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太平洋の橋―新渡戸稲造の生涯

太平洋の橋―新渡戸稲造の生涯(3)青年よ、大志を抱け!

2019年10月2日17時49分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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関連タグ:新渡戸稲造

1877(明治10)年。稲造は札幌農学校に第2期生として入学した。ここでは寮費、食費、生活費などがまかなえる官費(月16円)をもらえたので、養父の太田時敏の負担は大いに軽減されることになった。

初めてこの学校の門をくぐったとき、稲造は上級生が下級生を出迎え、教室に案内し、下足番をする姿を見て大いに驚いた。上の人が下の人に仕える――。それが、稲造が入学する前まで教鞭を執っていたクラーク博士の教えを守る第1期生たちの姿だった。

稲造は、このクラーク博士が、課外で「キリスト教倫理」を教えていたと聞いた。(こんな立派な先生が、どうして課外の授業を受け持つのだろう?) 稲造は不思議に思った。それから間もなく、彼は級友の宮部金吾、内村鑑三らからその理由を聞いた。それは――こういうことだった。

クラーク博士はこの学校に赴任するとき、玄武丸の船上で北海道庁長官の黒田清隆と語り合った。

「クラーク博士。あなたは学生にどんなテキストを使って道徳教育をなさるおつもりですか?」 黒田が尋ねると、クラークはこう答えた。「それは、バイブル(聖書)です。バイブル以外のものを使う気はありません」

黒田の顔は、渋くなった。「聖書といえば、キリスト教でしょう? わが校の生徒たちに特定の宗教を押しつけるのはよろしくない。せめて論語とか他の哲学書を使うわけにはいかないですかな?」「聖書を土台としなくては十分な青少年の教育はできません。どうか聖書を使う許可をお願い致します」

2人は長い間話し合ったが、平行線をたどり、どちらも譲れないといった様子だった。すると、船が函館に着いたとき、クラークはこう言ったのだった。「もし生徒たちの教育のために聖書を使わせてもらえないなら、私はこの船でアメリカに帰ります」

驚いた黒田長官は何とか説得しようとしたが、クラークは譲らなかった。仕方なく、黒田はこう言った。「分かりました博士。あなたの望みどおりに致しましょう。ただし、授業は課外にして、出席自由ということにしていただけませんか? そうすれば問題はありません」。すると、クラークは手を差し出し、黒田はそれを握り返した。こうして、クラークはこの学校に赴任してきたのだった。

クラーク博士は、聖書を使った授業で生徒たちにこう教えた。――すべてを造り、これを愛される神は人格的な神である。それ故、人間は神と人格的に関わるように造られており、その垂直な関係においてのみ生きることができ、隣人を自分の兄弟として愛することができるのだ――と。

博士の人徳はクラス全員に及び、一人残らずクリスチャンとなった。彼らは「イエスを信じる者の契約」というものを作り、全員がこれに署名した。そして毎日祈り、全力を尽くして勉学に、奉仕に励むことを誓い合ったのである。

しかしながら、それから間もなく、クラーク博士はマサチューセッツ農科大学長の職に就くために札幌を去ることになった。生徒一同は、室蘭から乗船するために札幌を出るクラーク博士を見送るために、彼の馬のあとについて歩き続けた。誰もが博士との別れを惜しみ、泣きたい思いをこらえつつ、黙々と歩いていた。

すると、途中で博士は馬を止めて言った。「皆さん、いよいよお別れです。元気で、そして祈ることを忘れずに」。それから、一人馬を進めながら、突然振り返って大声でこう叫んだ。

「青年よ、大志を抱け!(ボーイス・ビイ・アンビシャス!)」そして、全速力で駆け去って行った。

その翌年1878(明治11)年6月2日。稲造は2人の友人と一緒にハリス師から洗礼を受けた。3人はそれぞれフランシス宮部、ヨナタン内村、パウロ太田という洗礼名をもらった。3人は、クラーク博士の志を胸に、どのような道を歩もうとも大きな理想を持ち、神と人に仕えるために励もうと誓い合うのだった。

*

<あとがき>

「青年よ、大志を抱け!」このあまりにも有名なクラーク博士の言葉を知らない人はいないでしょう。キリスト教国でないにもかかわらず、小学校の教科書にも取り入れられたこの名言は、日本中に知られています。

クラーク博士は、「キリスト教倫理」という学科を教えるためアメリカから札幌農学校にやってきました。彼は一貫して聖書に基づいた人格教育を青少年にほどこすことを理想としていました。

この学校に赴任するとき、北海道庁の長官黒田清隆が「キリスト教の押しつけは好ましくないので授業に聖書を使わないでいただきたい」と言うと、「聖書を土台としなくては、十分な青少年の教育はできません」と答えた話は有名です。

実にこの「聖書に基づく人格教育」の理想はこの札幌農学校を水源として、その清らかな水は脈々としてその後できた各地のミッション・スクールに流れていくのです。そして、新渡戸稲造もその影響の中で成長していったのでした。

(※これは史実に基づき、多少のフィクションが加えられた伝記小説です。)
(記事一覧ページの画像:新渡戸記念館提供)

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。その他雑誌の連載もあり。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:新渡戸稲造
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