温故知神—福音は東方世界へ(1)旧約聖書の神の民の離散 川口一彦

2014年8月24日16時31分 コラムニスト : 川口一彦 印刷
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2014年6月にイーグレープから改訂新装版『景教』が発売となり、本書を参考文献として「温故知神」のタイトルで連載していくことになりました。

1. 旧約聖書の神の民の離散

全ての人の人生には多かれ少なかれ諸問題が生じることは知られています。今日、イスラム圏や共産主義圏の中でキリスト者は危機や苦痛を伴う離散を余儀なくされるケースが生じ、それはキリスト者同士でも言える場合があります。問題が複雑になれば福音の平和が壊れ、離散させられ、苦痛を伴った十字架の贖罪愛の重大さを学び、信仰者は方向転換して再出発していきます。

旧約時代は離散の歴史でもありました。離散によって家族や家を失い、なぜこうなるのかと問いかけても解答がなく、それには隠された意味がありました。離散の民は後々の神の救いの実現に参与するものであったことを私たちも知ることになります。十字架の死と復活の福音が後々の全ての信じる民のために用意されていたように、信仰者の苦痛を伴った離散もその後の神の民への救いの懸け橋であったことは大きな意味があります。それは離散の民を通して福音が伝えられ次世代に継承されていく神の意志でありました。離散は悪いことではなく意味があり、使徒時代の離散の信徒たちは行先で福音を伝え、霊的エネルギッシュに満ち溢れていました。

2. 旧約時代の神の民が離散した意味

温故知神(1)福音は東方世界へ 川口一彦・日本景教研究会代表

新約聖書マルコの福音書16章の最後尾に「・・その後、イエスご自身、彼らによって、きよく、朽ちることのない、永遠の救いのおとずれを、東の果てから、西の果てまで送り届けられた」(新改訳聖書)とあり、福音は1世紀には東方世界にも広まっていたと考えられます。シルクロードの整備やマリンロードの活用、民たちの聖地巡礼の存在も大きかったことでしょう。

私たちは新約聖書の世界や使徒行伝並びにパウロの手紙類に焦点を当てすぎると片手落ちの見方になり、大切な意味が捉えられなくなります。つまり旧約聖書の世界は主にユダヤから東方世界が舞台で、そこで歴史が繰り広げられました。今のイラクやイラン、シリアやヨルダン、アラビヤ地域が旧約聖書の世界で、インドや中国もかすかに見えていました。

聖霊降臨日にエルサレムに来ていた者たちの多くは東方地域の人たちでした。1世紀の東西世界に福音が届けられた理由は、ユーラシア大陸に離散していたユダヤ人はじめ外国人の「敬虔な人」が福音を聞いたからでした。

3. 東方世界の離散者たちに福音が

温故知神(1)福音は東方世界へ 川口一彦・日本景教研究会代表

ソロモンの時代から南部インドにユダヤ会堂があり、現在も数名のユダヤ教徒が礼拝しています。2012年、私たちはケララ州コチンにあるその会堂を訪ねました。イスラエルが国家として成立してからはほとんどのユダヤ教徒たちは帰還しました。その地域にはトマス派(使徒トマスの群れ)の多くの教会があり、信徒の数は、その地域の宗教人口から見ればヒンドゥー教徒よりも多いと言われます。

温故知神(1)福音は東方世界へ 川口一彦・日本景教研究会代表

サン・トメ、マル・トマと呼ばれた使徒トマスと同労者たちは紀元32年頃に北部インドに宣教、中国や南部インドでも宣教し7つの教会の設立後、トマスは土地の人から槍で突かれて72年にチェンナイで殉教しました。トマスは洞窟で祈り続け、祈りの人と言われています。

その地の至るところに見受けられた信徒や会堂を目前にして筆者が考えたことは、新約聖書が正典化しない時代、トマスは見たこと聞いたことの真実と真理を伝えることによって、主イエスの力を受けて悪霊を追放し、病を癒し、奇跡を行ない、神の愛で隣人を愛し、主イエスへの信仰と永遠の神の国を伝えることができたのだと考えます。

温故知神(1)福音は東方世界へ 川口一彦・日本景教研究会代表

やがて福音は商人の信徒たちによって中国に入り、そこで栄えたのが東方の景衆・景教です。しかし850年代、武宗皇帝は仏教を弾圧するために景教徒もその対象としました。信徒も指導者も国外追放され、多くは殺害されました。多くの信徒たちは中央アジア、北京の山間地、内モンゴル、福建省などの地に住みつき、会堂は十字寺、名称は景教ではなく也里可温(エリカオン=福音の意味)と名乗り、信仰を守りました。その地域から十字とシリア語聖句の入った墓石がたくさん発見されています。

命の危機にさらされながら離散した民も神の国を目ざして世を去り、本当の安息に入ることになります。そこには主イエスがおられて迎えて下さるのです。

※ 参考文献:『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、2014年、イーグレープ)

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川口一彦(かわぐち・かずひこ)

1951年、三重県松阪市に生まれる。現在、愛知福音キリスト教会牧師。日本景教研究会代表、国際景教研究会(本部、韓国水原)日本代表。基督教教育学博士。愛知書写書道教育学院院長(21歳で師範取得、同年・中日書道展特選)として書も教えている。書道団体の東海聖句書道会会員、同・以文会監事。各地で景教セミナーや漢字で聖書を解き明かすセミナーを開催。

著書に『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—(改訂新装版)』(2014年)、『仏教からクリスチャンへ』『一から始める筆ペン練習帳』(共にイーグレープ)、『漢字と聖書と福音』『景教のたどった道(韓国語版)』他がある。最近は聖句書展や拓本展も開催。

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