Skip to main content
2025年6月15日20時35分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
雲海のかなたに

雲海のかなたに(2)父の投網漁 高橋幸夫

2014年9月9日13時01分 コラムニスト : 高橋幸夫
  • ツイート
印刷
関連タグ:高橋幸夫
高橋幸夫氏+

二. 父の投網漁

「あっ、捕れた、捕れた! でっかいなあ。お父ちゃん、この魚なんて言うの?」

「あー、それは鯉だよ。刺身にすると旨いんだゾー!」

「へー、じゃあこれは?」

「それはボラだよ」

「すごいねー、今日は大漁だあ!」

戦後間もない頃、私はまだ小学生だった。父は、時折、荒川に小舟を出して私を投網漁に連れて行ってくれた。東京の下町で地方公務員をしていた父の週末の楽しみは、投網漁であった。

父は、小舟の櫓(ろ)を巧みに漕(こ)ぎ、いつも下流の千住大橋辺りの漁場に行った。投網を入念にそろえて、網を左肩に背負い込んで船の舳先(へさき)に立つ。川面の流れをじっと窺(うかが)い、間合いを計ってここぞという時に、網を勢いよく前方に放り投げる。

円錐状に広がった網が、水面をバシャッと叩き、白い水しぶきが上がる。網は瞬く間に水中に沈む。父は、両足を踏ん張りながら、ずっしりと重い網をゆっくりとたぐり寄せる。漕ぎ手のいない小舟は、水中の網を軸にして川の流れにその身を任せている。

私は、父の傍らで、今度は何がかかったのだろうかと期待に胸をふくらませて、固唾をのんでのぞき込んだ。網の先端が水面近くに現れると、魚体が網の中でキラキラと光って見える。投網漁の醍醐味は、この瞬間にあった。

しかし、川は、いつも私たちを歓迎してくれるとは限らない。時には、何度網を投じても小魚一匹かからないことがあったり、ある時には、私たちの楽しみの場に邪魔が入った。

だるま船(運搬船)が、上流の砂利や土砂を満載して、ポンポンポンとけたたましいエンジン音を響かせながら川を下ってきた。すれ違いざまに大きな波を立てられて、私たちの小舟は木の葉のようにゆらゆらと揺れ動いた。そこで父は、体のバランスを両足で取っていた。一方、私は、恐怖のあまり船のへりにつかまりながら、波が行き過ぎるのを待った。

また、ある時は、潮の満ち干の変わり際に、川の流れが逆転するのを目の当たりにして驚きもした。まさに自然の不思議を垣間見た瞬間であった。

父は、幼い私には頼もしい存在であった。

父は、夕日が傾くまで力強く何度も網を投げた後に、「さあ、今日は終わりにしようか?」と呟いて再び櫓を手に取り、家路についた。

小舟の行く手には、沈み行く茜色の夕日が、遠い秩父連山のシルエットをくっきりと映し出し、私たちに一日の終わりを告げてくれた。

我が家に帰ると、獲物の一部は近所にお裾分けし、残りは父が捌(さば)き、夕餉(ゆうげ)の食卓を飾った。家族で川魚料理に舌鼓をうつ一家団欒(いっかだんらん)の楽しい一時だった。

亡き父の九回忌を間近にした初夏の日に、私は、息子と川面に釣り糸を垂れながら、ふと幼い日の原風景へとタイムスリップしていた。

■ 雲海のかなたに: (1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(10)(11)(12)(13)(14)

◇

高橋幸夫(たかはし・ゆきお)

1947年、東京生まれ。68年、東京都立航空工業高等専門学校機械工学科卒。同年小松製作所入社、海外事業本部配属。78~83年、現地法人小松シンガポールに出向駐在、販売促進業務全般に従事。この間、アセアン諸国、ミャンマー等に70回以上出張する。88~93年、本社広報宣伝部宣伝課長として国内外の広告宣伝業務全般及び70周年記念のCIプロジェクト事業の事務局として事業企画の立案・推進実行に従事。欧米出張多数。93年、コマツのグループ子会社に出向。98年、早期定年退職制度に従い退職。2006年、柏市臨時職員、柏市介護予防センター「ほのぼのプラザますお」のボランテイアコーデイネータ。07年、天に召される。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:高橋幸夫
  • ツイート

関連記事

  • 雲海のかなたに(1) 高橋幸夫

  • こころと魂の健康(2)強い、弱い 渡辺俊彦

  • 温故知神—福音は東方世界へ(2)紀元前のユダヤと西アジア 川口一彦

  • スマホ(iPhone)にカバーは付けますか? 素顔が一番美しい 菅野直基

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • コヘレトの言葉(伝道者の書)を読む(5)時の賛歌 臼田宣弘

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • ワールドミッションレポート(6月14日):スイス 信仰で買ったトラクター、ローレン・カニングハムとYWAMに託された農場の奇跡

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • ワールドミッションレポート(6月15日):ベラルーシのために祈ろう

  • ワールドミッションレポート(6月12日):ベルギーのために祈ろう

  • 花嫁(27)絶えず喜んでいなさい 星野ひかり

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • ウォルター・ブルッゲマン氏死去、92歳 現代米国を代表する旧約聖書学者

  • 戦時下でも福音は止まらない ウクライナの伝道者が欧州伝道会議で講演

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • フランクリン・グラハム氏、ゼレンスキー大統領と面会 和平求め祈り

  • 淀橋教会、峯野龍弘主管牧師が引退し元老牧師に 新主管牧師は金聖燮副牧師

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • ウォルター・ブルッゲマン氏死去、92歳 現代米国を代表する旧約聖書学者

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.