こころの手帳(1)はじめに・ストレス 浜原昭仁

2015年1月30日11時14分 コラムニスト : 浜原昭仁 印刷

はじめに

私は30年間ほど心の病気の診療に携わってきましたが、患者さんが病気や心の仕組みについての正しい知識を持つことで、症状が早く治ったり、再発しにくくなったりすることが分かってきました。残念ながら診察には十分な時間が割けないので、小冊子によって病気の方やそのご家族が、病気を理解できるようにと願って作られたのが「こころの手帳」です。このたび、一部分を少し加筆修正して掲載させて頂くことになりました。

内容はおもに日常よく見られる精神的な病気や病状の説明です。対処方法を学ぶことで治療の大きな助けとなるでしょう。

また「こころの手帳」と平行して、過去の著名な精神科医とその理論を紹介していきたいと思います。フロイド、アドラー、コフート、フランクル、フロムなど彼らはすべてユダヤ人であり、その背景には聖書の教えや知恵が隠されています。現代のこころの医療や文化にも影響を与えてきた彼らの思想をもう一度聖書的な視点から見直すことで、聖書の真理がよりくっきりと照らされてくるのではないかと期待して書かせて頂きます。この試みが皆様の心の健康と信仰生活の活性化にお役に立ちますようにお祈りいたします。

ストレス

人は生きている限りストレスからのがれることができません。強いストレスが原因で体や心の病気にかかることは多くの研究によって知られています。近年経験された大地震のような衝撃的な体験や、家族による虐待などにより心に傷を残すような場合をトラウマ(心的外傷)と呼び、後にフラッシュバック(辛い出来事の場面を突然、ありありと思い出す)や感情の鈍感さを残すことがあります。

人が産まれてくる時が最大のストレスだという考え方もあります。オットー・ランクが提唱した出産外傷説で、出産の瞬間に母から取り出され、 臍の緒を切られて、一人でこの世界に投げ出されたことが人間のトラウマの源という説です。医学的には証明されていませんが、生涯にわたりストレスに曝され続けている人間の危うい存在を考えさせます。

しかし、適度のストレスは必要です。骨や筋肉の成長に運動負荷が不可欠なように、心が成長して強くなっていくには苦しみや試練が欠かせないのです。

私の定義したストレスとは「自分のコントロールできないこと。強制されること」です。逆に、楽しみとは「自由に決められる」ことにあります。極端に言えば、たとえ遊びであっても、強制されるならストレスですし、仕事であっても自分の裁量で行えるならば喜びです。

日頃、人々はどのようなことをストレスと感じているでしょうか。NHKのストレス調査結果(男女1800人を対象、2002年)によりますと、 先の見通しが立たない(25%)、 老後の心配(24%) 、家計にゆとりなし(22%)、 年を取って衰える(21%)、仕事が忙し過ぎる(15%)等が上位に挙げられました。一言で言えば将来への不安や思い煩いが上位を占めているといえます。そもそも不安とは現実ではなく、これから先に何かとんでもない苦しみがやってくるのでないかと恐れることです。これらは自分ではコントロールできないことばかりです。「もし、お金が足りなくなったらどうしよう」「もし、がんになったらどうしよう」などと、私たちは未来に起こるかもしれないことに絶えず心が乱されています。ある人は自分がどんな死に方をするかさえもずっと心配しているのです。

このような思い煩いが心の中を占領してしまうと、笑顔が消え、家族の笑い声も聞こえなくなります。実験によれば、思い煩っていることの90%以上は、決して現実に起こりません。そして、不安や思い煩いは体力や免疫力を低下させ病気を起こしやすくします。

このような不安は、ウオーキングのようなリズミカルな繰り返しの運動や夢中になれる趣味によって軽減できます。さらに、誰かに話すことはストレス解消に大変役に立ちます。

自分の意識を未来の心配に向け過ぎず、現在の、今、目の前にあるこの時を生きるようにするとき思い煩いから解放されます。

「だから、あすのための心配は無用です。あすのことはあすが心配します。労苦はその日その日に、十分あります」(マタイ6章34節)

この聖書の言葉が教えていることは、ある種の事柄は自分でコントロールできないことを認めて、それを神様に任せることです。神が与えて下さる安らぎとはストレスの無い状態ではなく、どんなにストレスがあっても揺るがない心の平安です。あなたのストレスも神様にゆだねてみてください。

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浜原昭仁

浜原昭仁(はまはら・しょうに)

金沢こころクリニック院長。金沢こころチャペル副牧師。1982年、金沢大学医学部卒。1986年、金沢大学大学院医学研究科修了、医学博士修得。1987年、精神保健指定医修得。1986年、石川県立高松病院勤務。1999年、石川県立高松病院診療部長。2005年、石川県立高松病院副院長。2006年10月、金沢こころクリニック開設。著書に『こころの手帳―すこやかに、やすらかにー』(イーグレープ)。

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