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貧民救済に命賭けて

貧民救済に命賭けて―山室軍平の生涯(1) 強さと優しさと

2015年2月19日13時51分 執筆者 : 栗栖ひろみ
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関連タグ:山室軍平救世軍

明治19年(1886年)8月。ここは東京の新橋(しんばし)である。商店街はにぎわい、人々が行き交う間を人力車夫が威勢のいい掛け声と共に車を引いて通り過ぎてゆく。そんな中に、一人のみずぼらしい身なりの少年が辻(つじ)から辻へとうろついていた。

「あのう・・・」 彼は横から出て来た人力車夫におずおずと声をかけた。
「麹町(こうじまち)は遠いんでしょうか?」
「ああ、かなりあるねえ」

車夫は、じろじろ少年を見てから、15銭はかかるよと言い捨てて行ってしまった。少年は別の車夫をつかまえた。今度は親切な人で、10銭しか持っていない彼をその料金で麹町一番町まで乗せてくれたのだった。少年が向かったのは、松浦鳳之進(まつうら・ほうのしん)という二松学舎(にしょうがくしゃ)の塾長の家であった。案内を乞うと、しばらく待たされてから、鳳之進が出てきた。

「あっ、先生でいらっしゃいますか? わたくしは岡山県の足守町(あしもりちょう)から出て来た杉本軍平(すぎもと・ぐんぺい)と申します」

彼は手をついて言った。そして、東京で働きながら勉強をし、世の中に役立つことをする人になりたいので、どこか働き口があったら紹介してほしいと頼んだ。松浦鳳之進は、この少年の意志が固いことを見ると、自分の所に下宿させ、仕事の世話をしてあげようと約束した。

軍平は、岡山県本郷村の農家に山室佐八(やまむろ・さはち)の8番目の子として生まれた。母親の登毛(とも)は彼が生まれたとき、特別な思いをもって願をかけたのである。

「神様、どうかこの子が健康に育ち、将来世の中に出て、何か善いことをする者となりますように。そのために、私は一生涯卵を口にいたしません」

これは「卵断(たまごだ)ちの願(がん)かけ」として後まで伝えられている。母の願いどおり、彼はすくすくと育ち、小学校に通うようになるとよく勉強した。彼は大声で本を読むのが大好きであったが、これは後になって何千人、何万人という人々の前で神の言(ことば)を語ることができた天与の賜物の最初の現れだった。この頃から、彼の中に際立った性格上の特色が見え始める。それは、いつも周囲の人間――特に弱い者を思いやる優しさと、曲がったことが嫌いな強さである。

9歳になったとき、軍平の身に変化が起きた。同じ岡山県吉備(きび)郡足守町に住む叔父の杉本弥太郎(すぎもと・やたろう)の家に養子に行くことになったのである。この叔父は質屋を稼業としており、山室家よりはるかに豊かな暮らしをしていた。そこは16里ほど離れた里にあり、正田(しょうだ)の渡しから川船に乗って湛井(ただい)に出、そこから人力車に乗った。

叔父夫婦は大変喜んで軍平を迎え、必要なものは何でも与えてくれた。杉本弥太郎は学問をしたことのない人間であったが、よく本は読んだ。彼は軍平が学問好きなのを見ると、『経典余師』という書を教科書にして読み書きを教え始めた。また、漢学者の松浦黙(まつうら・しずか)の家に通わせたりもした。軍平は、こんなにまでしてくれる養父の恩に報いたいと、毎朝誰よりも早く起き、掃除を済ませ、朝食の仕度をするのだった。

そんなある日。彼は養父に言いつかって、質流れ寸前の家を回り、借金の催促をすることになった。これは彼にとって生涯忘れることのできない体験であった。訪ねた家は、いずれも貧困に打ちひしがれており、借金を返すどころか、その日の食物にもこと欠き、病人を抱えた者もいた。

(貧乏というものは、こんなに人を不幸にしてしまうんだ)

軍平は、これらの人々から取り立てをすることができず、空手のまま家に帰った。「すみません。お役に立てませんでした」。 そう言って手を突くと、養父は愉(さと)した。「おまえは優しすぎる。男子たるもの優しいだけではお国のために役立てんぞ」。軍平はその言葉を胸に刻みつけ、勉強に励んだ。そして、いつの日にか貧困に泣く人々を救い、生きる希望を与えるような事業をしようという大志を胸に抱いたのである。

その後、彼は東京に出てもっと勉強したいと思い、養父にそのことを願い出たが、どういうわけか養父は家業である質屋を継ぐことを強要した。そして、いくら彼が頼んでも首を縦に振らないので、彼は泣き出した。

(お父さんが許してくれないなら仕方がない。一人で東京へ行こう)

そして、彼は優しくしてくれた養父母の寝顔にそっと手を合わせ、いつかご恩を返しますと心の中で誓って、その夜家を出た。その後、岡山の旅館に一週間ほど身を隠し、神戸から横浜を経、東京に着いたのであった。(続く:悲しい出会い)

■ 貧民救済に命懸けて:(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(最終回)

◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。派遣や請負で働きながら執筆活動を始める。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。動物愛護を主眼とする童話も手がけ、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で、日本動物児童文学奨励賞を受賞する。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝の連載を始める。編集協力として、荘明義著『わが人生と味の道』(イーグレープ、2015年4月)がある。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:山室軍平救世軍
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