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聖ニコラスの生涯

サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(17)星が光る晩に

2025年4月16日17時08分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(1)孤児ニコラス+
聖ニコラスの肖像画(画:ヤロスラフ・チェルマーク)

こうして思いがけない運命に導かれるようにして司教となったニコラスは、亡くなった前任の司教が行っていたことをそのまま引き継いだが、それに加えて子どもへの伝道と読み書きを教えることに力を注いだ。

「大人のための礼拝も必要ですが、それ以上に大切なことは、子どもたちの柔らかい心にイエス様の愛と救いを刻みつけることです。自分が愛されていることを知らなくて、どうして子どもが成長していけるでしょうか。また、読み書きを教えることも大切です。書いたり読んだりできれば、いつの日にか子どもは自分で聖書が読めるでしょう」

ニコラスの言葉に、助祭と長老は驚いた。今までの司教は、大人の信徒ばかりに聖書の教えを語り、教理や信仰問答の勉強会を行い、彼らを祝福していたからである。そもそも、教会の中に子どもを入れることがなかったので、彼らの存在など眼中になかった。

教会の外でも中でも同じだった。子どもは親の付属物で、時として足手まといとなる存在だったのである。子どもの魂を養うことを最も必要だと考えた聖職者など、今までいたろうか。「今度の司教様は変わっていなさる」。長老たちは、ひそひそとうわさをした。「とにかく、今までの司教様とは全く違ったやり方をなさろうとしている」

しかし、ニコラスは聞こえないふりをして、早速子どものために教材作りを始めた。彼は何と、大きな板をどこからか見つけてくると、それに市場から買ってきた黄色い塗料でピカピカ光る星を描き、それを礼拝堂に運び込んだのである。それから、羊飼いを稼業にしているアペレを連れてきて、一緒に寸劇を始めたのだった。

ニコラスの赤い服が見たかったのか、今日はいつもの倍くらいの子どもが押しかけてきた。「さあ、みんなそろったかな?」ニコラスの大きな声が会堂に響き渡った。「イエス様がお生まれになった晩はね、このように星がピカピカ光ったとても美しい晩だったのです」

彼は星を描いた板を両手で持ち上げて、体を右へ左へとわずかにひねった。すると、暗い礼拝堂の中で星はキラキラと夜空に瞬くように見えた。「野原では、羊飼いたちが寝ずに羊の番をしていました。するとね、天から光が差してきて、天使がこう言う声が聞こえたのです」。その時、羊飼いの姿をしたアペレが登場して、大きな声で聖書を読んだ。

「恐れることはありません。見なさい。私は、この民全体に与えられる、大きな喜びを告げ知らせます。」すると突然、その御使いと一緒におびただしい数の天の軍勢が現れて、神を賛美した。「いと高き所で、栄光が神にあるように。地の上で、平和が、みこころにかなう人々にあるように。」(ルカ2:10〜14)

ニコラスは、再び両手で差し上げた板を動かして、星をきらめかせた。「そうしてね、羊飼いさんたちは星に導かれてベツレヘムに行きました。そして、ようやく救い主であるイエス様がお生まれになった所に着いたのですが、そこはどんな所だったと思いますか?」

子どもたちは口々に、原っぱだとか宮殿だとか、その他いろいろな場所を口にした。「そうではなかったんです。イエス様は馬小屋でお生まれになったんです。なぜなら、私たちのように貧しく、力のない人間の友として、イエス様は来られたのですよ」。すると今度は、アペレがトントンと扉をたたくまねをして中に入り、救い主を拝んだ。

「さあ、皆さん。私たちは今、救い主イエス様を拝みました。イエス様は、目に見えなくても、いつも私たちと一緒にいてくださるのですよ」。この寸劇は大評判となり、その後、ニコラスとアペレは何度も繰り返すことになった。

こうしてニコラスは、大人の礼拝の1時間前に子どものための礼拝と聖書の勉強のカリキュラムを作ることに成功した。これは、「子どものための聖書学校」と呼ばれ、町で大評判となり、多くの親たちが自分の子どもを連れてやって来たので、礼拝堂に入り切らないほどになった。

そこでニコラスは、礼拝堂の後ろに大きなテント小屋を作り、ここを子どものための学び屋にしたが、これは後になって海を越えて諸外国に広がり、今の「日曜学校」のさきがけとなったのであった。

*

<あとがき>

ニコラスが伝道者になったのは290年ごろとされており、当時の教会は、まだその礎も十分に据えられていませんでした。少し大きな教会は、司教(エピスコポス)と呼ばれる監督と、助祭(ディアコノス)、長老たち数人が置かれて、福音宣教が少しずつ進められていました。

不思議な神の導きでミラの教会の司教となったニコラスは、他の任務は後回しにして、まず子どもたちを教会に呼び集め、大人と同じように礼拝に参加させ、聖書の教えを学ばせることを始めました。

さらに、週日も彼らを教会に招き、読み書きを教えたり、一緒に遊んだりしながら、イエス・キリストの話を聞かせるのでした。彼は子どもたちを喜ばせるために手ずから素晴らしい教材を作って見せたので、これには教会の役員たちもびっくり仰天したのでした。

このような、子どものための聖書研究が行われた教会は他に見当たらず、この働きは「日曜学校」のさきがけだと言う人も多くいました。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)刊行。また、猫のファンタジーを書き始め、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。20年『ジーザス ラブズ ミー 日本を愛したJ・ヘボンの生涯』(一粒社)刊行。現在もキリスト教書、伝記、ファンタジーの分野で執筆を続けている。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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