Skip to main content
2025年6月15日20時35分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
科学の本質を探る

【科学の本質を探る③】量子力学をめぐる世界観の対立(その2)論争に敗れたアインシュタイン 阿部正紀

2015年8月17日16時00分 コラムニスト : 阿部正紀
  • ツイート
印刷
関連タグ:阿部正紀アルベルト・アインシュタイン

前回は、電子などのミクロ粒子は観測するまでは実在しないとする「反実在論」的な解釈が、キルケゴールの実存主義哲学を信奉するボーアによって提起され、量子力学の正統的解釈になっていることをお話ししました。実在論的な世界観に立つアインシュタインがこれに反対し、論争がいまだに決着していません。

今回は、アインシュタインが論争に敗れましたが、論争から量子力学が進歩したことを説明します。

【今回のワンポイントメッセージ】

  • 科学の革新的な進歩は、世界観と結び付いてなされる。

アインシュタインとボーアの論争――量子力学は不完全か

アインシュタインは最初、量子力学は間違っていることを示そうとしました。ところが、ことごとくボーアによって論破されました。

そこで、アインシュタインは作戦を変えました。量子力学は、たとえ現象を説明できても不完全な理論である、と主張したのです。彼は、次のように論じました。

量子力学をめぐる世界観の対立(その2)論争に敗れたアインシュタイン
二つのミクロ粒子が示す遠隔作用(アインシュタインの主張)または遠隔相関(ボーアの主張)

量子力学によれば、二つのミクロ粒子が強く結び付いた後、互いに遠く離れた場合、片方の粒子に関して一つの物理量(例:運動量=質量×速度)を測定した瞬間に、他の粒子のその物理量が特定の値に定まる。つまり、遠く隔たれた二つの粒子の間に瞬時に届く相互作用――遠隔作用――が働いて片方の測定結果を知らせたことになる。これは、テレパシーのように瞬間的に(時間ゼロで)遠くに伝わる遠隔作用は存在しないとされている自然科学の基本原則に反する。従って、量子力学は科学理論として不完全である。

これに対して、ボーアは、次のように反論しました。アインシュタインが実在論の立場からミクロ粒子が確定した物理量を持った粒子として実在すると考えるから、このような不都合(遠隔作用)が働くように見えるに過ぎない。実際には、観測によって二つのミクロ粒子が互いに関連した(すなわち相関した)物理量を持つのであり、別に両粒子の間に遠隔作用が働くわけではない。

つまり、遠く隔たれた二つのミクロ粒子が相関した――すなわち「遠隔相関」した――物理量を観測によって持つようになると唱えたのです。

この時、アインシュタインは、ボーアが唱えた遠隔相関を“幽霊のように気味が悪い相関”とからかい、そのようなものが存在しない理論を作るべきだと反論しました。するとボーアは、観測とは無関係に物理量が実在していると考える従来の実在論的な世界観では、ミクロ世界の自然現象を理解できないと一蹴しました。

論争に敗れたアインシュタイン、しかし・・・

アインシュタインの死後、皮肉なことに、彼の主張の正しさを示そうとした学者たちによって、彼が否定した遠隔相関が実際に存在することが理論および実験によって実証されました。アインシュタインはボーアとの論争に敗れたのです。

その後、上図に示したように、固く結ばれた二つの粒子の間に遠隔相関が存在する現象は「量子もつれ」(または「量子からみ合い」)と呼ばれるようになりました。さらに「量子もつれ」現象に関する研究から、ミクロ粒子の振る舞いは、人間がミクロ粒子について知り得る情報と深い関わりがあることが明らかにされました。その結果、「量子もつれ」を応用して、既存のコンピュータをはるかに上回る超高性能の「量子コンピュータ」などの最先端技術を開発する「量子情報工学」という新たな学問分野が近年誕生したのです(次回説明します)。

アインシュタインとボーアそれぞれの貢献

量子力学が大成功を収め、実用上は何の問題もないにもかかわらず、アインシュタインは量子力学を不完全だと考え、完全な理論を終生探究し続けました。それはアインシュタインが、スピノザの審美的な哲学を信奉し、ミクロ粒子の挙動も完全に理解できるはずであるという実在論的な信念を抱いていたからです。

一方ボーアは、キルケゴールの実存主義哲学に傾倒して、ミクロ粒子の振る舞いを知ることを断念すべきと考えました。そして、アインシュタインが投げ掛けている哲学的な難問に若い研究者が取りつかれないで、量子力学の正統的解釈を受け入れて研究を推進するように勧めました。そのおかげで量子力学が大いなる成功を収め、様々な応用技術が花開いたのです。

さらに、アインシュタインが執拗に反対したことによって量子もつれ現象が発見され、量子情報工学という最先端の学問領域が生まれました。

全く異なる世界観に基づいてアインシュタインとボーアが論争したことから、自然に対する理解が深まり、最先端の科学と技術が生み出されました。科学の革新的な進歩は世界観と結び付いてなされるのです。

【まとめ】

  • アインシュタインは、量子力学は現象を説明できても実在論的な世界観に逆らっているので不完全な理論だと主張し、ボーアは、反実在論の立場からこれに反論した。
  • アインシュタインの死後、ボーアの主張の正しさが実証され、アインシュタインは論争に敗れた。
  • しかし、アインシュタインが反対したからこそ、遠隔相関という概念が生まれ、実証され、それを応用する最先端の学問領域(量子情報工学)が誕生した。

【次回】

  • 量子力学論争から量子力学の「多世界解釈」という奇想天外な説が提起され、これに触発されて「量子コンピュータ」という最先端技術が生まれたことを紹介します。

◇

阿部正紀

阿部正紀

(あべ・まさのり)

東京工業大学名誉教授。東工大物理学科卒、東工大博士課程電子工学専攻終了(工学博士)。東工大大学院電子物理工学専攻教授を経て現職。著書に『基礎電子物性工学―量子力学の基本と応用』(コロナ社)、『電子物性概論―量子論の基礎』(培風館)、『はじめて学ぶ量子化学』(培風館)など。

【お問い合わせ】阿部正紀先生の連載コラム「科学の本質を探る」に関するご意見・ご質問は、メール([email protected])で承っております。お気軽にお問い合わせください。

【関連記事】あなたは創造論?進化論? 教会で東工大名誉教授と語るティーサロン(第6回「東工大名誉教授と語り合うティーサロン」)

■ 科学の本質を探る

① アインシュタインは“スピノザの神”の信奉者
②-④ 量子力学をめぐる世界観の対立 (その1) (その2) (その3)
⑤-⑨ インフレーション・ビッグバン宇宙論の謎 (その1) (その2) (その3) (その4) (その5)
⑩-⑬ ニュートン力学からカオス理論へ (その1) (その2) (その3) (その4)
⑭-⑯ 複雑系における秩序形成と生命現象 (その1) (その2) (その3)
⑰ コペルニクスの実像―地動説は失敗作
⑱ ケプラーの実像―神秘主義思想と近代科学の精神が共存
⑲-㉒ ガリレイの実像 (その1)(その2)(その3)(その4)
㉓-㉔ 近代科学の基本理念に到達した古代の神学者 (その1)(その2)
㉕-㉗ 中世スコラ学者による近代科学への貢献 (その1)(その2)(その3)
㉘ 中世暗黒説を生み出したフランシス・ベーコンの科学観とその崩壊
㉙ 中世暗黒説の崩壊と科学革命の提起
㉚-㉛ 常識的な科学観を覆したパラダイム論 (その1)(その2)
㉜-㉟ 脳科学の未解決問題 (その1)(その2)(その3)(その4)
㊱-㊶ 生物進化論の未解決問題 (その1)(その2)(その3)(その4)(その5)(その6)
㊷ 科学の本質と限界

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:阿部正紀アルベルト・アインシュタイン
  • ツイート

関連記事

  • 癒やしを引き出す私たちの信仰 万代栄嗣

  • ビジネスマンから牧師への祝福された道(15)神学校生活を体験 門谷晥一

  • なにゆえキリストの道なのか ~ぶしつけな240の質問に答える~(1)宗教について 正木弥

  • 【聖書クイズ】イエス様と論争が多かったユダヤ人のグループは?

  • 私たち人間の能力ではできない仕事を、あえてさせてくださる神(14)「神の栄光」とは何か? 森正行

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • コヘレトの言葉(伝道者の書)を読む(5)時の賛歌 臼田宣弘

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • ワールドミッションレポート(6月14日):スイス 信仰で買ったトラクター、ローレン・カニングハムとYWAMに託された農場の奇跡

  • ワールドミッションレポート(6月15日):ベラルーシのために祈ろう

  • 花嫁(27)絶えず喜んでいなさい 星野ひかり

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • ウォルター・ブルッゲマン氏死去、92歳 現代米国を代表する旧約聖書学者

  • 戦時下でも福音は止まらない ウクライナの伝道者が欧州伝道会議で講演

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • フランクリン・グラハム氏、ゼレンスキー大統領と面会 和平求め祈り

  • 淀橋教会、峯野龍弘主管牧師が引退し元老牧師に 新主管牧師は金聖燮副牧師

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • ウォルター・ブルッゲマン氏死去、92歳 現代米国を代表する旧約聖書学者

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.