Skip to main content
2025年6月15日20時35分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
聖ニコラスの生涯

サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(18)ニコラスのパンケーキ

2025年4月30日17時44分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
  • ツイート
印刷
サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(1)孤児ニコラス+
聖ニコラスの肖像画(画:ヤロスラフ・チェルマーク)

ニコラスが司教となって1年ほど経過した。ようやく司教職も身に付き、彼は重責を負いつつ、職務を全うしていた。

この頃にはアペレも、ミラに出てきた親戚の者に稼業を託し、自らはサラという女性信徒と一緒に「子どものための聖書学校」で話や紙芝居を受け持ったり、平日は読み書きを教えたりするようになったので、ニコラスの負担はやや軽くなった。

こうして、多少の余裕も出てきたので、彼はかねてから心の中で温めてきた計画をいよいよ実行に移すことにした。

ミラの町は、二度続けての凶作により、農作物――とりわけ小麦の収穫が打撃を受け、人々はローマ政府や教会が行う乏しい配給に頼って生活していた。そんな中で、十分にパンが食べられない子どもたちが、いつもおなかをすかせて教会にやって来た。

マテオやネレオのような漁師の子どもたちや、ピロロゴをはじめとする農家の子どもたち合わせて50人以上が教会に来て勉強したり、遊んだりして帰っていくのであるが、アペレたちが配るわずかな弁当やおやつでは空腹が満たされず、何か物欲しそうな目で食堂や台所の方を眺めていることをニコラスは知っていた。

そこで、彼は教会の倉庫の小麦を使って焼き菓子を作り、それを子どもたちに食べさせようと考えた。大きめの焼き菓子を作れば、主食とおやつを兼ねて子どもたちのおなかを満たしてやれるのではないか。どんな菓子を作ろうか――と考えているうちに、ニコラスはずっと以前、郷里パタラで靴屋の三女アンゼラからもらった「天使の微笑」のレシピを大切に持っていたのを思い出した。(そうだ。あのレシピが何かの役に立つかもしれない)

ニコラスはそのレシピを取り出し、小麦粉を牛乳と卵でとき、よくかき混ぜてから熱い鉄板の上に流して生地を作った。そして型を抜いて円形に整えた。アンゼラのレシピでは、その上に煮たリンゴを置いてクリームをかけるのだが、それだと配って歩く間につぶれて形が崩れてしまうように思われた。

そこで彼は、リンゴやオレンジ、すももなどを細かく切って生地の中に焼き込むことにした。そしてそれを2つに折り、その間にクリームを塗ると、素晴らしいパンケーキになった。

こうして焼き上げた菓子をまだ熱いうちに、勉強を終えた子どもに食べさせてから、今度は200近く作ったその菓子を大きな麻袋に入れ、それを担いで子どもたちの家々に配って歩くことにしたのだった。彼が歩き出すと、その姿を見つけてわいわい子どもたちが集まって来た。

「おや、ニコラス司教様。どこへ行かれます?」彼が丘から山に差しかかる道を歩いていくと、農家の人々が尋ねた。「こんにちは! これから子どもさんがいる家にお菓子を配りに行くんですよ」。ニコラスは笑顔であいさつすると、そのまま歩き出した。「今度いらしった司教様は、とても変わっていなさるね」。彼らはひそひそと話し合った。

山の中腹には、その日暮らしの農家の家々が点在している。ニコラスは、子どもがいそうな家々を一軒一軒訪問し、菓子を配ってから、神の祝福を祈った。

「あっ、ニコラス司教様だ!」さらに上に行こうと、また山道を登り始めると、そのあたりで遊んでいた子どもたちが駆け寄ってきた。そして、わいわい声を上げながら泥だらけの汚い手で彼の袖をつかんだり、腕にぶら下がったりした。

そして、教会からついてきた子どもたちと一緒になって、彼の大きな体を押すようにして、山道を歩き始めた。

よっこら よっこら 山道歩き
ニコラス様がやって来た。
袋の中には 何がある?
良い子にあげるお菓子です。

よっこら よっこら 一緒に歩こう
ニコラス様の菓子配り。
あっちの家から こっちの家に
みんな笑顔でありがとう!

山の後ろには、病人のいる家や、歩くことのできない者が住んでいる家があることをニコラスは知っていた。彼らの所には、そこの子どもへのお菓子のほかに、小麦の入った袋と一握りの塩を届けることを忘れなかった。こうして、丸一日かかってニコラスは、農家や漁村の家々を訪ね、菓子や食物を配って歩いたのだった。

*

<あとがき>

トルコ(かつての小アジア)の人々の食の歴史を調べると、興味深いことに、ニコラスが伝道者として活躍した3世紀の頃には、既に各家庭では、主婦たちが小麦粉や蜂蜜、生クリームなどを使ってパンケーキを焼いていたことが伝えられています。

ニコラスは、ミラの教会の司教になって、毎日子どもたちを教会に集めて接しているうちに、いつも十分にパンが食べられず、おなかをすかせた子どもたちが、もの欲しそうに教会の奥を眺めているのを見て、一人台所に入り、子どもたちのためにパンケーキを焼くことを思いつきます。

彼はかつて故郷のパタラで、靴屋の三女アンゼラにもらった「天使の微笑」というお菓子のレシピを大切に持っていました。これをもとにしてたくさんのパンケーキを焼いては大きな袋に入れて、山の上の農家や海辺の漁師の家を訪ね、子どもたちに配ったのでした。

サンタ・クロースが大きな袋を担いで歩く姿が伝説となったのも、こうした背景があったためと思われます。

<<前回へ     次回へ>>

◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)刊行。また、猫のファンタジーを書き始め、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。20年『ジーザス ラブズ ミー 日本を愛したJ・ヘボンの生涯』(一粒社)刊行。現在もキリスト教書、伝記、ファンタジーの分野で執筆を続けている。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
  • ツイート

関連記事

  • サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(17)星が光る晩に

  • サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(16)ニコラス司教の赤い服

  • サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(15)不幸な子どもへのとりなし

  • サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(14)イエス様のお話

  • サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(13)浜辺のテント小屋

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • コヘレトの言葉(伝道者の書)を読む(5)時の賛歌 臼田宣弘

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • ワールドミッションレポート(6月14日):スイス 信仰で買ったトラクター、ローレン・カニングハムとYWAMに託された農場の奇跡

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • ワールドミッションレポート(6月15日):ベラルーシのために祈ろう

  • 花嫁(27)絶えず喜んでいなさい 星野ひかり

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • ウォルター・ブルッゲマン氏死去、92歳 現代米国を代表する旧約聖書学者

  • 戦時下でも福音は止まらない ウクライナの伝道者が欧州伝道会議で講演

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • フランクリン・グラハム氏、ゼレンスキー大統領と面会 和平求め祈り

  • 淀橋教会、峯野龍弘主管牧師が引退し元老牧師に 新主管牧師は金聖燮副牧師

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • ウォルター・ブルッゲマン氏死去、92歳 現代米国を代表する旧約聖書学者

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.