Skip to main content
2025年8月30日22時21分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
社会的弱者の友として―賀川豊彦の生涯

社会的弱者の友として―賀川豊彦の生涯(2)雲間から差す日

2016年1月21日20時43分 執筆者 : 栗栖ひろみ
  • ツイート
印刷
関連タグ:賀川豊彦

兄の端一の勧めによって豊彦は、中学校の試験を受けることになった。そして優秀な成績でパスし、中学生となる。学費は、端一が負担してくれることになった。最初は寄宿舎に入り、2年後に片山塾に移った。ここは英語教師の片山正吉(かたやま・しょうきち)というクリスチャンが開いたもので、落ちついた雰囲気の中で、豊彦は熱心に勉強に励んだ。

そのうち、友人の一人が近くの教会でアメリカ人宣教師C・A・ローガン博士が週1回英語でキリスト教の話をすることを教えてくれた。英語の勉強がしたい一心で教会の門をくぐった豊彦は、ローガン博士の柔和に輝いた顔と優しい響きを持つ言葉に心が癒やされていくのを覚えた。

同じ頃、やはり宣教師として日本に来ていたH・W・マヤス博士は、自宅を開放して聖書の講義を始めたので、豊彦はこちらにも通うことになった。マヤス博士は、寂しそうな暗い目をしたこの少年を心に留め、困ったことがあったら相談に来るように言葉をかけた。

そのうち、賀川家にさらなる悲劇が起きた。「賀川回漕店」を継いだ兄の端一は父親ゆずりの遊び好きの性質がたたって、商売に身が入らなくなり、芸者と遊び、家に帰らなくなった。商売は使用人に任せきりで、新しい事業を始めてひともうけしようと手を伸ばしたのが失敗。莫大な借金を抱えたまま破産したのである。そして豊彦への仕送りも跡絶えたので、彼は学費が払えなくなってしまった。こうして1903(明治36)年4月、ついに「賀川回漕店」は倒産し、家族は離散した。

それは小雨の降る寒い日であった。豊彦は、寄宿舎を出、叔父の森六兵衛(もり・ろくべえ)の家に息子の勉強をみるという条件で住み込むことになった。荷物をすっかり入れると、彼は傘もささずに泣きながらマヤス博士の所に飛んで行った。

博士は、彼の肩を抱いて庭に連れ出した。「さあ、見てご覧なさい」。博士は豊彦を青々とした芝生の上に立たせ、涙に濡れた顔を太陽の方に向けさせた。

「涙を乾かして太陽を仰ぐのです。泣いている目には太陽も泣いて見え、微笑む目には太陽も笑って見えるのですよ」

この時から、豊彦はマヤス博士の聖書講座に欠かさず出席するようになった。そして、博士は彼の学費その他生活上の援助をしてくれることになったのであった。

「私の書籍に入って読みたい本があったら読みなさい」。博士はそう言って、彼に力をつけさせるために洋書を貸してくれた。豊彦はわずかの間に英語をこなし、やすやすと英文と書物を読破できるようになったのである。

そんなある日のことであった。彼は級友の一人と話をしながら散歩をしていた。級友は彼の今までの人生の話を聞くとこう言った。「そんなに次々と恐ろしい不幸が降りかかるのは、君の先祖が犯した業(ごう)のせいだよ」。そして、彼のもとを離れていってしまった。

(そんな業を背負って生まれてきたのなら、この自分の人生には何の意味があるというのだろう。)彼の目に、淀んだ水に浮かぶ泡が映った。そして突然激しい喪失感を覚えた。発作的に川に飛び込もうと身構えた――その時だった。その肩に温かな手が触れた。

「こんな所でどうしたの?」。驚いて振り返ると、よくマヤス博士の教会で見かける森茂(もり・しげる)という青年が立っていた。彼は将来材木商を営むために、材木屋に奉公に行っており、大きな荷物を背負っていた。

「自分は生まれてこないほうがよかったんです。こんな自分なんか・・・」。思わず自暴自棄になってそう言うと、森茂は彼の手をしっかり握って、一緒に歩き出した。

「神様はお見捨てにならないよ」。彼は言った。「われわれ人間なんて明日の命も分からない存在なのに、それでも神様はお守りになる。明日焼かれる雑草さえ養われるのだから」

「こんなに遅く帰るんですか?」。そう尋ねると、彼は微笑した。「この近くに、ちょっと面倒を見てあげている人がいるもんでね」

それから、森茂は彼の肩を叩くと言った。「自分のような者は何も言ってあげられないけど、どんな時にも神様は君のことをお守りになるということだけは忘れないでね」。そして歩み去った。

森茂の言葉は、豊彦の心に大きな変化を与えた。何の意味もないと思われていた自分の命が、神の前に尊いものとされていたのだ。

1904(明治37)年2月21日。豊彦は徳島キリスト教会でマヤス博士から洗礼を受けた。この年の12月9日。身を持ちくずした兄の端一が韓国で死んだという知らせが届いた。

<<前回へ     次回へ>>

◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。派遣や請負で働きながら執筆活動を始める。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。動物愛護を主眼とする童話も手がけ、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で、日本動物児童文学奨励賞を受賞する。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝の連載を始める。編集協力として、荘明義著『わが人生と味の道』(2015年4月、イーグレープ)がある。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:賀川豊彦
  • ツイート

関連記事

  • 温故知神—福音は東方世界へ(38)景教徒のビジネスマン伝道者には殉教者もいた 川口一彦

  • 律法と福音(27)福音に似て非なるもの 山崎純二

  • 福音の回復(1)「つらさ」の原因 三谷和司

  • 自分のためだけの時間を持つ 菅野直基

  • 死に勝るいのちを得て―がん闘病817日の魂の記録―(51)相手は自分を反映する鏡 米田武義

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • アッセンブリー京都教会の村上密牧師死去、異端・カルト問題に長年取り組む

  • 「信教の自由を脅かす」 旧統一協会の解散命令巡り特別集会、西岡力氏らが登壇

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(11)「苦しみ」が始まるまでの経緯(前半)悪魔の起源 三谷和司

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(11)「苦しみ」が始まるまでの経緯(後半)救いの計画 三谷和司

  • 21世紀の神学(30)伊藤貫氏が提唱する古典教育とセオセントリズムの復権 山崎純二

  • 米カトリック教会で銃乱射事件 ミサ参加中の付属学校の子どもら2人死亡、17人負傷

  • ウクライナ、米大衆伝道者フランクリン・グラハム氏に勲章授与 人道支援を評価

  • ワールドミッションレポート(8月30日):リビア 砂浜に響く殉教者たちの祈り(4)

  • イエス様と共に働く 菅野直基

  • 篠原元のミニコラム・聖書をもっと!深く!!(241)聖書と考える「大追跡~警視庁SSBC強行犯係~」

  • 「信教の自由を脅かす」 旧統一協会の解散命令巡り特別集会、西岡力氏らが登壇

  • 牧師を辞めた理由は? 元牧師730人を対象に調査 現役牧師や信徒へのアドバイスも

  • 米カトリック教会で銃乱射事件 ミサ参加中の付属学校の子どもら2人死亡、17人負傷

  • 進藤龍也氏×山崎純二氏対談イベント「神様との出会いで人生が変わった」 埼玉・川口市で8月30日

  • 米福音派の重鎮、ジェームス・ドブソン氏死去 フォーカス・オン・ザ・ファミリー創設者

  • 花嫁(31)神に従う者の道 星野ひかり

  • 21世紀の神学(30)伊藤貫氏が提唱する古典教育とセオセントリズムの復権 山崎純二

  • 「森は海の恋人」の畠山重篤さん、気仙沼市の名誉市民に

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(11)「苦しみ」が始まるまでの経緯(前半)悪魔の起源 三谷和司

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(11)「苦しみ」が始まるまでの経緯(後半)救いの計画 三谷和司

  • 「信教の自由を脅かす」 旧統一協会の解散命令巡り特別集会、西岡力氏らが登壇

  • 牧師を辞めた理由は? 元牧師730人を対象に調査 現役牧師や信徒へのアドバイスも

  • 新約聖書学者の田川建三氏死去、89歳 新約聖書の個人全訳を出版

  • キリスト教徒が人口の過半数を占める国・地域、この10年で減少 米ピュー研究所

  • N・T・ライト著『わたしの聖書物語』が大賞 キリスト教書店大賞2025

  • 「20世紀のフランシスコ・ザビエル」 聖心女子大学で岩下壮一神父の特別展

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(10)「苦しみ」から「苦しみ」へ 三谷和司

  • 日本キリスト教協議会、戦後80年の平和メッセージ キリスト者の戦争加担にも言及

  • コンゴで教会襲撃、子ども含む43人死亡 徹夜の祈祷会中に

  • 福音派増えるベネズエラ、大統領が「マーチ・フォー・ジーザスの日」制定 全国で行進

編集部のおすすめ

  • 「20世紀のフランシスコ・ザビエル」 聖心女子大学で岩下壮一神父の特別展

  • 「罪のない赤ちゃんを殺さないで」 東京でマーチフォーライフ、中絶の問題を訴え

  • 教育改革が「日本のリバイバルにつながっていく」 牧師の金子道仁参院議員が講演

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.