カリブ海の真珠と呼ばれる米領ヴァージン諸島は、サン・トーマス島、サン・クロワ島、サン・ジョン島の三島を中心とする群島からなる。透き通る海、世界屈指のビーチ、そして米国領という安定性を背景に、多くの旅行者を引きつけている。17世紀以降はデンマーク植民地として発展し、1917年に米国がこれを購入して以降、自治権を持つ “非編入領” として今日に至っている。
観光業は今も圧倒的な経済基盤であり、年間200万人以上がこの島々を訪れる。新型コロナ以降の回復も順調で、ホテル、クルーズ船、観光サービスがGDPの大部分を占める。一方で、近年は製造業とサービス業の多角化も進み、失業率は低下傾向にある。
しかし、急速な観光依存は、島の社会構造に深い影響を与えてきたといわれている。外からの観光客と富の流入は、経済を潤す一方で、負の側面もある。性売買の拡大、薬物の影響、家庭崩壊といった「見えない傷」を社会に残した。物質的に祝福されているように見える南国の島々だが、内側には深い霊的な空洞が広がっている。
この地の教会には、モラヴィア派、カトリック、メソジスト、ペンテコステ派など多様な教派が存在する。18世紀、モラヴィア兄弟団はこの地で著しい宣教の歴史を築いたが、現在は多くの教会が形骸化し、ビジョンと活力を失っている。一方で、プエルトリコ系移民の増加によるカトリック教会の成長、カリスマ運動による若者層の回復、小規模な福音派グループの着実な前進など、希望の兆しも見えている。とはいえ、島全体の霊的空気を変えるほどのリバイバルには、まだ至っていない。
近年カリブ海諸島や中南米から多くの移民が流入し、文化的にも宗教的にも多様な社会となった。特に、ヒスパニック移民、観光客、ラスタファリアンの若者、性産業に関わる人々などに対する特別な働きかけが必要とされている。
観光客の多くは短期間の滞在だが、その「旅の一瞬」は、福音と出会う貴重な機会にもなり得る。現地の牧師たちはこう語る。「ここは神が人々を招く “交差点” です。観光は、単なる娯楽以上の意味を持っています。旅の途上で神に出会う瞬間があるのです」
米領ヴァージン諸島は、表面的には繁栄を極めるが、内実には霊的な闇を抱えている。観光と富に流され、家庭の価値、結婚観、道徳が揺らぐ中で、福音が人々の生き方と家庭を再び立て直す力となるように祈ろう。また、地元教会が活気を取り戻し、移民、観光客、若者たちに向けて一致した宣教ビジョンを持てるように、そして、この島々が再びカリブ海全域に福音を届ける灯台となるよう、祈っていただきたい。
■ 米領ヴァージン諸島の宗教人口
プロテスタント 31・5%
カトリック 26・9%
聖公会 10・1%
無教派 19・1%
重複 -8・2%
無宗教 3・5%
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