Skip to main content
2025年9月15日10時30分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
雲海のかなたに

雲海のかなたに(3)初産 高橋幸夫

2014年9月16日18時40分 コラムニスト : 高橋幸夫
  • ツイート
印刷
関連タグ:高橋幸夫
高橋幸夫氏+

キンモクセイの馥郁(ふくいく)とした香りが漂う爽やかな初秋の日の午後。

「♪あんよはおじょず 鬼さんこちら 手のなるほうへ・・・」

最近、とんと聴かない懐かしい歌が耳に飛び込んできた。

ふと声のする方に目をやると、若い母親が、手拍子を取りながら、まだヨチヨチ歩きの男の子をさも楽しそうにあやしていた。

その時、私はなんとなく一瞬、懐かしさを感じて親子の様子を見入った。

三十年ほど前、私たちの新婚生活は、私のふるさと葛飾柴又での安アパートの一室から始まった。内風呂もなく、四畳半二間という手狭な住まいであったが、若い私たちは十分満足していた。

新婚生活間もなく、家内は妊娠し、愛知の知多半島の実家に帰ることになった。出産予定日が近づくにつれ、私は、気もそぞろになり、会社での仕事に手が付かず、上司によく叱られたものである。

ある日、陣痛が始まったという知らせを受け、休暇をもらい、取るもの取りあえず新幹線に飛び乗った。

初めての出産への期待と不安が交錯し、私は、車窓に広がる初夏の美しい景色にも視線が定まらなかった。

義母に案内されて向かった産院は、実家から歩いて五分足らずの所にある町医者であった。陣痛で顔をゆがめる家内に、私は声を掛けた。

「おい、大丈夫かい?」

「もう、どうしようもなく痛いのよー!」

出産は私たちにとって未知の体験だ。医者の指示に従うより術を知らない私たち。だが、じっとしていられない私は、家内に請われるままに、背中や腰を手のひらでそっとさすった。まさに隔靴(かっか)掻痒(そうよう)の思いだった。

陣痛の間隔が短くなるにつれて、家内の苦痛の度合いが次第に増し加わる。それに伴い私の期待と不安も徐々に増大していった。

一方、義母は、「我慢、我慢。もうすぐだがね。しっかりがんばらにゃあかんよ!」と、岐阜なまりが少しまざった知多弁で励ましている。

義母は、私の狼狽(ろうばい)ぶりを尻目に、動ずる気配は微塵(みじん)もない。母は強し、である。

時折、医者が様子を見に来て、「ウーン、もうすぐだから頑張るんだよ」「ハイ・・・、でも、痛くて痛くてー・・・」。ベッドの傍らに立ちつくす私は、相も変わらず為す術がなかった。

思い返せば、家内は、妊婦の定期検診で医者から胎児が逆子であると知らされた。それで、医者の指示に従い矯正体操を繰り返した結果、逆子は正常にもどり、夫婦で胸をなでおろしたものであった。

さて、いよいよ出産の時が近づき、緊張感は高まった。家内が分娩室に入り、私がドアの外で固唾(かたず)を呑んでいると、突然、「オギャー、オギャー、オギャー・・・」と、せきを切ったように我が子の元気な産声が小さな産院内に響き渡った。

その瞬間、義母と私は、思わずお互いに顔を見合わせてニッコリと笑みを交わした。義母は、娘の初産が何にも増して嬉しかったに違いない。

私は、初めて見る我が子をおそるおそる抱き取った。その時の喜びは一塩で、今でも忘れることが出来ない。

同時に、窓越しに広がっていた三河湾の美しい光景が、まだまぶたに焼き付いている。

数年後、私たちは、長女、次男にも恵まれ、私たちの賑やかな子育て生活は、遠く東南アジアのシンガポールの地にまで及んだのである。

今、3人の子どもたちは、紆余曲折を経て頼もしく成長したのだが、私たち夫婦の心配の種は、まだ当分尽きそうにもない。

■ 雲海のかなたに: (1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(10)(11)(12)(13)(14)

◇

高橋幸夫(たかはし・ゆきお)

1947年、東京生まれ。68年、東京都立航空工業高等専門学校機械工学科卒。同年小松製作所入社、海外事業本部配属。78~83年、現地法人小松シンガポールに出向駐在、販売促進業務全般に従事。この間、アセアン諸国、ミャンマー等に70回以上出張する。88~93年、本社広報宣伝部宣伝課長として国内外の広告宣伝業務全般及び70周年記念のCIプロジェクト事業の事務局として事業企画の立案・推進実行に従事。欧米出張多数。93年、コマツのグループ子会社に出向。98年、早期定年退職制度に従い退職。2006年、柏市臨時職員、柏市介護予防センター「ほのぼのプラザますお」のボランテイアコーデイネータ。07年、天に召される。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:高橋幸夫
  • ツイート

関連記事

  • 雲海のかなたに(2)父の投網漁 高橋幸夫

  • 雲海のかなたに(1) 高橋幸夫

  • 性善説的人間観のブレーキを解く試み(2) 堀越暢治

  • 沖縄における植民者としての日本人と私(4)沖縄の苦難をどう捉えるのか 川越弘

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • キリスト教に回心したウィキペディア共同創設者、所属教会を発表

  • 米保守派活動家で熱心なクリスチャンのチャーリー・カーク氏、イベント中に射殺される

  • 「世界で最も優しい裁判官」 フランク・カプリオさん死去、敬虔なカトリック信者

  • 「聖書を読まなかったら、今の自分はない」 元ヤクザの進藤龍也氏と山崎純二氏が対談

  • 新しい発見 佐々木満男

  • イエスの統治を祝う祭典「ジーザス・レインズ」が10周年 ラップ賛美など新しい試みも

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(12)「苦しみ」から「光」へ 三谷和司

  • コヘレトの言葉(伝道者の書)を読む(11)抗黙示思想と今この時のトーブ 臼田宣弘

  • ワールドミッションレポート(9月15日):アンギラ 静かなる島に迫る変化と教会の使命

  • シリア語の世界(32)シリア語聖書の人名・地名小辞典 川口一彦

  • 「世界で最も優しい裁判官」 フランク・カプリオさん死去、敬虔なカトリック信者

  • 米保守派活動家で熱心なクリスチャンのチャーリー・カーク氏、イベント中に射殺される

  • 石破茂首相が退陣表明、15年ぶりのクリスチャン首相

  • 「聖書を読まなかったら、今の自分はない」 元ヤクザの進藤龍也氏と山崎純二氏が対談

  • 「信教の自由を脅かす」 旧統一協会の解散命令巡り特別集会、西岡力氏らが登壇

  • イエスの統治を祝う祭典「ジーザス・レインズ」が10周年 ラップ賛美など新しい試みも

  • 牧師を辞めた理由は? 元牧師730人を対象に調査 現役牧師や信徒へのアドバイスも

  • 花嫁(32)愛というレンズで 星野ひかり

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(12)「苦しみ」から「光」へ 三谷和司

  • 「信仰の実践としてのスピリチュアルケア」 オリブ山病院で第3回臨床牧会教育

  • 「世界で最も優しい裁判官」 フランク・カプリオさん死去、敬虔なカトリック信者

  • 米保守派活動家で熱心なクリスチャンのチャーリー・カーク氏、イベント中に射殺される

  • 石破茂首相が退陣表明、15年ぶりのクリスチャン首相

  • 「信教の自由を脅かす」 旧統一協会の解散命令巡り特別集会、西岡力氏らが登壇

  • 牧師を辞めた理由は? 元牧師730人を対象に調査 現役牧師や信徒へのアドバイスも

  • ウェールズ聖公会、首座主教にレズビアンの女性主教選出 保守派からは強い批判の声

  • 「聖書を読まなかったら、今の自分はない」 元ヤクザの進藤龍也氏と山崎純二氏が対談

  • 「信仰の実践としてのスピリチュアルケア」 オリブ山病院で第3回臨床牧会教育

  • 花嫁(32)愛というレンズで 星野ひかり

  • イエスの統治を祝う祭典「ジーザス・レインズ」が10周年 ラップ賛美など新しい試みも

編集部のおすすめ

  • 「20世紀のフランシスコ・ザビエル」 聖心女子大学で岩下壮一神父の特別展

  • 「罪のない赤ちゃんを殺さないで」 東京でマーチフォーライフ、中絶の問題を訴え

  • 教育改革が「日本のリバイバルにつながっていく」 牧師の金子道仁参院議員が講演

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.