欧州全域で2024年、反キリスト教ヘイトクライム(憎悪犯罪)とされる事件が、2211件発生していたことが、最近の報告書で明らかになった。大半は英国、フランス、ドイツ、スペインの4カ国で発生しており、フランスがその中で最多を占めた。
報告書(英語)は、「欧州のキリスト教徒に対する不寛容・差別監視団」(OIDAC)が作成したもの。23年の発生件数は2444件で、それに比べわずかに減少したものの、24年に発生した事件はより暴力的な性質を帯びているという。
キリスト教徒個人を狙った事件は、23年の232件から24年は274件に増加した。24年は、フランスと英国における個人攻撃のデータが入手不可能だったにもかかわらず増加しており、個人を狙った事件が欧州全域で増加していることがうかがえる。スペインでは、24年11月に修道院が襲撃に遭い、76歳の修道士が殺害され、他の複数が負傷する事件が発生している。
教会やキリスト教関連施設を狙った放火事件は、24年は94件発生し、23年のほぼ倍となった。24年9月に放火被害に遭ったフランス北部サトメールの「無原罪の御宿りの教会」は、1859年に建てられたネオゴシック様式のカトリック教会で、18年に修復されたばかりだったが、放火によりほぼ全焼した。
ドイツでは33件の放火事件が発生し、最多となった。同国のカトリック司教協議会は今年10月、「教会への破壊行為や冒瀆(ぼうとく)行為がエスカレートしている」として、警告を発している。
報告書は、反キリスト教ヘイトクライム事件の多くで容疑者が逮捕されていないことから、動機を特定するのは困難だとしている。一方、93件については動機が確認されており、主な要因は、急進的なイスラム主義思想(35件)、急進的な左翼思想(19件)、急進的な右翼思想(7件)、その他の政治的動機(11件)だった。悪魔崇拝の象徴や言及と関連した事件も15件あった。
報告書はまた、英国では中絶クリニックの緩衝地帯で黙祷をささげることが犯罪とみなされ、複数のキリスト教徒が起訴されていることも強調した。
「これらの緩衝地帯は(中絶クリニックに行く)女性を嫌がらせから保護する目的で導入されたが、信仰表現(完全に非言語的な場合も含む)を封じるために利用されるケースが増加しており、信教と表現の自由に対する深刻な懸念を引き起こしている」
OIDACは報告書を欧州議会に提出しており、アンジャ・タン事務局長は次のように述べている。
「キリスト教徒に対する攻撃が懸念されるほど発生しているだけでなく、キリスト教徒が社会の中で増大する不寛容に直面していることが明らかになっています。さらに、平和的に信仰を表明したことで訴追されるキリスト教徒が増加しています。その一例が、フィンランドの政治家パイビ・ラサネン氏です。彼女は19年に聖書の一節をX(旧ツイッター)に投稿したことで、6年以上も裁判にかけられているのです」
欧州議会のベルトヤン・ロイセン議員(オランダ)とミリアム・レックスマン議員(スロバキア)は、「信教・信条・良心の自由超党派議連」の共同議長として、欧州委員会とEU加盟国に対し、キリスト教徒保護のための緊急措置を求めている。
両議員は、反ユダヤ教や反イスラム教に対処するために既に存在する調整役と同様に、キリスト教徒に対する攻撃や差別に対処する調整役の任命を求めている。また、EU加盟国がこうした事件に関するデータを収集・報告することや、予防策に資金を割り当てることも要望。「欧州におけるキリスト教徒に対する攻撃や差別はほとんど注目されていませんが、その数字は憂慮すべきものなのです」と訴えている。

















