Skip to main content
2025年6月15日20時35分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
社会的弱者の友として―賀川豊彦の生涯

社会的弱者の友として―賀川豊彦の生涯(1)暗い出生

2016年1月7日21時09分 執筆者 : 栗栖ひろみ
  • ツイート
印刷
関連タグ:賀川豊彦

兵庫県神戸区兵庫島上町(ひょうごしまかみまち)にある「賀川回漕店」はたいそう繁盛していた。店主の賀川純一は商売上手で、郷里徳島県の産物「阿波藍(あわあい)」(染物の原料)の輸送で財産を築き上げ、裕福な暮らしをしていた。

しかしながら、彼は自分の家族のことはあまり顧みない男であり、正妻みちと別居し、芸者の萱生(かおう)かめとの間に端一と栄という2人の子どもをもうけていた。

やがて1888(明治21)年7月10日、かめとの間にまた男の子が生まれた。純一は、ことのほか喜び、日頃信心している大麻比古(おおさひこ)神社の豊受(とようけ)大神から名前をもらい、豊彦と名付けた。

「この子は将来出世するよ。五穀豊穣をつかさどる神様から名前を頂戴したからな」。純一は、かめにそう言った。後になってこれは、全く別の意味で実現した。

豊彦はすくすくと育ち、4歳になった。家のすぐ近くが海岸だったので、彼はよく砂浜で遊んだ。遊び友達はたくさんいたが、なぜか少し経つと、彼らは意味ありげに目配せし合ったり、変な目で見るようになった。どうしてだろう? 彼は首をかしげた。

そんなある日、彼は男の子たちを相手に砂浜で相撲をとっていた。彼はなかなか力があって、相手を片端から負かしてしまった。

「この子は小さいくせに強いなあ。これはかなわん」。彼らは口々にそう言って引き揚げようとした。その時、負けた一人が、服についた砂を両手で払い落としながら、憎々しげにこう言った。「へん。偉そうにしていたって、お前は妾(めかけ)の子じゃないか」

すると、仲間たちは急に白々しい表情になった。「こいつは力があっても、少しもいばれないのさ。やあい! 妾の子!」。彼らは思い切りはやし立てると、行ってしまった。

(だからみんなは自分のことを変な目で見るんだな。)ようやく豊彦は納得できた。あの優しい母は父の本当の妻ではなくて、遊び相手だったのである。これは彼を打ちのめした。

そのうち、弟の義敬(よしのり)が生まれると、彼は少し慰められた。この弟が大好きで、終始背中におぶっては、どこへでも出掛けていった。彼は相変わらず近所の男の子たちと暴れ回ったが、その日も棒切れを振り回してチャンバラごっこをしていた。そこへ、熊吉という番頭が青い顔をして迎えに来た。

「坊ちゃん、早くおうちにお帰りなさいな」。その様子がただごとでないので、急いで帰ってみると、父の純一が息もたえだえになって死を迎えようとしていたのである。豊彦が取りすがると、父はかすかに目を開けた。

「お前の将来が心配だ。こんな父親を持って、かわいそうにな」。そして、苦しげに息をつくと、純一はそのまま息絶えた。かめの嘆きは大きく、彼女は幾日も泣き暮らし、日に日に痩せ衰えていった。

年が明けて1893年1月2日。かめは下の弟、益慶(ますよし)を産んで間もなく、熱を出して重体となり、17日の夕方、夫の後を追うようにして世を去った。賀川家の子どもたちは、天涯孤独の身となったのである。

30歳になる兄の端一は、父の店を継ぐことになり、幼い2人の弟は乳母のお駒に引き取られた。そして豊彦と姉の栄は徳島に住む正妻みちの所に身を寄せることになり、兄弟5人はばらばらになったのであった。

この時から、豊彦のつらい日々が始まった。正妻のみちは妾の子である2人を憎み、気に入らないことがあると殴りつけたりした。

「ああ、なんて不運なことだろう。妾が産んだ子の始末までしなくてはならないなんてさ」。みちは毎日こう言って嘆いた。

その年の4月。豊彦は堀江南小学校に入学した。しかし、ここでも彼は悲しい思いをしなくてはならなかった。

「やあい妾の子。知ってるぞ。お前のお母さんは本当のお母さんじゃないんだろう?」。級友たちはこう言ってはやし立て、彼を仲間外れにした。豊彦は、いつも一人で吉野川の岸辺に行き、ザリガニやタニシとたわむれて過ごしたが、そのような時、いつもその頬は涙にぬれているのであった。

そのうち、もっとつらいことが起きた。たった一人、用務員の娘ふじえだけは彼に優しくしてくれたのだが、たまたまその日、彼が傘を持って外に飛び出した瞬間、彼女とぶつかり、その日以来、ふじえは姿を見せなくなったのである。そして間もなく、彼女が肺結核で死んだといううわさが流れ、級友たちは、それが豊彦のせいだと一斉に非難をあびせた。その時、徳島に来た兄の端一から慰められたが、これは彼にとって一生消えぬ心の傷となった。

次回へ>>

◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。派遣や請負で働きながら執筆活動を始める。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。動物愛護を主眼とする童話も手がけ、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で、日本動物児童文学奨励賞を受賞する。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝の連載を始める。編集協力として、荘明義著『わが人生と味の道』(2015年4月、イーグレープ)がある。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:賀川豊彦
  • ツイート

関連記事

  • 韓国で進む賀川豊彦の再評価 格差社会で関心高まる「分かち合い、共に生きる」精神

  • 「賀川豊彦と吉野作造」移動展、松沢資料館で開催中 2人の偉大な指導者が今伝えたいこととは?

  • シンポジウム「21世紀に甦る賀川豊彦・ハル」 TCU共立基督教研究所と明学キリスト教研究所が共催(1)

  • 子どもと礼拝の会10周年記念講演会 トマス・J・ヘイスティングス博士が語る「賀川豊彦と幼児教育」

  • ノーベル賞候補だったキリスト教社会活動家・賀川豊彦の胸像完成 神戸で除幕式

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • コヘレトの言葉(伝道者の書)を読む(5)時の賛歌 臼田宣弘

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(224)音楽が支える聖霊による祈り 広田信也

  • ワールドミッションレポート(6月15日):ベラルーシのために祈ろう

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • ワールドミッションレポート(6月14日):スイス 信仰で買ったトラクター、ローレン・カニングハムとYWAMに託された農場の奇跡

  • ワールドミッションレポート(6月12日):ベルギーのために祈ろう

  • 戦時下でも福音は止まらない ウクライナの伝道者が欧州伝道会議で講演

  • 花嫁(27)絶えず喜んでいなさい 星野ひかり

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • ウォルター・ブルッゲマン氏死去、92歳 現代米国を代表する旧約聖書学者

  • 戦時下でも福音は止まらない ウクライナの伝道者が欧州伝道会議で講演

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • フランクリン・グラハム氏、ゼレンスキー大統領と面会 和平求め祈り

  • 淀橋教会、峯野龍弘主管牧師が引退し元老牧師に 新主管牧師は金聖燮副牧師

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.