Skip to main content
2025年6月15日20時35分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
生命への畏敬―アルベルト・シュヴァイツァーの生涯

生命への畏敬―アルベルト・シュヴァイツァーの生涯(1)動物の苦しみ

2016年7月15日19時52分 執筆者 : 栗栖ひろみ
  • ツイート
印刷
関連タグ:アルベルト・シュバイツァー

1875年1月14日。アルザスのカイザーベルクにある赤レンガ屋根の家に男の子が誕生した。父親は教区の牧師代理ルードヴィヒ・シュヴァイツァー、母親はアデーレと言った。母方の祖父シリンガーはやはり牧師で学校教師、オルガンの名手でかつオルガン製作者でもあった。

アルベルトは第二子であったが、生まれたときは虚弱で黄色い顔をしたひどく醜い子であった。生後半年がたつ頃、父はギュンスバッハの教会に牧師として赴任することになったので、母は美しい服を着せた赤ん坊を皆に見せたが、誰一人として目もくれず、おせじを言う者もなかったので、母は泣き出した。

しかし、子どもは生きながらえ、3人の姉妹と1人の弟と共に健康に育っていった。少し大きくなると、日曜日には父が牧する教会に出席したが、月1回午後の礼拝に読まれる南アフリカの宣教師カザリの手紙に心を動かされた。彼はこの地球上には多くの苦しみが満ちていることに早くから気付いていた。特に動物が人間の手から受ける苦しみというものに対してどう理解していいのか分からなかった。

そんなある日のこと。それは恐ろしい体験であった。アルベルトは、屠殺場に引いて行かれる足の悪い老馬を1人の男が前から引っ張り、もう1人が後ろから棒で打ちながらやって来るのに出会った。馬は通り過ぎるとき、潤んだ優しい目を彼に向けた。それは人間を恨むでもなく、憐れみを乞うでもなく、ただじっと苦しみに耐えている目であった。彼は身動きもできず、化石のようにその場に立ちつくしていた。

その晩、いつものように母親が一緒に祈りを唱えるために寝室に入って来ると、少年がすすり泣きをこらえているのを見た。

「どうしたの? アルベルト」。母は優しく尋ねたが、彼は何も言わなかった。友達とけんかをしたか、仲間外れにされたのだろう――と考えた母は、いつものように彼と一緒に祈りを唱えた。そして、「おやすみのキス」をしてから出て行った。その足音が消えると、彼はベッドの上に正座し、大急ぎで自分が作った祈りを付け加えた。

「愛する神様、全ての生きものをお守りください。彼らの痛みと苦しみを癒やし、安らかに眠らせてください」

この祈りは、彼が終生口にしたものであった。7歳になると、アルベルトは小学校に入学した。その頃には背も伸び、体つきもがっしりとしてきた。ギュンスバッハ村の子どもたちは皆貧しく、良い身なりをしている彼を「お坊ちゃん」と呼んで、特別な目で見ていた。

ある時、彼は仲間と取っ組み合いをし、自分より体が大きく強いゲオルク・ニッチェルムを負かした。すると、彼は悲しげに服についた泥をはたき落としながら言うのだった。

「お前みたいに週2回も肉入りスープが食べられたら強くなれるのになあ」。アルベルトは強い衝撃を受けた。(週2回の肉入りスープがそんなにぜいたくなことなのか。でもそれが、仲間の心を傷つけたのなら、もう二度と口にすまい)

その日から、どんなに両親がなだめてもすかしても、彼はスープに口をつけず、無理に飲ませようとすると喉につかえるようになった。

彼はまた、真冬に新しいコートを作ってもらった。しかし、友達が薄い上着で冬を過ごしているのを見ると、決してコートに手を通さなかった。

「せっかくあつらえてやったのに、何が気に入らないんだ!」。父は怒って彼の横面を張り飛ばした。それでも、彼はコートなしで教会に行った。それでとうとう両親は諦めてしまった。

8歳になったとき、彼はハインリヒ・フレッシュという友達と仲良くなった。彼はパチンコを作るのが得意だった。そしてある日、彼を誘いに来た。

「おいでよ。森に小鳥を射ちに行かないか」。彼は嫌な気分になったが、この友達に嫌われたくなかったので、ついて行った。ハインリヒはパチンコに石を挟んで狙いを定めた。そして、彼も同じようにするよう命令した。

(どうか小鳥に当たりませんように。)こう念じつつ、彼は同じようにして構えた。その時である。教会の鐘が高らかに鳴り出した。それは、小鳥のさえずりと共鳴しつつ、清らかな音色を響かせていた。それはあたかも「あなたは殺してはならない」と言っているように聞こえた。アルベルトは思わずパチンコを投げ捨て、大声を上げて鳥を追い立てた。

それから、怒り狂って彼を罵倒する友人をそこに残したまま家に戻った。この時、彼の心に「われわれには生きものを殺したり、苦しめたりする権利はないのだ」という掟(おきて)が刻みつけられたのであった。

<<前回へ     次回へ>>

◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。派遣や請負で働きながら執筆活動を始める。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。動物愛護を主眼とする童話も手がけ、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で、日本動物児童文学奨励賞を受賞する。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝の連載を始める。編集協力として、荘明義著『わが人生と味の道』(2015年4月、イーグレープ)がある。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:アルベルト・シュバイツァー
  • ツイート

関連記事

  • 社会的弱者の友として―賀川豊彦の生涯(1)暗い出生

  • 非暴力で差別と闘った人―キング牧師の生涯(1)どうして黒人は差別されるの?

  • 貧民救済に命賭けて―山室軍平の生涯(1) 強さと優しさと

  • 牧師の小窓(33)福江等

  • 賀川豊彦と妻ハルの思想と実践の現代的意味とは? DVD「21世紀に甦る賀川豊彦・ハル」発売中

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • コヘレトの言葉(伝道者の書)を読む(5)時の賛歌 臼田宣弘

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(224)音楽が支える聖霊による祈り 広田信也

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • ワールドミッションレポート(6月15日):ベラルーシのために祈ろう

  • ワールドミッションレポート(6月14日):スイス 信仰で買ったトラクター、ローレン・カニングハムとYWAMに託された農場の奇跡

  • ワールドミッションレポート(6月12日):ベルギーのために祈ろう

  • 戦時下でも福音は止まらない ウクライナの伝道者が欧州伝道会議で講演

  • 花嫁(27)絶えず喜んでいなさい 星野ひかり

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • ウォルター・ブルッゲマン氏死去、92歳 現代米国を代表する旧約聖書学者

  • 戦時下でも福音は止まらない ウクライナの伝道者が欧州伝道会議で講演

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • フランクリン・グラハム氏、ゼレンスキー大統領と面会 和平求め祈り

  • 淀橋教会、峯野龍弘主管牧師が引退し元老牧師に 新主管牧師は金聖燮副牧師

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.