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生命への畏敬―アルベルト・シュヴァイツァーの生涯

生命への畏敬―アルベルト・シュヴァイツァーの生涯(2)音楽は天からの声

2016年8月1日14時27分 執筆者 : 栗栖ひろみ
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関連タグ:アルベルト・シュバイツァー

祖父のシリンガー牧師は、よく孫たちを集めてはオルガンで美しいメロディーを弾いて聴かせたので、アルベルトも早くから音楽的天分を呼び覚まされた。父は祖父の方形ピアノを使ってレッスンを授けたので、彼はすぐに弾けるようになり、7歳の終わりには自作の聖歌をオルガンで演奏し、担任の教師を驚かせた。8歳になると、まだ足がペダルに届かなかったがパイプ・オルガンを習い始めた。

彼にとって音楽は天からの声のように思えた。音楽は友であり、空気や水と同じように大切な存在であった。こんなことがあった。彼が習字の授業を受けるために上級生の教室に行くと、まだ時間が早かったので、廊下で待っていた。――と、その時である。突然部屋の中から合唱が響き渡った。それは「谷の水車に楽しく憩え」と「おまえは誰のもの、美しい森よ」という歌曲だった。彼の全身は感動に震え出し、倒れないように壁で身を支えなくてはならなかった。音楽はやはり天からの声だ――と彼は確信した。

9歳になると、アルベルトはミュンスターの実科中学に入り、翌年はミュールハウゼンのギムナジウム(文科中学校)に入学した。遠かったので家を離れ、ルイ伯父とゾフィ伯母の家に寄宿した。伯父は小学校の教師であったし、伯母は幼い者の教育にしっかりした考えを持っていたので、彼らはアルベルトをわが子同様に世話した。

アルベルトは学校では集中力がなく、成績はひどく悪かった。そして彼は、牧師の子どもに与えられる奨学金の資格を失ってしまったのだった。ついに校長は彼の父親を呼び出し、このままでは停学させざるを得ないと言った。父は何かわけがあるに違いないと思い、彼を叱らなかったが、母は泣き出してしまった。

そのうちクリスマス休暇になり、彼は帰郷した。そして、ある日のことだった。彼は馬ゾリに乗って近くの村に行こうとした。すると近所のシュルツという人の家から噛み癖のある野犬が飛び出してきて馬にほえついた。

「こいつめ!今日はこらしめてやるぞ」。アルベルトは脅して追い払うつもりで、ムチを振り上げて犬を打った。ところが、手元が狂ってムチは犬の目に当たってしまった。すると犬は鳴きながら雪の中を転がり回った。そして悲鳴は遠くへ行っても聞こえていた。

その時、何とも言えないほどの痛みが彼の中で広がった。そこで思わずその場に膝をつくと、彼は神の許しを乞うた。

(いつかきっと、この償いをします)彼は、そうつぶやいた。この時の決意は彼の生涯を貫く「弱いものへの償い」の思想となって根を下ろしてゆく。

それから3カ月たった頃、1人の新任教師がやってきた。ドクトル・ヴェーマンといった。この教師は決して生徒に知識の詰め込みをしたり、勉強を強要したりしなかった。彼は生徒の自由意思を尊重し、授業が面白く感じられるようにいろいろと工夫をし、下準備をしてきた。そして分かりやすい形で語るのだった。

アルベルトはこの教師の博識と人格に引きつけられ、自主的に勉強するようになり、学課に興味を持つようになった。すると成績のほうも上昇してゆき、間もなくクラスの上位から2、3番になったのであった。

このドクトル・ヴェーマンは後にミュールハウゼンから他の町の学校を転々と変わったが、アルベルトはいつもこの恩師を訪ねることを忘れなかった。ずっと後になって、第一次大戦の終わりに彼がアフリカから帰郷したときも、真っ先に訪ねたのはこのドクトル・ヴェーマンだった。

しかし悲しいことに、この教師は敗戦ドイツの窮乏生活の中で、飢えのために神経に異常をきたして自殺してしまったのだった。

アルベルトは15歳になったとき、聖ステファン教会のオルガニストであったオイゲン・ミュンヒからパイプ・オルガンの教授を受けることになった。

「きみの演奏は、まるで感情のない木でできているようなものだな」。初めはこう言っていたこの音楽家も、やがてアルベルトの中にある天分を見いだし、それを引き出してくれたのであった。彼はめきめきと上達した。

後になって、アルベルト・シュヴァイツァーが世界的なオルガン奏者となり得たのは、実にこの教師の基礎教育のおかげであった。この教師が1898年秋にチフスで死亡したとき、アルベルトは彼の面影をフランス語の小冊子にまとめて出版し、恩に報いたのであった。彼はこのように記した。

「オイゲン・ミュンヒ――彼の演奏は、明晰さ、表現の生き生きとした生命力、そして最も有名なオルガニストでさえ持っていないような音楽的な構造を持っていた」

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。派遣や請負で働きながら執筆活動を始める。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。動物愛護を主眼とする童話も手がけ、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で、日本動物児童文学奨励賞を受賞する。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝の連載を始める。編集協力として、荘明義著『わが人生と味の道』(2015年4月、イーグレープ)がある。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:アルベルト・シュバイツァー
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