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雲海のかなたに

雲海のかなたに(3)初産 高橋幸夫

2014年9月16日18時40分 コラムニスト : 高橋幸夫
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高橋幸夫氏+

キンモクセイの馥郁(ふくいく)とした香りが漂う爽やかな初秋の日の午後。

「♪あんよはおじょず 鬼さんこちら 手のなるほうへ・・・」

最近、とんと聴かない懐かしい歌が耳に飛び込んできた。

ふと声のする方に目をやると、若い母親が、手拍子を取りながら、まだヨチヨチ歩きの男の子をさも楽しそうにあやしていた。

その時、私はなんとなく一瞬、懐かしさを感じて親子の様子を見入った。

三十年ほど前、私たちの新婚生活は、私のふるさと葛飾柴又での安アパートの一室から始まった。内風呂もなく、四畳半二間という手狭な住まいであったが、若い私たちは十分満足していた。

新婚生活間もなく、家内は妊娠し、愛知の知多半島の実家に帰ることになった。出産予定日が近づくにつれ、私は、気もそぞろになり、会社での仕事に手が付かず、上司によく叱られたものである。

ある日、陣痛が始まったという知らせを受け、休暇をもらい、取るもの取りあえず新幹線に飛び乗った。

初めての出産への期待と不安が交錯し、私は、車窓に広がる初夏の美しい景色にも視線が定まらなかった。

義母に案内されて向かった産院は、実家から歩いて五分足らずの所にある町医者であった。陣痛で顔をゆがめる家内に、私は声を掛けた。

「おい、大丈夫かい?」

「もう、どうしようもなく痛いのよー!」

出産は私たちにとって未知の体験だ。医者の指示に従うより術を知らない私たち。だが、じっとしていられない私は、家内に請われるままに、背中や腰を手のひらでそっとさすった。まさに隔靴(かっか)掻痒(そうよう)の思いだった。

陣痛の間隔が短くなるにつれて、家内の苦痛の度合いが次第に増し加わる。それに伴い私の期待と不安も徐々に増大していった。

一方、義母は、「我慢、我慢。もうすぐだがね。しっかりがんばらにゃあかんよ!」と、岐阜なまりが少しまざった知多弁で励ましている。

義母は、私の狼狽(ろうばい)ぶりを尻目に、動ずる気配は微塵(みじん)もない。母は強し、である。

時折、医者が様子を見に来て、「ウーン、もうすぐだから頑張るんだよ」「ハイ・・・、でも、痛くて痛くてー・・・」。ベッドの傍らに立ちつくす私は、相も変わらず為す術がなかった。

思い返せば、家内は、妊婦の定期検診で医者から胎児が逆子であると知らされた。それで、医者の指示に従い矯正体操を繰り返した結果、逆子は正常にもどり、夫婦で胸をなでおろしたものであった。

さて、いよいよ出産の時が近づき、緊張感は高まった。家内が分娩室に入り、私がドアの外で固唾(かたず)を呑んでいると、突然、「オギャー、オギャー、オギャー・・・」と、せきを切ったように我が子の元気な産声が小さな産院内に響き渡った。

その瞬間、義母と私は、思わずお互いに顔を見合わせてニッコリと笑みを交わした。義母は、娘の初産が何にも増して嬉しかったに違いない。

私は、初めて見る我が子をおそるおそる抱き取った。その時の喜びは一塩で、今でも忘れることが出来ない。

同時に、窓越しに広がっていた三河湾の美しい光景が、まだまぶたに焼き付いている。

数年後、私たちは、長女、次男にも恵まれ、私たちの賑やかな子育て生活は、遠く東南アジアのシンガポールの地にまで及んだのである。

今、3人の子どもたちは、紆余曲折を経て頼もしく成長したのだが、私たち夫婦の心配の種は、まだ当分尽きそうにもない。

■ 雲海のかなたに: (1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(10)(11)(12)(13)(14)

◇

高橋幸夫(たかはし・ゆきお)

1947年、東京生まれ。68年、東京都立航空工業高等専門学校機械工学科卒。同年小松製作所入社、海外事業本部配属。78~83年、現地法人小松シンガポールに出向駐在、販売促進業務全般に従事。この間、アセアン諸国、ミャンマー等に70回以上出張する。88~93年、本社広報宣伝部宣伝課長として国内外の広告宣伝業務全般及び70周年記念のCIプロジェクト事業の事務局として事業企画の立案・推進実行に従事。欧米出張多数。93年、コマツのグループ子会社に出向。98年、早期定年退職制度に従い退職。2006年、柏市臨時職員、柏市介護予防センター「ほのぼのプラザますお」のボランテイアコーデイネータ。07年、天に召される。

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