第3回東京平和円卓会議が1日から3日にかけ、東京プリンスホテル(東京都港区)で開催された。会議には、オンラインを含め15カ国・地域から計約120人が参加。「戦争を超え、和解へ」をテーマに話し合いが行われ、最終日には、赦(ゆる)しの重要性や全ての紛争の即時停戦などを呼びかける声明を採択した。また、今後は「東京平和プロセス」として、少なくとも5年間は宗教者らによる平和円卓会議を継続するとともに、声明に盛り込んだ共同行動を実施していくことを決めた。
東京平和円卓会議は、ウクライナ戦争が勃発した2022年に、紛争当事国・地域の宗教指導者や政治指導者を招いて平和について話し合う場を設けようと、「諸宗教平和円卓会議」の第1回会議として初めて開かれた。紛争地から一定の距離があり、安心して意見交換ができるとして、東京が開催地に選ばれ、東京での開催は、昨年の第2回に続き3回連続となった。
世界宗教者平和会議(WCRP)国際委員会、同日本委員会、国連文明の同盟(UNAOC)の3団体が主催し、仏教やキリスト教、ヒンズー教、イスラム教、ユダヤ教、神道を含め、さまざまな宗教の代表者らが出席。また、第1回から参加しているWCRP国際活動支援議員懇談会共同代表の岡田克也氏(立憲民主党)や、同幹事長の逢沢一郎氏(自民党)ら日本の国会議員も出席し、紛争解決における宗教者の役割に期待を示した。

対面で参加したのは、日本、韓国、トルコ、インド、ミャンマー、ロシア、ウクライナ、ケニア、ネパール、米国の10カ国。当初はイスラエルとパレスチナの代表者も対面での参加を予定していたが、6月に発生したイスラエル・イラン間の交戦により航空便が欠航したため、オンラインのみでの参加となった。
採択した声明は、過去2回の会議の声明も踏まえ、より具体的な内容に踏み込む内容になった。平和構築における女性の役割の重要性や、利益追求の手段としての平和構築の否定などを新たに盛り込んだ。また、今後の共同行動としては、今回対面での参加がかなわなかったイスラエル、パレスチナの代表者を招いた会議の年内の開催や、紛争地の青年らを対象にした平和交流の実施などを挙げた。

一方、「全ての命は尊い」など、いずれの宗教にも共通する根源的なメッセージも改めて盛り込んだ。また、平和は実現可能であることや、持続可能な平和において赦しが極めて重要であることなども明記。さらに、普遍的な軍縮や人道支援の経路の確保、国際法の尊重、礼拝所の保護など、平和の実現において必要な具体的な内容も呼びかけた。
閉会式では、WCRP国際共同議長のエマニュエル・アダマキス府主教(東方正教会コンスタンティノープル総主教庁カルケドン府主教)と、同国際共同会長のチャールズ・ボー枢機卿(カトリック教会ヤンゴン大司教)の2人が、総括としてスピーチした。
エマニュエル府主教は、東京平和プロセスについて「非常に重要な一歩」だと強調。会議の参加者一人一人は「このプロセスの一部となるために招聘(しょうへい)された」とし、宗教者は政策決定者ではないが、それぞれの方法で社会やコミュニティーに影響を及ぼすことができると話した。その上で、今後の5年間に生まれるであろう成果に強い期待を示した。

ボー枢機卿は、「宗教はその本質に忠実である限り、武器ではありません。傷を癒やすものとなります」と述べ、宗教が持つ治癒の役割を強調。宗教には預言的役割もあるが、真の預言者は、不正を批判するだけではなく、コミュニティーの治癒者としても活躍したと指摘。「彼ら(預言者)の任務は、決して支配することではなく、解放することであり、排除することではなく、回復することでした」と話した。
その上で、旧約聖書のイザヤ書4章2節から、「彼らは剣を打ち直して鋤(すき)とし、槍(やり)を打ち直して鎌とする。国は国に向かって剣を上げず、もはや戦うことを学ばない」を引用。「古代のこの預言は空想ではありません。それは行動への呼びかけです。宗教共同体として私たちは、平和の鍛冶屋となり、憎しみの武器を回収し、癒やしをもたらし、希望の道具へと変えていかなければなりません」と訴えた。また、「宗教が癒やしに失敗するならば、それは宗教ではなく、単なるイデオロギーになってしまいます」と警鐘を鳴らし、「平和が実現可能になるのを待つのではなく、平和を不可避なものにしましょう」と呼びかけた。

WCRP日本委員会の戸松義晴理事長(浄土宗心光院住職)は、会議終了後の記者会見で、声明について「誰が読んでも賛成する内容で、美しい言葉が並べられている」が、それを「可視化」することが問われていると指摘。特に、共同行動のうち「即時的」とした項目については課題があっても実行していきたいと強調した。また、「殺すな」という宗教者の言葉で多くの命が救われてきた歴史があると、参加者から強い言葉で言われたとし、同じ宗教者として、全ての命の尊厳を訴えるメッセージを伝えていきたいと話した。