メキシコと米国を分かつ砂漠と鉄道、そして壁。そこを越えようと、前政権の時には、数万人、数十万人もの人々が「より良い人生」を求めて旅を続けた。現政権による移民政策が厳格化すると、その数は大幅に減少したものの、今も国境を越えようとする人々は後を絶たない。彼らの多くは中米からの移民であり、ギャングの脅威、貧困、暴力を逃れて故郷を離れた。だが、その危険な旅の道のりの中で、「永遠のいのちをもたらす希望」と出会う人たちがいる。
この国境地域では、福音派の宣教チームが数多く活動している。ある団体は、移民たちでごったがえす列車の上にまで登って聖書と伝道書籍を配布しており、旅する人たちが帰国するにせよ、国境を越えて行くにせよ、何とかしてイエス・キリストの良き知らせを伝えようとしている。
ホンジュラス出身のある若者は夢を求めて国を出たが、福音を聞いて回心した。「自分は国を出て行くだけだと思っていた。ところがイエスは『あなたは自分の国で立ち上がり、妻や子ども、地域のために働きなさい』と告げられました。私は戻る決断をしたのです」。その結果、彼は帰国し、祖国で伝道者になった。
また、ベネズエラから来た別の男は、妻と子どもを捨てて米国へ渡ろうとしていた。そんな彼に、ある宣教師が真心から仕えた。関係が深まると、宣教師は彼に「神との関係が第一です。そして神との関係の延長線上にあなたの妻、そして子どもたちとの関係があります。これが第二です」と教えた。その言葉が胸を打ち、彼は妻と子どもたちへの責任を果たすために国へ帰って行った。
数値では語られないが、旅の途中で出会ったイエス・キリストにある新生の物語が、国境地帯の宣教を通して次々と積み重なっている。
移民たちは長旅の疲労、言語や文化の壁、罪の重み、未来への不安と不確かさにさらされている。だからこそ彼らには、単なる食糧や衣類の支援だけではなく、霊的な必要にも応える働きが求められている。列車の上での会話、小さなグループでの聖書の配布、そして「人生には意味と目的があり、計画がある」というメッセージが必要なのだ。福音のメッセージは、砂漠を渡る人々の心に希望の灯をともしている。
この国境地帯は、単に出発点でも通過点でもない。そこは、彼らが探していたものの答えを見いだす場所、つまりイエス・キリストと出会う可能性のある場所なのだ。困難を背負えど、彼らは逃げるだけではなく、キリストと出会い、立ち上がるように招かれている。神の国が、壁や国境、経済的弱者の影という限界を越えて働いているのだ。
移民を迎え、聖書を手渡し、人生を変える宣教師たちの働きが続くよう祈ろう。国境を越える旅の中で福音を聞いた人たちが、救いと新しい使命を知るために祈ろう。神がこの道を歩む人々に真の自由と希望を与えるように祈っていただきたい。
■ メキシコの宗教人口
カトリック 77・7%
プロテスタント 11・2%
無神論者 3・6%
土着の宗教 1・2%
◇















