Skip to main content
2022年8月19日19時36分更新
Go to homepage
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
科学の本質を探る

【科学の本質を探る⑧】インフレーション・ビッグバン宇宙論の謎(その4)多宇宙論と偶然一致性問題 阿部正紀

2015年9月21日06時49分 コラムニスト : 阿部正紀
  • ツイート
印刷
関連タグ:阿部正紀ビッグバン理論

前回(第7回)は、“火の玉宇宙”(ビッグバン理論の出発点)の起源を説明するインフレーション理論が、現在では理論的にも観測結果からも行き詰まっていることをお話ししました。インフレーション理論に基づいて宇宙背景放射の揺らぎを説明するために、現在の宇宙を構成している物質の96%が、正体不明な「暗黒物質」および「暗黒エネルギー」で占められていると仮定されています。

今回は、暗黒エネルギーから深刻な「偶然一致性問題」と呼ばれる謎が生じ、これを「多宇宙論」という奇想天外な理論に基づいて説明しようとする学者が意外と多く存在することを説明します。

【今回のワンポイントメッセージ】

  • 多宇宙論は科学の基準から外れた奇説。しかし、偶然一致性問題を解決できる理論としてこれを支持する学者が思いのほか多い。

暗黒物質、暗黒エネルギーとは?

暗黒物質は、望遠鏡(光、または電波)では観測できないけれども、質量を持ち重力(引力)を働かせて銀河などの運行に実際に影響を及ぼしてしていると考えられている仮想的な物質です。

暗黒エネルギーは、ただ観測データ(宇宙波背景放射の揺らぎ)を説明するために仮定された物質で、その存在すら疑われていました。ところが近年、宇宙開闢(かいびゃく)時にインフレーション(空間の加速膨張)を起こした真空のエネルギー(第6回)の生き残りが暗黒エネルギーではないかと考えられるようになりました。

インフレーションが終了した時点で真空のエネルギーのほとんどが物質に転じましたが、ごくわずかに残った真空のエネルギーが暗黒エネルギーであろうと推察されているのです。なぜなら、今日の宇宙の膨張速度が緩やかに加速していることが観測され、これが現在存在する暗黒エネルギー(すなわち真空のエネルギーの生き残り)によると説明されたからです(この業績に対して2011年にノーベル物理学賞が授与されました)。

暗黒エネルギーと「偶然一致性問題」

ところが、ここで大問題が存在します。宇宙背景放射の揺らぎから決められた暗黒エネルギー(すなわち真空のエネルギー)の密度は、素粒子論から理論的に計算される真空のエネルギー密度よりとてつもなく小さいのです。なんと10の120乗(つまり1000・・・0と1の後に0が120個ならぶ数)分の1でしかありません。

それゆえ、宇宙開闢の時に存在していた真空のエネルギー密度を120桁(120倍ではありません!)という途方もない精度で減少させて、奇跡的に現在の暗黒エネルギーの観測値になるように微調整されたことになります。

しかし、このように奇跡的な微調整、すなわちファインチューニングが偶然行われて観測値に一致したと想定するのは、奇跡や偶然に頼らず自然法則だけで合理的に説明することをめざす科学の基準から外れています。これが「偶然一致性問題」と呼ばれ、現在、宇宙論および素粒子物理学の分野で学者の頭を悩ませている未解決問題です。この謎が解けない限り、暗黒エネルギーの正体を明らかにすることができません。

「偶然一致性問題」に答える“多宇宙論”

インフレーション・ビッグバン宇宙論の謎(その4)多宇宙論と偶然一致性問題 阿部正紀

偶然一致性問題に対する解決策として、“多宇宙論”に基づく説明が提案されています。

多宇宙論とは、インフレーションをしている最中の親宇宙の一部の領域から子宇宙が生まれ、そこから孫宇宙、さらにひ孫宇宙が、という具合に無数に多くの宇宙が次々と生み出されたという奇想天外な理論です。

無数の宇宙が存在すれば、その中には必ず、真空のエネルギーが120桁の精度で現在の暗黒エネルギーの値にピタリと一致するような宇宙が存在しても不思議ではありません。そこで、そのような宇宙に我々が生存していると考えれば、偶然一致性問題を解決できると多宇宙論者は唱えているのです。

たった一つの宇宙しかなければ、それが120桁もの精度でファインチューニングされているのはまさに“奇跡”なので科学にふさわしくない。しかし、無限にたくさんの宇宙が存在すれば、「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」ように、ぴたり一致する宇宙が存在するから科学的な説明になる。このように多宇宙論者は考えるのです。

多宇宙論に対する批判と支持

私たちは「他の宇宙」が存在することを実験や観測によって確かめることができません。なぜなら観測できるような宇宙は、私たちの宇宙とつながっているので私たちの宇宙の一部に属し、「他の宇宙」ではないからです。それゆえ多くの学者が、多宇宙論は経験(観測、実験)によって実証することも否定することもできないので、科学の基準から外れていると批判しています。

それにもかかわらず、偶然一致性問題を解決できる唯一の手段として多宇宙論を支持する学者が意外と多いのです。彼らの中には、次回説明する「人間原理」を唱える者が少なからずいるのです。

多宇宙論に基づいて復活した定常宇宙論

また、インフレーション・ビッグバン理論が受け入れられたためにすたれた定常宇宙論(第5回)を多宇宙論に基づいて復活させた科学者も存在します。彼らは一つの宇宙から、子や孫の宇宙が次々と出現するのであれば、永遠の昔から多くの宇宙が定常的に生まれ続けてきたという新たな定常宇宙論を唱えているのです。

しかし、これも経験によって肯定も否定もできないので、科学の原則から外れた議論です。

このように、自分の信条や世界観を貫徹するために、科学の基準を逸脱するような奇説を受け入れる学者が宇宙論の分野に存在するのです。この状況は、量子力学の多世界解釈を信奉する学者が存在すること(第4回)と共通しています。

【まとめ】

  • 暗黒エネルギーは、宇宙開闢時にインフレーションを起こした真空のエネルギーの生き残りと考えられるようになったが、そのためには、真空のエネルギーが120桁もの高い精度で微調整されて減少したとせねばならない。
  • このような奇跡的なファインチューニングが起きたと想定するのは、科学の原則に反し受け入れ難い。これを偶然一致性問題という。
  • 偶然一致性問題に対する解決策として、多宇宙論(インフレーションのプロセスで無数の宇宙が誕生するという奇説)に基づく説明が提案されている。

【次回】

  • 多宇宙論で偶然一致性問題を説明しようとする科学者の間で広まっている「人間原理」を紹介します。

◇

阿部正紀

阿部正紀

(あべ・まさのり)

東京工業大学名誉教授。東工大物理学科卒、東工大博士課程電子工学専攻終了(工学博士)。東工大大学院電子物理工学専攻教授を経て現職。著書に『基礎電子物性工学―量子力学の基本と応用』(コロナ社)、『電子物性概論―量子論の基礎』(培風館)、『はじめて学ぶ量子化学』(培風館)など。

【お問い合わせ】阿部正紀先生の連載コラム「科学の本質を探る」に関するご意見・ご質問は、メール([email protected])で承っております。お気軽にお問い合わせください。

【関連記事】あなたは創造論?進化論? 教会で東工大名誉教授と語るティーサロン(第6回「東工大名誉教授と語り合うティーサロン」)

■ 科学の本質を探る

① アインシュタインは“スピノザの神”の信奉者
②-④ 量子力学をめぐる世界観の対立 (その1) (その2) (その3)
⑤-⑨ インフレーション・ビッグバン宇宙論の謎 (その1) (その2) (その3) (その4) (その5)
⑩-⑬ ニュートン力学からカオス理論へ (その1) (その2) (その3) (その4)
⑭-⑯ 複雑系における秩序形成と生命現象 (その1) (その2) (その3)
⑰ コペルニクスの実像―地動説は失敗作
⑱ ケプラーの実像―神秘主義思想と近代科学の精神が共存
⑲-㉒ ガリレイの実像 (その1)(その2)(その3)(その4)
㉓-㉔ 近代科学の基本理念に到達した古代の神学者 (その1)(その2)
㉕-㉗ 中世スコラ学者による近代科学への貢献 (その1)(その2)(その3)
㉘ 中世暗黒説を生み出したフランシス・ベーコンの科学観とその崩壊
㉙ 中世暗黒説の崩壊と科学革命の提起
㉚-㉛ 常識的な科学観を覆したパラダイム論 (その1)(その2)
㉜-㉟ 脳科学の未解決問題 (その1)(その2)(その3)(その4)
㊱-㊶ 生物進化論の未解決問題 (その1)(その2)(その3)(その4)(その5)(その6)
㊷ 科学の本質と限界

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:阿部正紀ビッグバン理論
  • ツイート
▼関連記事を見る  ▼クリスチャントゥデイからのお願い

関連記事

  • 唯一の救い主がもたらす祝福 万代栄嗣

  • 【聖書クイズ】復活後のイエス様がされた食事の準備は?

  • 確固たる人生の基盤 安食弘幸(26)

  • なにゆえキリストの道なのか(6)宗教は科学と矛盾する、迷信ではないのか 正木弥

  • 【子ども聖書クイズ12】イエスは名前? それとも名字?

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • ニューヨーク便り(10)変化する米国の「政治と宗教」の関係

  • 天城山荘の売却決まる、9月末に感謝礼拝 68年間で延べ174万人が利用

  • 10月に結婚のキム・ヨナさん、将来の義父は牧師 外国人労働者支援に長年従事

  • ウクライナで約400のバプテスト派教会失われる、ロシアによる軍事侵攻で

  • どちらも正しく見えるとき、どちらを選ぶべきか 加治太郎

  • 「立ちなさい、さあ行くのです」 ヒルソング教会とJPCCのリーダーらが講演

  • 聖書は性差別的? 米牧師が語る、聖書に女性が「弱い」と記されている理由

  • どんな時にも変わらない生き方 菅野直基

  • 主は生きておられる(201)戦争でも私の光を奪えない 平林けい子

  • 福音歌手の森祐理さん、ウクライナなどで慰問演奏へ ハンガーゼロが派遣

  • 天城山荘の売却決まる、9月末に感謝礼拝 68年間で延べ174万人が利用

  • 聖書は性差別的? 米牧師が語る、聖書に女性が「弱い」と記されている理由

  • 殺人罪で33年服役、獄中で救われ受刑者数百人をキリストに導く人に

  • 「性の聖書的理解ネットワーク」設立 ナッシュビル宣言の日本語訳作成、署名呼びかけ

  • ニューヨーク便り(10)変化する米国の「政治と宗教」の関係

  • 10月に結婚のキム・ヨナさん、将来の義父は牧師 外国人労働者支援に長年従事

  • ジーザス・レインズ・ジャパン、終戦記念日の8月15日に全国7カ所で同時開催

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(153)神様などいないと誰が教えたのか 広田信也

  • 福音歌手の森祐理さん、ウクライナなどで慰問演奏へ ハンガーゼロが派遣

  • 「立ちなさい、さあ行くのです」 ヒルソング教会とJPCCのリーダーらが講演

  • 安倍元首相の国葬「反対」「撤回求める」 日本基督教団社会委とカトリック正平協が声明

  • 天城山荘の売却決まる、9月末に感謝礼拝 68年間で延べ174万人が利用

  • 聖書は性差別的? 米牧師が語る、聖書に女性が「弱い」と記されている理由

  • メタバースの教会に行って感じたこと 仮想空間で与えられた思わぬ証しの機会

  • 宗教は現代社会で何を求められているのか 芦名定道・関西学院大学神学部教授が講演

  • 22世紀のキリスト教界を考えるために、今こそ読むべき一冊! 成田悠輔著『22世紀の民主主義』

  • ジーザス・レインズ・ジャパン、終戦記念日の8月15日に全国7カ所で同時開催

  • 殺人罪で33年服役、獄中で救われ受刑者数百人をキリストに導く人に

  • 「性の聖書的理解ネットワーク」設立 ナッシュビル宣言の日本語訳作成、署名呼びかけ

  • 義弟が明かすエルビス・プレスリーの信仰 「助けが必要なときはいつも神に頼っていた」

編集部のお勧め

  • 宗教は現代社会で何を求められているのか 芦名定道・関西学院大学神学部教授が講演

  • 日本のクリスチャンに必要な「意識改革」とは? ワーシップ!ジャパンがカンファレンス

  • 中絶を選択しない「いのちの文化」を マーチフォーライフ2022

  • 被災者には「長い1年」 支援者ら、土石流被害の熱海のために祈りささげる

  • ロシアのウクライナ侵攻は「時のしるし」 レムナント出版代表の久保有政氏が講演

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 論説委員・編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2022 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.