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太平洋の橋―新渡戸稲造の生涯

太平洋の橋―新渡戸稲造の生涯(2)荒地に落ちた種

2019年9月19日20時58分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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関連タグ:新渡戸稲造

「稲之助は賢い子だ。それに他の子どもにない品性が身についている。あの子にそろそろ学問と武道の手ほどきを受けさせてはどうだろう」。ある時、祖父の伝はこう言ってまとまった金をせきに渡した。

「私もそう思っていたところでした。お心遣いありがとうございます」。せきは渡された金を拝むようにして言った。こうして、7歳になった稲之助は寺小屋に行き、そこで読み、書き、剣道、やり、和歌、論語、洋式体操などを学ぶことになった。彼は乾いた地面が水を吸い込むように、片っ端からあらゆる知識を吸収していった。

そのような時、亡き父十次郎の弟で、東京銀座で洋品店を経営している太田時敏が新渡戸家を訪ねてきた。そして、母せきにこう言った。「のう、せきさんや。差し支えなければ、稲之助を私に預けてみないか? これからの時代は学問を修め、世の中を引っ張っていけるような人材が必要になる。稲之助は賢く、学問好きのようだから、世のため、人のために尽くす人間になるように世話をしてやりたいのだ。私らも暮らしが楽ではないが、この子に賭けてみたいのだよ」

そして、稲之助を養子にしたいと申し出た。せきは、片時もそばから離したことのない末っ子の稲之助を東京にやることにためらいを覚えた。しかし、この時盛岡の家に来ていた祖父の伝は大いに喜んだ。

「こんな結構な話はないじゃないか。なあ、稲之助や。おまえ前から東京に行ってみたいと言ってたな。叔父さんがおまえを東京につれてって、学問をさせてくださると言うんだ。さあ、おまえの口から返事をしなさい」

すると、稲之助は目をキラキラさせながら、叔父の前にきちんと手を突いて言うのだった。「私は前から東京で勉強したいと思っていました。よろしくお願いいたします」。こうして彼は太田時敏の養子となり、一緒に東京に行くことになった。そしてこの時から、太田稲造と名乗ることになる。

太田時敏は十次郎と同じく南部藩の武士で、剣の達人であった。そんな時、戊辰戦争が起こり、南部藩は幕府側と戦って敗れた。この時、反逆の首謀とされた藩主の身代わりに家老の楢山佐渡が切腹を申しつけられた。時敏は介錯を命じられたが、佐渡が親友であったために首をはねることができず、脱走して東京に隠れ住み、銀座で洋品店をやるようになったのである。

しかし、商売はうまくいかず、倒産してしまう。こんなわけで、太田家は財政的にかなり苦しかったが、彼は十次郎の子に大きな期待を持っていたのだった。

時敏は、稲造に学問を授けるために藩立の「共憤義塾」から「東京英語学校」に入学させた。ここで初めて稲造は英語に触れ、大きな感動を覚えた。(何と英語は美しいのだろう。)彼は、教科書の中に出てきた一文にうっとりして教師に尋ねた。「先生、この教科書で使われているのは、何という本ですか?」

すると、教師は黒板にBIBLE(聖書)と書いた。「これは、世界で一番美しく、また素晴らしい書物と言われています」。稲造は、その書物の文体に魅せられ、それを理解するために死に物狂いで努力して英語の勉強をしたのだった。

その後、祖父の伝は、太田時敏に手紙を送った。

拝啓。わしはおまえがこの子を養子とし、東京で教育する計画に賛成だ。わしはこの子のことがよく分かっている。正しい方向に導けば国の誉れとなろうが、もし指導を誤れば、最低の悪党になる。 新渡戸伝

1876(明治9)年。新渡戸家に大きな出来事が起きた。明治天皇の巡行があり、三本木原の新渡戸家が宿泊所となったのである。この時すでに祖父伝は死去しており、1人でこの家を守っていた兄七郎と母せきの2人がこの大事を取り仕切った。稲造も東京から駆けつけた。

天皇は、今は亡き祖父伝の業績を称賛し、「なおも農業に尽くせよ」との言葉と共に御下賜金50円(今の50万円)を賜った。「われわれも、おじい様のように農業に一身をささげようじゃないか」。新渡戸家の三兄弟、七郎、道郎、稲造はそう誓い合うのだった。

稲造は家族と分け合った御下賜金の一部2円をもらい、英語の授業で感動したBIBLE(聖書)を買うことにしたのだった。

*

<あとがき>

優れた業績を世に残した人の生涯を調べると、必ずその人の周囲に人格者がいることが分かります。稲造を養子にした叔父の太田時敏も立派な人でした。この人がいなければ、後の新渡戸稲造はいないと思われるほどです。

この人もまた新渡戸家特有の反骨の血を引いていました。南部藩の武士だった彼は、ある時、反逆者とされた藩主の身代わりに家老が切腹を申しつけられた際に、介錯を命じられたのですが、自分の親友である家老の首をはねるのにしのびなく、脱走して東京に逃れ、銀座で洋品店を始めました。しかし、商売はうまくいかず、太田家の家計は火の車でした。

それにもかかわらず、時敏は稲造少年に目をつけ、彼に学問を授けたら将来ひとかどの仕事をする者になるだろうと考えて養子にするのです。この叔父の考え通り、稲造は大成しました。実に、人格者が育つ背景には、その生みの親たる麗しい人格の持ち主がいるものです。

(※これは史実に基づき、多少のフィクションが加えられた伝記小説です。)
(記事一覧ページの画像:新渡戸記念館提供)

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。その他雑誌の連載もあり。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:新渡戸稲造
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