Skip to main content
2025年12月3日14時57分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
聖ニコラスの生涯

サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(19)パタラからの悲報

2025年5月14日20時18分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
  • ツイート
印刷
サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(1)孤児ニコラス+
聖ニコラスの肖像画(画:ヤロスラフ・チェルマーク)

ニコラスが教会に帰ると、教会堂の中にはまだアペレとサラが翌日の教材を準備するために残っていた。

「おや、まだ仕事をしているのですか。そろそろ切り上げてお帰りなさい」。ニコラスは2人に声をかけた。サラは台所に行ったかと思うと、ニコラスのためにお茶を入れてきた。

「ありがとう。それでは3人でお茶にしましょうか」。ニコラスは袋の中に少し残っている焼き菓子を出してテーブルに置いた。

「ニコラス司教のパンケーキですね」。アペレはこう言うと、すももを焼き込んだ一つをつまんで言った。そして3人はお菓子をつまみ、お茶を楽しんだ。

その時、入り口の扉がコツコツとたたかれたので出てみると、汚らしい身なりの子どもが立っていた。「ぼく・・・ついさっきこの町に越してきたんです。隣の家の子がおいしそうなパンケーキを頬張っていたから聞いてみると、ニコラス司教様からもらったって言うから・・・ぼくにもお菓子をくれませんか?」

ニコラスは笑い出した。それから、その子どもを中に導いた。「私の作ったパンケーキは、世界一おいしいよ。君のために焼いてあげようね」

そう言って台所に行くと、見事な早さで、小麦粉と牛乳と卵をかき混ぜて生地を作り、熱した鉄板で焼き始めた。その中にりんごとすももの切ったものを混ぜることも忘れなかった。やがてパンケーキが膨らむと、それを皿に取って半分に折り、間にたっぷりとクリームを入れた。

「さあ、召し上がれ」。子どもはむしゃむしゃとおいしそうに菓子を3つ平らげ、手で口を拭うと、出て行こうとした。

「あ、ちょっと待って」。ニコラスは引き止めた。「君、何ていう名前?」

「アカイコ。父さんは船の荷物を降ろしたり運んだりする仕事をしてたんだけど、仕事がなくなったんで、ミラに引っ越してきたの」

「そうか。お父さん大変だね」。ニコラスは、彼が残した2つの菓子と、自分がこれから食べようとする分を一緒に紙にくるんで持たせた。

「おみやげだよ。あのね。日曜日は子どものための礼拝があるし、普段の日も勉強したり遊んだりしに来ていいんだよ」。子どもは、ぱっと顔を輝かせて言った。「ぼく毎日来るよ。じゃあね」。そして、飛ぶように海辺の道を駆けて行った。

その晩。思いがけない客が訪ねて来た。あの懐かしい故郷のパタラから、アルキポの息子ルキオが訪ねて来たのである。

「ミラの教会の司教になられたそうですね。おめでとうございます」。彼はまぶしそうにニコラスを見上げた。「ルキオ。よく訪ねてくれました。お父さんはお元気ですか?」

堅い抱擁を交わしてそう尋ねると、彼はうつむき、涙をこらえて言った。「実は、父は3日前に亡くなりました」。ニコラスは、衝撃のあまりしばらく口がきけなかった。

アルキポは、半年ほど前から健康が優れず、それでもルキオ夫妻に助けられながら屋敷の管理や「施しの日」の準備、予算のやり繰りをしていた。「家の教会」となった屋敷は、大広間を礼拝堂として、ヤソンを監督として日曜ごとに礼拝が行われていたが、アルキポはヤソンを助け、聖餐式のパンとぶどう酒の準備も忘れずに手配していた。

それが、3日前に商用でコロサイに出かけると言って屋敷を出た途端に倒れ、そのまま息を引き取ったということだった。

「申し訳ない。私の身勝手から、全てを父上の手に押し付け、大きな負担をかけてしまいました」。ニコラスの目から涙があふれてきた。

「いいえ。とんでもありません」。ルキオは、彼の手を強く握った。「あなたは神様のご用をするために召されたんじゃありませんか。父はあなたがミラの司教になられたと聞いたとき、とても喜んでおりました。そして、自分ほど幸せな人間はいない、人徳のあるガイオ様とそのご子息に仕え、最後にはキリスト教の信仰に導かれたのだから――と口癖のように言っていました」

アルキポがニコラスから受け継いだ莫大(ばくだい)な資産は全て「パタラ家の教会」の財産としてささげられ、伝道と慈善活動のために使われているということだった。

ルキオはその晩、司教館に泊まり、いろいろ語り合い、翌日ニコラスに見送られてミラの港を出発していった。

*

<あとがき>

ニコラスが伝道者になるためにアレクサンドリアの神学校に行ってしまった後、彼から財産を譲られ、屋敷の管理を委ねられていた執事のアルキポは、息子ルキオとその妻オルンパや雇い人たちに助けられて何とかその職務を全うしていましたが、ある時、重なる疲労のために倒れ、そのまま亡くなったのでした。

ルキオは、はるばるニコラスが司教の任務に就いているミラの教会に出向き、この悲報を伝えたのでした。ニコラスは自分の召命のために、アルキポに過分な負担をかけてしまったことを彼にわび、涙に暮れるのでした。

しかしルキオは、パタラの屋敷が「家の教会」となり、ヤソンを監督として良い働きをしていることを伝え、彼を慰めたのです。ニコラスは、悲しみの中にあっても、神様の御心は、ミラとパタラの2つの町に福音が宣べ伝えられることであるとの確信を強められたのでした。

<<前回へ     次回へ>>

◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)刊行。また、猫のファンタジーを書き始め、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。20年『ジーザス ラブズ ミー 日本を愛したJ・ヘボンの生涯』(一粒社)刊行。現在もキリスト教書、伝記、ファンタジーの分野で執筆を続けている。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
  • ツイート

関連記事

  • サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(18)ニコラスのパンケーキ

  • サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(17)星が光る晩に

  • サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(16)ニコラス司教の赤い服

  • サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(15)不幸な子どもへのとりなし

  • サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(14)イエス様のお話

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 東洋英和女学院大学、次期学長に藁谷友紀氏

  • ワールドミッションレポート(12月3日):ソマリア 厳しい大地に芽を出す福音の種

  • 英国で「路傍伝道者憲章」 相次ぐ街頭説教中の逮捕受け

  • 東京・銀座で牧師がトーク&ライブ「メリエストクリスマス2025」 12月25日

  • 聖心女子大学と聖パウロ学園高校が協定締結 共にカトリック系

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(236)聖霊による傾聴活動は日本社会を覚醒する(中編) 広田信也

  • ニカイア公会議1700周年を記念、開催の地で一致求め祈る 教皇や全地総主教らが参加

  • 「神の霊によって、主はこの国を造り替えられる」 日本リバイバル同盟が「祈りの祭典」

  • キリストの心と思いが与えられている恵み(8)御言葉により与えられる安息 加治太郎

  • 逆境は人生を開く 穂森幸一

  • 「神の霊によって、主はこの国を造り替えられる」 日本リバイバル同盟が「祈りの祭典」

  • 英国で「路傍伝道者憲章」 相次ぐ街頭説教中の逮捕受け

  • 映画「ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師」 「信仰と抵抗」の生涯描く

  • 中国の大型政府非公認教会「シオン教会」の主任牧師ら18人逮捕、最大拘禁3年の可能性

  • 聖心女子大学と聖パウロ学園高校が協定締結 共にカトリック系

  • ニカイア公会議1700周年を記念、開催の地で一致求め祈る 教皇や全地総主教らが参加

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(236)聖霊による傾聴活動は日本社会を覚醒する(中編) 広田信也

  • 逆境は人生を開く 穂森幸一

  • 青山学院と山梨英和学院が協定締結、授業連携など視野に

  • 東洋英和女学院大学、次期学長に藁谷友紀氏

  • 「神の霊によって、主はこの国を造り替えられる」 日本リバイバル同盟が「祈りの祭典」

  • 英国で「路傍伝道者憲章」 相次ぐ街頭説教中の逮捕受け

  • 中国の大型政府非公認教会「シオン教会」の主任牧師ら18人逮捕、最大拘禁3年の可能性

  • 映画「ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師」 「信仰と抵抗」の生涯描く

  • 聖心女子大学と聖パウロ学園高校が協定締結 共にカトリック系

  • ニカイア公会議1700周年を記念、開催の地で一致求め祈る 教皇や全地総主教らが参加

  • 東洋英和女学院大学、次期学長に藁谷友紀氏

  • 青山学院と山梨英和学院が協定締結、授業連携など視野に

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(236)聖霊による傾聴活動は日本社会を覚醒する(中編) 広田信也

  • 逆境は人生を開く 穂森幸一

編集部のおすすめ

  • 全ての人に福音伝えるための「イエスのモデル」 WEA総会でリック・ウォレン氏が講演

  • 「神の言葉を全ての人に」 日本の聖書普及事業150年で記念式典・レセプション

  • 教団・教派超えて神の平和求める 戦後80年で「日本国際朝餐祈祷会」初開催

  • イエスの統治を祝う祭典「ジーザス・レインズ」が10周年 ラップ賛美など新しい試みも

  • 「聖書を読まなかったら、今の自分はない」 元ヤクザの進藤龍也氏と山崎純二氏が対談

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.