Skip to main content
2025年6月30日09時21分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
貧民救済に命賭けて

貧民救済に命賭けて―山室軍平の生涯(6) 売られる少女、捨てられる子ども

2015年5月1日17時08分 執筆者 : 栗栖ひろみ
  • ツイート
印刷
関連タグ:山室軍平救世軍石井十次植村正久

明治24年(1891年)10月のことである。岐阜から愛知にまたがる濃尾地方に大きな地震があり、家は残らず倒れ、火事が発生、辺りは焼け野原になった。死体が累々と横たわり、幼い子どもは泣くことも忘れたように茫然(ぼうぜん)と肉親の傍に立ちつくしていた。その悲惨なさまは多くの人の心を動かし、各地で孤児救済の運動が始まった。

そんな時、軍平は忘れ得ぬ友、石井十次から援助を依頼され、岡山孤児院に駆けつけた。そして、友人、知人の間を回って古着、シャツ、古足袋(たび)、その他不用品を集めてきた。石井は各地で孤児を見つけては連れてきたが、その数は40人ほどになった。孤児が施設に引き取られるのを見て、人々は外国に売られるのだろうとか、見世物にされるのだろうとかいろいろな噂を流した。軍平たちはこうした一般の誤った考えを取り除き、この事業が神と人の前において正しく、愛をもって始められたことを証明しなくてはならなかった。

ちょうど名古屋の白壁町に鉛筆製造所のために建てられた家があったので譲ってもらおうと交渉すると、200円ということだった。2人はその資金繰りに奔走した。

そのうちに新年を迎え、軍平は築地の新栄教会から招かれたので、その場で岡山孤児院のことを話して協力を求めた。たまたまそのときの説教が「幼な子を拒むな」という題であったので、人々は心を動かされ、牧師の貴山幸次郎(きやま・こうじろう)をはじめ、中川嘉兵衛(なかがわ・かへえ)といった人たちが、合わせて100円を寄付してくれたのだった。

さらに、植村正久(うえむら・まさひさ)が牧していた一番町教会と横浜の連合初週祈祷会とがそれぞれ2、30円の寄付をしてくれた。また、東京各地を回って講演をすると、ある人は2円、ある人は5円というようにお金をささげた。それから、あの懐かしい築地福音教会に寄ると、伝道学校に行くためにお金を出してくれた山中孝之助が喜んで迎えてくれた。そして彼の働きを祝福し、協力してくれたのである。また、サマリタン会の北島剛医師も祈ってくれて2円の寄付をしてくれた。

これらの人々の献金を全て合わせると、185円になった。それを大切に懐に入れて岡山に戻ってみると、石井は20円ほど集めていたので、早速白壁町の家を買い取り、そこに孤児院の基礎を固めたのだった。

その頃、ひとつの問題が日本に起こっていた。それは、人身売買であった。貧しさ故に、あるいは家庭の事情から、娘たちが売られ、多くが娼妓(しょうぎ)として吉原やその他の遊郭でいかがわしい商売を強いられていたのである。

ある日、奉仕の期間が過ぎて軍平が孤児院を出ようとしたとき、入口でただならぬ騒ぎがした。驚いて飛び出していくと、一人の少女を後ろにかばって、石井が見知らぬ男と押し問答をしていたのである。

「いやです! どうしても行くのはいやです」
少女は髪をふり乱して石井にしがみつく。
「ふざけるんじゃねえよ。おまえのおっ母さんに貸しがあるんだ。13円でおまえを買ったんだからな」
男は少女の手首をつかむと無理に引きずって行こうとした。それを見かねて、軍平は男の袖をつかんだ。
「私がこの人の借金を返しましょう。13円くらいでこういう若い娘の人生がむちゃくちゃになるなんて本当に情けない」
そして彼は借用書を書き、自分の住所を教えた。
「逃げも隠れもしませんから、1週間たったら取りに来てください」
男はようやく納得して、娘を放して引き上げて行った。

その娘は孤児院で働きながら、そこで生活することになった。軍平は同志社に帰ると、早速友人たちに呼びかけ、気の毒な少女の話をしてから募金を集めた。彼の話には説得力があったとみえ、たちまち13円の金がそろった。それを男に払ってしばらくすると、石井から感謝の手紙が来て、すっかり少女は孤児院の生活に馴れたことを書いてきた。

この頃から、軍平は社会の底辺で苦しむ者に、ただ福音だけ語っても救えないことを感じ始めていた。空腹にさいなまれている人にまず必要なのは、一杯の温かいご飯なのである。彼は伝道者として立つよりも、社会事業家として底辺の人々に仕える決意をした。

そして祈りつつ、そのような道が開ける時を待ちながら、宮城県茶臼原(ちゃうすばる)にある孤児院で奉仕をしていた。すると程なくして、石井が良い知らせを持ってきた。それは、英国から救世軍の一隊がやってきて第1回の集会を東京で開くというのである。

「あなたにとって、きっと良い道が開けますよ」と、石井は言った。(続く:救世軍に身を投じる)

■ 貧民救済に命懸けて:(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(最終回)

◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。派遣や請負で働きながら執筆活動を始める。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。動物愛護を主眼とする童話も手がけ、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で、日本動物児童文学奨励賞を受賞する。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝の連載を始める。編集協力として、荘明義著『わが人生と味の道』(イーグレープ、2015年4月)がある。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:山室軍平救世軍石井十次植村正久
  • ツイート

関連記事

  • 貧民救済に命賭けて―山室軍平の生涯(5) 飲まず食わずの日々

  • 貧民救済に命賭けて―山室軍平の生涯(4) 人生の転機

  • 貧民救済に命賭けて―山室軍平の生涯(3) キリスト教に入信する

  • 貧民救済に命賭けて―山室軍平の生涯(2) 悲しい出会い

  • 貧民救済に命賭けて―山室軍平の生涯(1) 強さと優しさと

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 全ての人の主イエス・キリスト 万代栄嗣

  • 米国の福音派牧師は半数近くが兼業している 調査で判明

  • 花嫁(28)伝道の思い 星野ひかり

  • ワールドミッションレポート(6月30日):インドネシア 静かに進む魂の変革

  • ヨハネの黙示録(4)死とハデスの鍵 岡田昌弘

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(225)エンディングを伴走して日本宣教を進めよう! 広田信也

  • 賢い時間の使い方「ゆっくり、今すぐに」 菅野直基

  • シリア首都で教会狙った自爆テロ、25人死亡 現地のキリスト教徒ら、さらなる暴力懸念

  • ワールドミッションレポート(6月29日):北朝鮮 大胆な一歩、北朝鮮で執り行われた秘密の洗礼式(3)

  • 米国の福音派牧師は半数近くが兼業している 調査で判明

  • 花嫁(28)伝道の思い 星野ひかり

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(225)エンディングを伴走して日本宣教を進めよう! 広田信也

  • ヨハネの黙示録(4)死とハデスの鍵 岡田昌弘

  • シリア首都で教会狙った自爆テロ、25人死亡 現地のキリスト教徒ら、さらなる暴力懸念

  • 全ての人の主イエス・キリスト 万代栄嗣

  • ワールドミッションレポート(6月29日):北朝鮮 大胆な一歩、北朝鮮で執り行われた秘密の洗礼式(3)

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(7)人は「単独者」である 三谷和司

  • 日本キリスト教協議会、米軍によるイラン核施設攻撃に抗議

  • ワールドミッションレポート(6月30日):インドネシア 静かに進む魂の変革

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • 米国の福音派牧師は半数近くが兼業している 調査で判明

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 日本福音同盟、戦後80年で声明 日本の教会が戦時下に犯した罪の歴史と悔い改めを確認

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • リック・ウォレン牧師、カトリックのイベントで講演 宣教による一致を語る

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • 日本キリスト教協議会、米軍によるイラン核施設攻撃に抗議

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.