Skip to main content
2025年7月12日10時33分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
生命への畏敬―アルベルト・シュヴァイツァーの生涯

生命への畏敬―アルベルト・シュヴァイツァーの生涯(2)音楽は天からの声

2016年8月1日14時27分 執筆者 : 栗栖ひろみ
  • ツイート
印刷
関連タグ:アルベルト・シュバイツァー

祖父のシリンガー牧師は、よく孫たちを集めてはオルガンで美しいメロディーを弾いて聴かせたので、アルベルトも早くから音楽的天分を呼び覚まされた。父は祖父の方形ピアノを使ってレッスンを授けたので、彼はすぐに弾けるようになり、7歳の終わりには自作の聖歌をオルガンで演奏し、担任の教師を驚かせた。8歳になると、まだ足がペダルに届かなかったがパイプ・オルガンを習い始めた。

彼にとって音楽は天からの声のように思えた。音楽は友であり、空気や水と同じように大切な存在であった。こんなことがあった。彼が習字の授業を受けるために上級生の教室に行くと、まだ時間が早かったので、廊下で待っていた。――と、その時である。突然部屋の中から合唱が響き渡った。それは「谷の水車に楽しく憩え」と「おまえは誰のもの、美しい森よ」という歌曲だった。彼の全身は感動に震え出し、倒れないように壁で身を支えなくてはならなかった。音楽はやはり天からの声だ――と彼は確信した。

9歳になると、アルベルトはミュンスターの実科中学に入り、翌年はミュールハウゼンのギムナジウム(文科中学校)に入学した。遠かったので家を離れ、ルイ伯父とゾフィ伯母の家に寄宿した。伯父は小学校の教師であったし、伯母は幼い者の教育にしっかりした考えを持っていたので、彼らはアルベルトをわが子同様に世話した。

アルベルトは学校では集中力がなく、成績はひどく悪かった。そして彼は、牧師の子どもに与えられる奨学金の資格を失ってしまったのだった。ついに校長は彼の父親を呼び出し、このままでは停学させざるを得ないと言った。父は何かわけがあるに違いないと思い、彼を叱らなかったが、母は泣き出してしまった。

そのうちクリスマス休暇になり、彼は帰郷した。そして、ある日のことだった。彼は馬ゾリに乗って近くの村に行こうとした。すると近所のシュルツという人の家から噛み癖のある野犬が飛び出してきて馬にほえついた。

「こいつめ!今日はこらしめてやるぞ」。アルベルトは脅して追い払うつもりで、ムチを振り上げて犬を打った。ところが、手元が狂ってムチは犬の目に当たってしまった。すると犬は鳴きながら雪の中を転がり回った。そして悲鳴は遠くへ行っても聞こえていた。

その時、何とも言えないほどの痛みが彼の中で広がった。そこで思わずその場に膝をつくと、彼は神の許しを乞うた。

(いつかきっと、この償いをします)彼は、そうつぶやいた。この時の決意は彼の生涯を貫く「弱いものへの償い」の思想となって根を下ろしてゆく。

それから3カ月たった頃、1人の新任教師がやってきた。ドクトル・ヴェーマンといった。この教師は決して生徒に知識の詰め込みをしたり、勉強を強要したりしなかった。彼は生徒の自由意思を尊重し、授業が面白く感じられるようにいろいろと工夫をし、下準備をしてきた。そして分かりやすい形で語るのだった。

アルベルトはこの教師の博識と人格に引きつけられ、自主的に勉強するようになり、学課に興味を持つようになった。すると成績のほうも上昇してゆき、間もなくクラスの上位から2、3番になったのであった。

このドクトル・ヴェーマンは後にミュールハウゼンから他の町の学校を転々と変わったが、アルベルトはいつもこの恩師を訪ねることを忘れなかった。ずっと後になって、第一次大戦の終わりに彼がアフリカから帰郷したときも、真っ先に訪ねたのはこのドクトル・ヴェーマンだった。

しかし悲しいことに、この教師は敗戦ドイツの窮乏生活の中で、飢えのために神経に異常をきたして自殺してしまったのだった。

アルベルトは15歳になったとき、聖ステファン教会のオルガニストであったオイゲン・ミュンヒからパイプ・オルガンの教授を受けることになった。

「きみの演奏は、まるで感情のない木でできているようなものだな」。初めはこう言っていたこの音楽家も、やがてアルベルトの中にある天分を見いだし、それを引き出してくれたのであった。彼はめきめきと上達した。

後になって、アルベルト・シュヴァイツァーが世界的なオルガン奏者となり得たのは、実にこの教師の基礎教育のおかげであった。この教師が1898年秋にチフスで死亡したとき、アルベルトは彼の面影をフランス語の小冊子にまとめて出版し、恩に報いたのであった。彼はこのように記した。

「オイゲン・ミュンヒ――彼の演奏は、明晰さ、表現の生き生きとした生命力、そして最も有名なオルガニストでさえ持っていないような音楽的な構造を持っていた」

<<前回へ     次回へ>>

◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。派遣や請負で働きながら執筆活動を始める。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。動物愛護を主眼とする童話も手がけ、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で、日本動物児童文学奨励賞を受賞する。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝の連載を始める。編集協力として、荘明義著『わが人生と味の道』(2015年4月、イーグレープ)がある。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:アルベルト・シュバイツァー
  • ツイート

関連記事

  • 社会的弱者の友として―賀川豊彦の生涯(1)暗い出生

  • 非暴力で差別と闘った人―キング牧師の生涯(1)どうして黒人は差別されるの?

  • 貧民救済に命賭けて―山室軍平の生涯(1) 強さと優しさと

  • 牧師の小窓(33)福江等

  • 賀川豊彦と妻ハルの思想と実践の現代的意味とは? DVD「21世紀に甦る賀川豊彦・ハル」発売中

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 教育改革が「日本のリバイバルにつながっていく」 牧師の金子道仁参院議員が講演

  • 米テキサス州洪水、死者100人超える キリスト教サマーキャンプ参加の少女ら多数犠牲

  • 中国・臨汾で2つの「家の教会」の牧師や信者らに有罪判決 最大拘禁9年2カ月

  • Gゼロ時代の津波石碑(4)芥川を自死に至らしめた「ぼんやりした不安」と2つの遺書 山崎純二

  • 見捨てない神 穂森幸一

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(226)葬儀文化を受け継ぎ、教会がエンディングを支える時代が来る 広田信也

  • 約3年ぶりに死刑執行、日本カトリック司教協議会社会司教委員会と矯風会が抗議

  • 初めの愛に戻りなさい 佐々木満男

  • 第一のことを第一にする人生の祝福 菅野直基

  • コヘレトの言葉(伝道者の書)を読む(7)共同体の重視 臼田宣弘

  • 米テキサス州洪水、死者100人超える キリスト教サマーキャンプ参加の少女ら多数犠牲

  • 学校法人聖学院、新理事長に田村綾子氏

  • 教育改革が「日本のリバイバルにつながっていく」 牧師の金子道仁参院議員が講演

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(8)「建物の話」 三谷和司

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • 紛争地の宗教者らが参加、第3回東京平和円卓会議 赦しの重要性、即時停戦など呼びかけ

  • 約3年ぶりに死刑執行、日本カトリック司教協議会社会司教委員会と矯風会が抗議

  • 聖書から事実を引き出す学び「IBS」を分かりやすく説明する講座 7月12日から

  • 中国・臨汾で2つの「家の教会」の牧師や信者らに有罪判決 最大拘禁9年2カ月

  • 初めの愛に戻りなさい 佐々木満男

  • 米テキサス州洪水、死者100人超える キリスト教サマーキャンプ参加の少女ら多数犠牲

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 学校法人聖学院、新理事長に田村綾子氏

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(8)「建物の話」 三谷和司

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • 米国の福音派牧師は半数近くが兼業している 調査で判明

  • 教育改革が「日本のリバイバルにつながっていく」 牧師の金子道仁参院議員が講演

  • 聖書から事実を引き出す学び「IBS」を分かりやすく説明する講座 7月12日から

  • 紛争地の宗教者らが参加、第3回東京平和円卓会議 赦しの重要性、即時停戦など呼びかけ

  • 約3年ぶりに死刑執行、日本カトリック司教協議会社会司教委員会と矯風会が抗議

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.