Skip to main content
2025年8月20日11時06分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
雲海のかなたに

雲海のかなたに(7)父の十八番の黒田節 高橋幸夫

2014年11月11日07時14分 コラムニスト : 高橋幸夫
  • ツイート
印刷
関連タグ:高橋幸夫
高橋幸夫氏+

微笑む父の遺影の前にべっこう色に鈍く光っている一本の尺八がある。私の父が、生前こよなく愛したものだ。今は、吹く主も無く、辺りには寂寞の臭いが漂っている。

父は、酒には目がなかった。とりわけ宴席で興が乗り饒舌になった時に必ず歌ったのが、十八番(おはこ)の黒田節(くろだぶし)であった。自ら手拍子を取りながら、甲高い声で朗々と歌い上げていたものだ。

父の最後の黒田節を聴いたのは、確か、父の金婚式の祝いの席だったと思う。大勢の孫・子に囲まれて、母と共に随分と幸せそうであった。宴もたけなわの頃、とりは、やはり父の十八番の黒田節であった。

そんな父と私に辛い日が訪れた。金婚式から僅か2カ月足らずの師走のある日。私は、父にガンの告知をする羽目になった。

青天の霹靂(へきれき)とも言える、思いも掛けぬガンの告知にじっと聞き入る父の表情は、意外にも冷静であった。その時、父の姿は、まさに古武士然(こぶしぜん)としていたことが、今でも私の脳裏に焼き付いている。

父の闘病生活は、壮絶で筆舌に尽くしがたいものであった。しかし、父は、日増しに弱っていきながらも、時折、母に内緒で大好きな酒を飲んでいた。

そんなある日、父はとうとう母に見つけられてしまった。

「お父さん、お酒なんかダメよー!」

と母に一喝されて、ばつの悪そうな顔をしていたことがあった。

私は、そんな父の気持ちを慮(おもんばか)って、それまで気にもとめなかった父の誕生日に、ささやかなプレゼントをした。父の十八番の黒田節のカラオケ入りカセットテープである。

♪酒は飲め飲め 飲むならばー・・・日(ひ)の本一(もといち)のこの槍を・・・これぞ誠の黒田節♪

伴奏は、尺八、琴、三味線、鳴り物入りの正調黒田節だ。

その時父は、そのテープを私から無言のままに受け取った。そしてとうとう、そのテープをただの一度も聴くこともなく逝ってしまった。

父の死後、ついぞ父の故郷・長崎を訪れたことの無い私は、望郷の念にかられた。

それと知った従姉が、ある日突然、父の戸籍謄本を私に送ってよこしたのだ。紐で綴じられた謄本には、達者な草書字体の筆跡で、父の家系が記されていた。その中の戸主の右端に「士族」の二文字を見出した時、私は、初めて父の祖先が武士であることを知った。

ふとその時、私は、父の十八番が黒田節であったことに、なんとなく合点が行ったのである・・・。

冬至間近の師走の夜、私は、父の形見の尺八をぼんやりと眺めながら、黒田節が妙に懐かしくなった。そして、父がとうとう一度も聴くことのなかった黒田節のテープを何度も繰り返し聴いて、在りし日の父の姿に思いを巡らした。

黒田節

酒は飲め飲め 飲むならば
日の本一の この槍を
飲みとるほどに 飲むならば
これぞ真(まこと)の 黒田武士(くろだぶし)

峰の嵐か 松風か
尋ぬる人の 琴の音(ね)か
駒ひきとめて 立ちよれば
爪音高き 想夫恋(そうふれん)

■ 雲海のかなたに: (1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(10)(11)(12)(13)(14)

◇

高橋幸夫(たかはし・ゆきお)

1947年、東京生まれ。68年、東京都立航空工業高等専門学校機械工学科卒。同年小松製作所入社、海外事業本部配属。78~83年、現地法人小松シンガポールに出向駐在、販売促進業務全般に従事。この間、アセアン諸国、ミャンマー等に70回以上出張する。88~93年、本社広報宣伝部宣伝課長として国内外の広告宣伝業務全般及び70周年記念のCIプロジェクト事業の事務局として事業企画の立案・推進実行に従事。欧米出張多数。93年、コマツのグループ子会社に出向。98年、早期定年退職制度に従い退職。2006年、柏市臨時職員、柏市介護予防センター「ほのぼのプラザますお」のボランテイアコーデイネータ。07年、天に召される。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:高橋幸夫
  • ツイート

関連記事

  • 心を診る(2)ひとりぼっち 宇田川雅彦

  • イエス・キリストに魅了された人(3)中川衣料品店 井原博子

  • 富についての考察(6)人の価値・営みの価値 木下和好

  • 働くことに喜びがありますか?~信仰による労働の変革~(6)本来の労働がもたらすもの 門谷晥一 

  • 女性と信仰(7)生きた信仰―「バランス」② 前田基子

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 福音派増えるベネズエラ、大統領が「マーチ・フォー・ジーザスの日」制定 全国で行進

  • N・T・ライト著『わたしの聖書物語』が大賞 キリスト教書店大賞2025

  • 新約聖書学者の田川建三氏死去、89歳 新約聖書の個人全訳を出版

  • 世界福音同盟、新総主事にアラブ系イスラエル人弁護士を選出

  • ワールドミッションレポート(8月20日):オランダ ペルシャ語教会の静かなるリバイバル(3)

  • 篠原元のミニコラム・聖書をもっと!深く!!(240)聖書と考える「レプリカ 元妻の復讐」

  • ワールドミッションレポート(8月17日):オランダ ペルシャ語教会の静かなるリバイバル(1)

  • ドイツで神学生が大幅に減少、5年前の3分の2に

  • ワールドミッションレポート(8月18日):オランダ ペルシャ語教会の静かなるリバイバル(2)

  • 米韓政府の政策で対北朝鮮ラジオ放送が80%減少、キリスト教迫害監視団体が懸念

  • 福音派増えるベネズエラ、大統領が「マーチ・フォー・ジーザスの日」制定 全国で行進

  • N・T・ライト著『わたしの聖書物語』が大賞 キリスト教書店大賞2025

  • 世界福音同盟、新総主事にアラブ系イスラエル人弁護士を選出

  • 米韓政府の政策で対北朝鮮ラジオ放送が80%減少、キリスト教迫害監視団体が懸念

  • 新約聖書学者の田川建三氏死去、89歳 新約聖書の個人全訳を出版

  • いのちの書に名を記される幸い 万代栄嗣

  • 嫌いと無関心 菅野直基

  • シリア語の世界(30)シリア語新約聖書の和訳(1)マタイ福音書からテサロニケ人への手紙第二まで 川口一彦

  • 主は生きておられる(240)黒い雨 平林けい子

  • ワールドミッションレポート(8月17日):オランダ ペルシャ語教会の静かなるリバイバル(1)

  • 根田祥一氏の敗訴確定、最高裁が上告棄却 本紙に対する名誉毀損で賠償命令

  • 新約聖書学者の田川建三氏死去、89歳 新約聖書の個人全訳を出版

  • キリスト教徒が人口の過半数を占める国・地域、この10年で減少 米ピュー研究所

  • 「20世紀のフランシスコ・ザビエル」 聖心女子大学で岩下壮一神父の特別展

  • N・T・ライト著『わたしの聖書物語』が大賞 キリスト教書店大賞2025

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(10)「苦しみ」から「苦しみ」へ 三谷和司

  • 日本基督教団、戦後80年で「平和を求める祈り」 在日大韓基督教会と平和メッセージも

  • 日本キリスト教協議会、戦後80年の平和メッセージ キリスト者の戦争加担にも言及

  • コンゴで教会襲撃、子ども含む43人死亡 徹夜の祈祷会中に

  • ドイツで神学生が大幅に減少、5年前の3分の2に

編集部のおすすめ

  • 「罪のない赤ちゃんを殺さないで」 東京でマーチフォーライフ、中絶の問題を訴え

  • 教育改革が「日本のリバイバルにつながっていく」 牧師の金子道仁参院議員が講演

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.