こころの手帳(19)依存症 浜原昭仁

2015年10月8日10時25分 コラムニスト : 浜原昭仁 印刷

依存症とは、良くないと分かっていながら、やめたくてもやめられない繰り返しの行為で、近年著しく増加しています。多くの依存が知られていますが、アルコール依存症、薬物依存症、ニコチン依存症、ギャンブル依存症、インターネット依存症、ゲーム依存症、性依存症(ポルノ依存症)、共依存症(人間関係にとらわれ依存している)、過食症などが代表的なものです。

共通する最初の問題点は否認です。病的な状態なのにその依存に気付いておらず、このままではいけないという気持ちがわいても、他者から指摘されたときに認めようとしません。徐々にその依存が人格を支配して、やめようにもやめられない制御困難な状態に陥り、ついにはその人の人柄も変えてしまいます。

さらにうつ状態、不安、焦燥感、落ち着きのなさ、集中力低下、意欲低下などの精神症状が現れます。慢性の空虚感と自信欠乏が心に蔓延して、嘘をつくことが多くなり、衝動的、自己や他者への破壊的、暴力的言動が増えるようになります。

クリスチャンも悩まされる

依存症は体に潜んだがんのように心の奥深くに住みついて、ゆっくりと確実にその人の人生を破壊していく恐ろしい病です。物や情報や快楽手段があふれた現代の病であり、クリスチャンさえも冒される可能性のある悪魔の巧妙な罠です。教父アウグスティヌスの性依存が古くから知られており、彼は神によって依存が解放された喜びを『告白』に記しています。

近年のインターネットの普及に伴い問題になっているのがゲーム依存と性依存(ポルノ依存)です。アルコールやギャンブルとは異なり、人目につきにくく、発見が遅れ慢性化しやすいのですが、精神や霊的な生活への悪影響は深刻です。クリスチャンの場合、信仰を弱体化させ、神の働きを妨げるので、放置できません。依存症のクリスチャンは潜在的に無力感と強い罪意識に圧倒されていて、代償的に神の業に励みますが、真の霊的祝福は得られず、虚無感がぬぐえません。

脳が冒されていく

例えばポルノ依存の場合は刺激的な映像を見たときに、快楽と喜びを誘発するドーパミン(脳内で神経と神経の情報をつなぐ物質)がセックスの時と同じように脳内で放出されます。しかし、視覚的にたくさんの生々しい映像に遭遇することによって慣れの現象が起こり、それまでの刺激では興奮できなくなります。より多くのドーパミンを出すために、より激しい性的な刺激を必要とするのです。それで通常のセックスでは喜びが感じられなくなります。

さらに依存が進行すると、意欲や報酬系に関係する脳内の線条体という部分が縮んできます。これは慢性のアルコール依存や薬物依存で起こるのと同じ病的な脳の神経の破壊です。

依存からの脱出

22歳のO.O.さんはYouTubeにおいてポルノ依存からの回復を証ししています。法学部を卒業した優秀な彼女ですが、14歳の時に好奇心から初めてポルノを見た衝撃がきっかけで、ポルノ依存に陥ってしまいました。18歳から21歳の間は特にひどく、自分の部屋にこもりきりになり、パソコンで無限にアダルト映画を観て、日に日により刺激的なものでないと満足できなくなっていくという悪循環に陥ってしまったそうです。

やがては周りにいる人々も「人間」ではなく「単なる性的な物体」にしか見えなくなっていきました。彼女はその状態を孤独で恥ずかしいものと感じてはいたものの、自分の力では脱出することができなかったと言います。

彼女はイエス様に救いを求め、友人の助けも得て、今はこの依存症から解放されています。彼女の場合もそうですが、回復のコツは、まず自分が病的な依存状態であると認めること、自分の力では回復できない無力さを認めること、しかし神には私を解放する力があることを信じることです。

その上で、目をコントロールすること、すなわち自分を性的に興奮させるような全ての光景から目をそらすことが大切です。それはポルノ的なものを一切見ないことを意味します。40代のあるクリスチャン男性は決心の後に大量のDVDを捨てて、大きなハードディスク内の映像をすべて消去しました。それは彼にとって宝物であり、偶像崇拝でした。彼はそれと手を切って、悪魔に宣言したのです。「もうお前の言いなりにはならない!」

さらに異性の裸や下着・水着姿を露呈する映画やテレビ番組、CM、新聞のチラシ、カタログなどを一切見ないことも決心しました。外出中も異性の性的な部分に目が行かないようにいつも注意しています。自分がいかに性的な誘惑に弱いかをしっかりと認識し、強い信念を持って自分を規律しなければ、決してポルノ依存症から回復することはできないのです。

光の交わり

この世界で最強の依存物質は何でしょうか。麻薬でもなければタバコでもありません。それは人間です。人はいつも不安なので、何よりも人に寄りすがりたいのです。それが得られないときに、足りない淋しさやむなしさを、依存という代用品にすり替えてしまうのです。ですから人格的なつながりこそ治療の突破口です。すなわち、あなたの依存を理解してくれる人を探し、その人に助けを求め(健全な依存)、告白して、祈ってもらうならば、依存という魔力に打ち勝つ聖霊の力を体験できます。

「しかし、もし神が光の中におられるように、私たちも光の中を歩んでいるなら、私たちは互いに交わりを保ち、御子イエスの血はすべての罪から私たちをきよめます」(Ⅰヨハネ1:7)

完全な人間であり、弱さを理解してくださるイエス様にお頼りすること、そして「助けてください!」と祈り続けることが、回復のきっかけとなることでしょう。

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浜原昭仁

浜原昭仁(はまはら・しょうに)

金沢こころクリニック院長。金沢こころチャペル副牧師。1982年、金沢大学医学部卒。1986年、金沢大学大学院医学研究科修了、医学博士修得。1987年、精神保健指定医修得。1986年、石川県立高松病院勤務。1999年、石川県立高松病院診療部長。2005年、石川県立高松病院副院長。2006年10月、金沢こころクリニック開設。著書に『こころの手帳―すこやかに、やすらかにー』(イーグレープ)。

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