アラビア半島の広大な砂漠とオアシス、そして岩を削って造られた古代都市の遺跡が点在し、世界で唯一「サウド家のアラビヤ」と、建国王家の名を国名に冠するのがサウジアラビアだ。
同国はイスラムの聖地と石油産業のオイルマネー、近代化が交錯する特別な国だ。首都リヤド、紅海沿岸のジッダ、聖地メッカ・メディナを擁し、イスラム教スンニ派の世界的な盟主として位置付けられる。厳格なスンニ派ワッハーブ主義は国家体制と深く結び付いてきた。1932年に現王国が成立して以来、王族と聖職者という二重支配体制のもとで「イスラムの守護者」として発展を遂げてきた。
そんな国で、今、目立たぬながらも確かな動きが起きている。公にキリスト教を宣教することが禁止されており、現地のイスラム教徒がキリスト教に改宗することは法的に死刑対象とされてきた。だが最近の報告では、王国内で「ムスリム出身の信徒」が増加しており、オンラインや映像を通じた福音の伝達、外国人労働者を通じた交流が静かに進んでいるという。
福音派プロテスタントの視点から見ると、サウジアラビアは「世界で最も福音が届きにくい国」の一つとされながらも、「世界平均を超える成長率」を示すという調査もある。移民労働者として訪れているキリスト教徒たちは、公には集会を持てないものの、家庭礼拝やオンライン礼拝、衛星放送による福音番組により信仰を分かち合っている。
このような環境で注目すべき点がある。第一に、夢とビジョンによる福音の働きだ。多くのサウジの若者や村落の長老が「イエスを夢で見た、幻で見た」と語る証言が散見され、伝道者たちは、これを天からの導きと捉え、この地で伝道の扉が開かれつつある。第二は、デジタルと映像を通じた伝道モデルだ。イスラム背景を持つ人々が、スマホや衛星放送で聖書のメッセージに触れ、そこから秘密裏に信仰へと導かれている。第三に、外国人労働者をハブとした教会ネットワークだ。サウジに滞在する数百万人の外国人の中に少なくないキリスト信者がいて、彼らの家庭集会を中心に、サウジの人々との接点を持ち始めている。
とはいえ、チャレンジは依然として大きい。公的礼拝所が無く、集会が発覚すれば拘束・国外追放されるリスクがある。家庭内の監視、家族からの圧力、文化的な逆風も深刻であり、「信仰が知られれば命取り」という環境は変わらない。そこには祈りが必要だ。
夢や幻を通して、主イエスに出会うサウジアラビアの改宗者たち一人一人の家庭・村・町々に福音の証しが静かに、しかし確実に広がっていくよう祈ろう。オンラインや衛星放送・外国人労働者を通じた教会のネットワークが、リスクを恐れず大胆に伝道し、暗闇を照らす光となるよう祈ろう。
福音の一歩は小さな家庭から始まる。変化は数の飛躍ではなく、一人一人の心の変化からだ。今日、サウジアラビアの地にまた一人、不思議な方法でキリストを見いだす者が起こされるように祈っていただきたい。
■ サウジアラビアの宗教人口
イスラム 92・4%
プロテスタント 0・4%
カトリック 4・7%
正教関係 0・3%
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