Skip to main content
2025年8月20日23時06分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
雲海のかなたに

雲海のかなたに(2)父の投網漁 高橋幸夫

2014年9月9日13時01分 コラムニスト : 高橋幸夫
  • ツイート
印刷
関連タグ:高橋幸夫
高橋幸夫氏+

二. 父の投網漁

「あっ、捕れた、捕れた! でっかいなあ。お父ちゃん、この魚なんて言うの?」

「あー、それは鯉だよ。刺身にすると旨いんだゾー!」

「へー、じゃあこれは?」

「それはボラだよ」

「すごいねー、今日は大漁だあ!」

戦後間もない頃、私はまだ小学生だった。父は、時折、荒川に小舟を出して私を投網漁に連れて行ってくれた。東京の下町で地方公務員をしていた父の週末の楽しみは、投網漁であった。

父は、小舟の櫓(ろ)を巧みに漕(こ)ぎ、いつも下流の千住大橋辺りの漁場に行った。投網を入念にそろえて、網を左肩に背負い込んで船の舳先(へさき)に立つ。川面の流れをじっと窺(うかが)い、間合いを計ってここぞという時に、網を勢いよく前方に放り投げる。

円錐状に広がった網が、水面をバシャッと叩き、白い水しぶきが上がる。網は瞬く間に水中に沈む。父は、両足を踏ん張りながら、ずっしりと重い網をゆっくりとたぐり寄せる。漕ぎ手のいない小舟は、水中の網を軸にして川の流れにその身を任せている。

私は、父の傍らで、今度は何がかかったのだろうかと期待に胸をふくらませて、固唾をのんでのぞき込んだ。網の先端が水面近くに現れると、魚体が網の中でキラキラと光って見える。投網漁の醍醐味は、この瞬間にあった。

しかし、川は、いつも私たちを歓迎してくれるとは限らない。時には、何度網を投じても小魚一匹かからないことがあったり、ある時には、私たちの楽しみの場に邪魔が入った。

だるま船(運搬船)が、上流の砂利や土砂を満載して、ポンポンポンとけたたましいエンジン音を響かせながら川を下ってきた。すれ違いざまに大きな波を立てられて、私たちの小舟は木の葉のようにゆらゆらと揺れ動いた。そこで父は、体のバランスを両足で取っていた。一方、私は、恐怖のあまり船のへりにつかまりながら、波が行き過ぎるのを待った。

また、ある時は、潮の満ち干の変わり際に、川の流れが逆転するのを目の当たりにして驚きもした。まさに自然の不思議を垣間見た瞬間であった。

父は、幼い私には頼もしい存在であった。

父は、夕日が傾くまで力強く何度も網を投げた後に、「さあ、今日は終わりにしようか?」と呟いて再び櫓を手に取り、家路についた。

小舟の行く手には、沈み行く茜色の夕日が、遠い秩父連山のシルエットをくっきりと映し出し、私たちに一日の終わりを告げてくれた。

我が家に帰ると、獲物の一部は近所にお裾分けし、残りは父が捌(さば)き、夕餉(ゆうげ)の食卓を飾った。家族で川魚料理に舌鼓をうつ一家団欒(いっかだんらん)の楽しい一時だった。

亡き父の九回忌を間近にした初夏の日に、私は、息子と川面に釣り糸を垂れながら、ふと幼い日の原風景へとタイムスリップしていた。

■ 雲海のかなたに: (1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(10)(11)(12)(13)(14)

◇

高橋幸夫(たかはし・ゆきお)

1947年、東京生まれ。68年、東京都立航空工業高等専門学校機械工学科卒。同年小松製作所入社、海外事業本部配属。78~83年、現地法人小松シンガポールに出向駐在、販売促進業務全般に従事。この間、アセアン諸国、ミャンマー等に70回以上出張する。88~93年、本社広報宣伝部宣伝課長として国内外の広告宣伝業務全般及び70周年記念のCIプロジェクト事業の事務局として事業企画の立案・推進実行に従事。欧米出張多数。93年、コマツのグループ子会社に出向。98年、早期定年退職制度に従い退職。2006年、柏市臨時職員、柏市介護予防センター「ほのぼのプラザますお」のボランテイアコーデイネータ。07年、天に召される。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:高橋幸夫
  • ツイート

関連記事

  • 雲海のかなたに(1) 高橋幸夫

  • こころと魂の健康(2)強い、弱い 渡辺俊彦

  • 温故知神—福音は東方世界へ(2)紀元前のユダヤと西アジア 川口一彦

  • スマホ(iPhone)にカバーは付けますか? 素顔が一番美しい 菅野直基

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 福音派増えるベネズエラ、大統領が「マーチ・フォー・ジーザスの日」制定 全国で行進

  • N・T・ライト著『わたしの聖書物語』が大賞 キリスト教書店大賞2025

  • 世界福音同盟、新総主事にアラブ系イスラエル人弁護士を選出

  • ワールドミッションレポート(8月20日):オランダ ペルシャ語教会の静かなるリバイバル(3)

  • 篠原元のミニコラム・聖書をもっと!深く!!(240)聖書と考える「レプリカ 元妻の復讐」

  • ワールドミッションレポート(8月17日):オランダ ペルシャ語教会の静かなるリバイバル(1)

  • ワールドミッションレポート(8月18日):オランダ ペルシャ語教会の静かなるリバイバル(2)

  • 米韓政府の政策で対北朝鮮ラジオ放送が80%減少、キリスト教迫害監視団体が懸念

  • いのちの書に名を記される幸い 万代栄嗣

  • 嫌いと無関心 菅野直基

  • 福音派増えるベネズエラ、大統領が「マーチ・フォー・ジーザスの日」制定 全国で行進

  • N・T・ライト著『わたしの聖書物語』が大賞 キリスト教書店大賞2025

  • 世界福音同盟、新総主事にアラブ系イスラエル人弁護士を選出

  • 米韓政府の政策で対北朝鮮ラジオ放送が80%減少、キリスト教迫害監視団体が懸念

  • 新約聖書学者の田川建三氏死去、89歳 新約聖書の個人全訳を出版

  • いのちの書に名を記される幸い 万代栄嗣

  • 嫌いと無関心 菅野直基

  • シリア語の世界(30)シリア語新約聖書の和訳(1)マタイ福音書からテサロニケ人への手紙第二まで 川口一彦

  • 主は生きておられる(240)黒い雨 平林けい子

  • ドイツで神学生が大幅に減少、5年前の3分の2に

  • 根田祥一氏の敗訴確定、最高裁が上告棄却 本紙に対する名誉毀損で賠償命令

  • 新約聖書学者の田川建三氏死去、89歳 新約聖書の個人全訳を出版

  • キリスト教徒が人口の過半数を占める国・地域、この10年で減少 米ピュー研究所

  • 「20世紀のフランシスコ・ザビエル」 聖心女子大学で岩下壮一神父の特別展

  • N・T・ライト著『わたしの聖書物語』が大賞 キリスト教書店大賞2025

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(10)「苦しみ」から「苦しみ」へ 三谷和司

  • 日本キリスト教協議会、戦後80年の平和メッセージ キリスト者の戦争加担にも言及

  • 日本基督教団、戦後80年で「平和を求める祈り」 在日大韓基督教会と平和メッセージも

  • コンゴで教会襲撃、子ども含む43人死亡 徹夜の祈祷会中に

  • ドイツで神学生が大幅に減少、5年前の3分の2に

編集部のおすすめ

  • 「罪のない赤ちゃんを殺さないで」 東京でマーチフォーライフ、中絶の問題を訴え

  • 教育改革が「日本のリバイバルにつながっていく」 牧師の金子道仁参院議員が講演

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.