がなければ、誰も来ることはできないでしょう」
砂漠の暑さは極限で、40〜45度にも達し得る過酷な自然環境だ。ウォード氏は「私はこの地に、何か抗い得ない野生の呼び声にも似た召命を受けました。それは私の血の奥底にあるものです」と語る。その覚悟の上で、彼女はウガンダ北部、南スーダンなどの紛争地帯で十数年にわたり仕えてきた。他の宣教師や宣教団体が撤退する中、彼女はこの地に、キリストの愛を届けるために留まり続けたのだ。
「ここに住むことができるのは、自分に死んだ者だけです。あなたの命はあなたのものではないのです。悪魔は “すでに死んでいる者” を決して殺せないのです」。そう語るウォード氏の言葉は重い。宣教師の家系で育ち、フィリピンで62年、祖父母らが中国宣教30年という歩みを続け、自宅の壁には父の時代の世界地図が貼られていた。彼らは特にイスラム教地域のために、その地図に手を置いて祈ったという。(続く)
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