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聖ニコラスの生涯

サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(13)浜辺のテント小屋

2025年2月19日20時19分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(1)孤児ニコラス+
聖ニコラスの肖像画(画:ヤロスラフ・チェルマーク)

「そうら、そっちへ飛んだよ」。子どもたちの笑い声とともに、若い男の大きな声が響いた。「もう一度いくよ。そうら、こっちだ!」

ここは、潮風香る港町のミラ。海岸近くに積まれた廃船処理物の後ろに、粗末なテント小屋があるのが見える。その前の空き地で、体つきの頑丈な男が、子どもたちと「まり投げ」をして遊んでいた。

「さあ、今度は『まりつき』をしようか? 私がつくから、みんなで歌ってくれる?」「いいよ」。子どもたちは、歌い始めた。

トン、トン、トン トン、トコトン
ひとつ 日なたを見てごらん
ひなたで猫が 昼寝する

トン、トン、トン トン、トコトン
ふたつ 船べりたたいてごらん
海は広いと 船が言う

トン、トン、トン トン、トコトン
みっつ ミラはいい所
みんな仲よく 暮らしてる

「さあ、遊びはこのくらいにして、中に入って勉強だよ。終わったらおやつにするからね」。男は汗を拭きながら言った。子どもたちは、わっと声を上げてテント小屋に入って行った。

ミラの町に来たニコラスは、アルキポが渡してくれた餞別(せんべつ)で天幕職人に頼んでテント小屋を建ててもらい、そこに住んで伝道を始めたのだった。彼は他の伝道者がよくするように、町中や公共の建物に立って説教をするのではなく、今まで誰もやったことのない方法を考えた。

彼はまず、路地をくまなく歩き回り、手当たり次第子どもたちを集めてきた。この地に住む人々は貧しく、細々と農業をやったり、漁に出たり、あるいは港で網の繕いとか、船の修理をやって日銭を稼いでいた。

そのために、子どもにかまってやる暇がなく、彼らは放りっぱなしにされていた。それで、悪いことを覚えたり、少し大きな子どもの中には、空腹になるとパンや他の食料品を万引きしたり、金のありそうな人を脅して金目のあるものを取ったりする者もいたのである。

(悪いことをしたり、大人に反抗したりする子どもは、何かの事情があって激しい飢餓感を持っているのだ。だから叱ったり責めたりしても良くならない)

そう考えたニコラスは、まずこのような子どもたちを招き寄せて食物を与え、おいしいお菓子を作って好きなだけ食べさせてやることに力を注いだ。その上で、読み書きのできない子どもたちに少しずつ字を教え、ためになる話を聞かせたり、一緒に歌ったり、外でスポーツをしたりして彼らの心身を養ったのだった。

こうした活動費は、アルキポが持たせてくれたお金で十分まかなうことができた。

さてこの日。運動や遊びを終えて子どもたちを送り出したニコラスがテント小屋に戻ってくると、誰もいないはずの小屋から男の子が何かを上着の下に隠して走り去ろうとした。

「あ、ちょっと待って」。声をかけると、男の子は上着に隠したものを取り落とした。それは、さっき子どもたちのおやつに配った焼き菓子だったのである。

「ごめんなさい」。頭を下げた途端、彼は泣き出した。「盗むつもりじゃなかったんです。うちには妹がおなかをすかして待ってるの。お母さんは網繕いをしてごはん作ってくれないし、おなかすいたって言うと、お母さんが『うるさい!』って怒鳴るんです」

「そうか」。ニコラスは、ため息をついた。「そんなことなら早く言えばいいのに。気が付かなくて悪かったね」。彼は残りの菓子を集めると、それを袋に入れて子どもに持たせた。

「お母さんにこう伝えてくれる? 網の繕いでごはんの支度ができないときは、この小屋に食べに来てくださいってね」。そして彼は、夕食のために取っておいたパンと干し魚をそっくりぶどうの葉に包むと、それを一緒に持たせた。

子どもは涙を拭くと、ペコリと頭を下げた。「いい子だね。君、何という名前?」「ネレオ。妹はヌンパです」「そうか。じゃヌンパちゃんもここへ連れておいで。明日は遠足に行くんだ。お弁当は私が作っておくからね」

そう言うと、子どもはまたペコリと頭を下げて帰って行った。

*

<あとがき>

伝道者となり、パタラの隣の町ミラに遣わされたニコラスは、浜辺にテント小屋を作り、いよいよ伝道を開始します。この町に住む人々は貧しく、細々と農業や漁業、あるいは網繕いなどをして生計を立てていたので、自分たちの子どもにかまってやる暇がありませんでした。

そのため、子どもたちは野放しになり、中には町中で万引きをしたり、強盗に入ったりする子もいました。ニコラスは、こうした子どもたちのために心を痛め、彼らをテント小屋に招き、お菓子を与えたり、一緒に遊んだりすることから交流を図りました。

彼は、子どもたちが悪いことをするのは、その心の中に激しい飢餓感があるからだと考え、説教をするよりも、まず彼らの心身の要求を満たすことから始めたのでした。

彼は、イエス・キリストが子どもたちを招き、祝福を与えられたことを思い、福音はまずこのような小さな者たちに伝えられるべきだと強く思うのでした。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)刊行。また、猫のファンタジーを書き始め、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。20年『ジーザス ラブズ ミー 日本を愛したJ・ヘボンの生涯』(一粒社)刊行。現在もキリスト教書、伝記、ファンタジーの分野で執筆を続けている。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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