Skip to main content
2025年6月15日20時35分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
貧民救済に命賭けて

貧民救済に命賭けて―山室軍平の生涯(2) 悲しい出会い

2015年2月28日12時15分 執筆者 : 栗栖ひろみ
  • ツイート
印刷
関連タグ:山室軍平救世軍

松浦鳳之進の元に下宿してから一カ月ほど経ったある日。築地活版所で少年職工を求めているという知らせが来たので、直ちに軍平は紹介状を持って向かった。面接に通り、いよいよ社会人としての第一歩を踏み出したわけである。月給8銭で、午前7時から午後5時まで、昼休みの30分を除いてびっしりと仕事に縛られる毎日であった。彼の仕事は雑役で、主として使い走りであった。初めの一カ月は激しい労働のために足が棒のように固くなり、夜中に膝が痛んで眠れないことがあった。それでも、初めて経済的に自立できた喜びは深かった。

その頃、家出をした彼を捜し回っていた杉本家から手紙が届いた。あれほど目をかけ、実の子同様に思ってきたのに、ひと言もあいさつなしに家を出るとは何事かと、弥太郎は書いてきた。軍平は涙を流しながら手紙を書きつづり、どうしても東京で勉強したいこと、そして日本から貧困をなくすために、将来大きな仕事がしたい旨を訴えた。この手紙に対して弥太郎は激怒し、離縁状を送りつけてきたので、軍平は再び山室の性を名乗ることになった。

この頃には何かとつらいことが重なった。もう一つは、過労と栄養不足から脚気(かっけ)になったことだった。足が紫色に腫れ、立ったり座ったりするのにひどい苦痛を覚えたが、彼は一日も休まずに職場に通った。

ところで、この築地活版所の支配人曲田成(まがりだ・せい)は、ことのほか軍平が気に入り、目をかけてくれた。給料の面でも少しずつ改善するよう取り計らってくれたので、8銭から12銭になり、やがて27銭になった。また、仕事も雑役から文選、そして検字課を経て欧文課に昇格した。これは英文の活字の注文に対し、それを取り揃える役目だった。これは語学の知識をわずかでも高めることになり、彼は知識の不足をさらに埋めるために読書に励んだ。この頃になると、少しは経済的な余裕もできたので、京橋区山下町にある英語学校の夜間部に通ったり、発行されたばかりの早稲田専門学校とイギリス法律学校の講義録をとって政治、経済、法律などを勉強した。

この活版所には200人近い従業員がいたが、ほとんどが教養のない、粗野な男たちだった。彼らは、新しく仲間入りした軍平があまりに真面目なので、何とか自分たちと同じようなことをさせたくて仕方がなかった。

「おい、おまえも少しは酒をやれよ」
「タバコも吸えないようじゃ、一人前の男じゃないぜ」

軍平は、仲間はずれにされるのが嫌だったので、無理に同じことをして見せた。彼らは軍平が一人離れて本を読んでいたりすると、邪魔したり、からかったりした。

その後、軍平は同僚に勧められて寄宿舎を出、京橋区本湊町のある家の二階に下宿することになった。そんなある日のことである。隣の部屋があまり騒がしいのでそっとのぞいてみると、いく組かの男女がもつれ合い、淫(みだ)らな行為にふけっていた。そのとき、初めて彼は自分が借りた家が売春宿であることに気づいた。すっかり気色が悪くなって自分の部屋に戻ろうとすると、まだ年もいかない少女が手をつかみ誘ってきた。その顔は土色で、苦しそうにぜいぜいと息をついている。

「ね、お願い」と、少女は言った。
「あたしの部屋で遊んで、お兄さん。お客を取らないと、ここ追い出されちゃうの」
そこへ人相の悪い男がやってくると、いきなり少女を張り倒した。
「おいっ! 客はどうした」
そして、その腕をつかんで引きずって行こうとした。
「ちょっと待ってください」
軍平はたまらなくなって自分の部屋に行くと、こつこつ貯めた一円を握って戻ってきた。
「これでこの人を自由にしてやってくれませんか」

男はせせら笑うと、こんなはした金じゃ3時間くらいしか貸せないぜと、一円を引ったくって行ってしまった。軍平は、少女を部屋に連れて行くと話を聞いてやった。

「あたし、おっ母さんが病気で薬代もないから、身売りしたんです。でも、ひどい人に買われて体はもうボロボロ。あたしを助けてくれる人なんかいるわけがない」
まだ幼い顔の娼妓(しょうぎ)はせき込み、あえぎながら言った。
「今に自分が学問をして偉くなったら、きっときみをここから出してあげるよ」
夢中で軍平が言うと、彼女は色あせた唇で微笑した。そして、こう言った。
「お兄さん、きっと迎えに来てね」

(続く:キリスト教に入信する)

■ 貧民救済に命懸けて:(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(最終回)

◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。派遣や請負で働きながら執筆活動を始める。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。動物愛護を主眼とする童話も手がけ、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で、日本動物児童文学奨励賞を受賞する。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝の連載を始める。編集協力として、荘明義著『わが人生と味の道』(イーグレープ、2015年4月)がある。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:山室軍平救世軍
  • ツイート

関連記事

  • 貧民救済に命賭けて―山室軍平の生涯(1) 強さと優しさと

  • 「貧民の父」 フランスのピエール神父 天国へ

  • 救世軍、全国主要都市で恒例の年末募金「社会鍋」 今年で104年

  • 榮義之牧師「30秒の祈りが世界を変える!」(21)・・・今すぐの祈りを!

  • 戦争・貧困に直面する子どもたちにプレゼントを オペレーション・クリスマス・チャイルド

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • コヘレトの言葉(伝道者の書)を読む(5)時の賛歌 臼田宣弘

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • ワールドミッションレポート(6月14日):スイス 信仰で買ったトラクター、ローレン・カニングハムとYWAMに託された農場の奇跡

  • ワールドミッションレポート(6月15日):ベラルーシのために祈ろう

  • 花嫁(27)絶えず喜んでいなさい 星野ひかり

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • ウォルター・ブルッゲマン氏死去、92歳 現代米国を代表する旧約聖書学者

  • 戦時下でも福音は止まらない ウクライナの伝道者が欧州伝道会議で講演

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • フランクリン・グラハム氏、ゼレンスキー大統領と面会 和平求め祈り

  • 淀橋教会、峯野龍弘主管牧師が引退し元老牧師に 新主管牧師は金聖燮副牧師

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • ウォルター・ブルッゲマン氏死去、92歳 現代米国を代表する旧約聖書学者

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.