東南アジアの海岸線に沿って細長く伸びる社会主義国家がベトナムだ。古くはチャンパー王国やフランス植民地時代を経て、1975年に南北の統一を果たした。ハノイやホーチミンといった都市部の急成長、紅河、メコンデルタの稲作、海洋輸出産業の躍進が見られる一方、山岳地帯の少数民族の貧困や都市部の格差は複雑な社会状況を物語る。
この国で、福音派の宣教は「見えにくいが確かに動いている」段階に入っている。全人口約1億人以上の中でキリスト教徒は約9%、福音派は1〜2%に留まるというデータがある。さらに、この国には119の言語・民族集団があり、そのうち69集団は「伝道がほとんど届いていない」とされており、未到達領域が横たわっている。
だが、その中でも「静かな爆発」が起きている。都市部では教会登録・集会許可の取得が難しい中、非公認の家庭集会、小グループ礼拝、オンライン礼拝といった形態の群れが成長している。公式教会が合法的に活動できる地域は限られており、特に少数民族地域や北部山岳地帯では、いまだ集会そのものが非合法扱いされることもある。そのような制限下にあって、スマートフォンやメディアを通じて聖書メッセージや福音番組を受信する少数民族の証しが増えており、伝道の新しい波が実現している。
次に、少数民族の間での福音の動きだ。特にヒモン族やモンタニャードと呼ばれる山岳部族だ。彼らはほぼ信者がいなかった時代から飛躍して、ラジオの福音放送や地域内の伝道者を通じて大きな変化が生まれている。さらに、ベトナム人ディアスポラ(海外在住ベトナム人信徒)の本国帰還者らが、信仰を携えて帰郷し、故郷で証しを始めているという報告もある。
しかしながら、課題も決して小さくない。礼拝所の登録問題、少数民族教会への迫害、教会財産の没収、信仰告白による差別などが今も続いている。指導者教育、神学訓練も、数、質ともに十分とは言えず、教会の成熟と持続的な成長を支える体制構築が急務だ。
この国で、都市部、山岳部、海岸部に散らばる人々が変革され、教会の成熟を経験するように祈ろう。登録教会、非登録教会、家庭礼拝、少数民族教会が互いに協力し、分断と恐れではなく愛と証しの中で歩むように、そして、ベトナムから海外へ出ていった信徒たちが母国に戻るとき、その歩みが福音の橋渡しとなり、未到達領域へと光を運ぶように祈ろう。
ベトナムという国土に、静かながら確かな「福音のうねり」が広がっていることに感謝して、神がこれを用いて広げてくださるように祈っていただきたい。
■ ベトナムの宗教人口
仏教 52・5%
プロテスタント 2・0%
カトリック 7・7%
無神論 23・3%
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