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聖ニコラスの生涯

サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(18)ニコラスのパンケーキ

2025年4月30日17時44分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(1)孤児ニコラス+
聖ニコラスの肖像画(画:ヤロスラフ・チェルマーク)

ニコラスが司教となって1年ほど経過した。ようやく司教職も身に付き、彼は重責を負いつつ、職務を全うしていた。

この頃にはアペレも、ミラに出てきた親戚の者に稼業を託し、自らはサラという女性信徒と一緒に「子どものための聖書学校」で話や紙芝居を受け持ったり、平日は読み書きを教えたりするようになったので、ニコラスの負担はやや軽くなった。

こうして、多少の余裕も出てきたので、彼はかねてから心の中で温めてきた計画をいよいよ実行に移すことにした。

ミラの町は、二度続けての凶作により、農作物――とりわけ小麦の収穫が打撃を受け、人々はローマ政府や教会が行う乏しい配給に頼って生活していた。そんな中で、十分にパンが食べられない子どもたちが、いつもおなかをすかせて教会にやって来た。

マテオやネレオのような漁師の子どもたちや、ピロロゴをはじめとする農家の子どもたち合わせて50人以上が教会に来て勉強したり、遊んだりして帰っていくのであるが、アペレたちが配るわずかな弁当やおやつでは空腹が満たされず、何か物欲しそうな目で食堂や台所の方を眺めていることをニコラスは知っていた。

そこで、彼は教会の倉庫の小麦を使って焼き菓子を作り、それを子どもたちに食べさせようと考えた。大きめの焼き菓子を作れば、主食とおやつを兼ねて子どもたちのおなかを満たしてやれるのではないか。どんな菓子を作ろうか――と考えているうちに、ニコラスはずっと以前、郷里パタラで靴屋の三女アンゼラからもらった「天使の微笑」のレシピを大切に持っていたのを思い出した。(そうだ。あのレシピが何かの役に立つかもしれない)

ニコラスはそのレシピを取り出し、小麦粉を牛乳と卵でとき、よくかき混ぜてから熱い鉄板の上に流して生地を作った。そして型を抜いて円形に整えた。アンゼラのレシピでは、その上に煮たリンゴを置いてクリームをかけるのだが、それだと配って歩く間につぶれて形が崩れてしまうように思われた。

そこで彼は、リンゴやオレンジ、すももなどを細かく切って生地の中に焼き込むことにした。そしてそれを2つに折り、その間にクリームを塗ると、素晴らしいパンケーキになった。

こうして焼き上げた菓子をまだ熱いうちに、勉強を終えた子どもに食べさせてから、今度は200近く作ったその菓子を大きな麻袋に入れ、それを担いで子どもたちの家々に配って歩くことにしたのだった。彼が歩き出すと、その姿を見つけてわいわい子どもたちが集まって来た。

「おや、ニコラス司教様。どこへ行かれます?」彼が丘から山に差しかかる道を歩いていくと、農家の人々が尋ねた。「こんにちは! これから子どもさんがいる家にお菓子を配りに行くんですよ」。ニコラスは笑顔であいさつすると、そのまま歩き出した。「今度いらしった司教様は、とても変わっていなさるね」。彼らはひそひそと話し合った。

山の中腹には、その日暮らしの農家の家々が点在している。ニコラスは、子どもがいそうな家々を一軒一軒訪問し、菓子を配ってから、神の祝福を祈った。

「あっ、ニコラス司教様だ!」さらに上に行こうと、また山道を登り始めると、そのあたりで遊んでいた子どもたちが駆け寄ってきた。そして、わいわい声を上げながら泥だらけの汚い手で彼の袖をつかんだり、腕にぶら下がったりした。

そして、教会からついてきた子どもたちと一緒になって、彼の大きな体を押すようにして、山道を歩き始めた。

よっこら よっこら 山道歩き
ニコラス様がやって来た。
袋の中には 何がある?
良い子にあげるお菓子です。

よっこら よっこら 一緒に歩こう
ニコラス様の菓子配り。
あっちの家から こっちの家に
みんな笑顔でありがとう!

山の後ろには、病人のいる家や、歩くことのできない者が住んでいる家があることをニコラスは知っていた。彼らの所には、そこの子どもへのお菓子のほかに、小麦の入った袋と一握りの塩を届けることを忘れなかった。こうして、丸一日かかってニコラスは、農家や漁村の家々を訪ね、菓子や食物を配って歩いたのだった。

*

<あとがき>

トルコ(かつての小アジア)の人々の食の歴史を調べると、興味深いことに、ニコラスが伝道者として活躍した3世紀の頃には、既に各家庭では、主婦たちが小麦粉や蜂蜜、生クリームなどを使ってパンケーキを焼いていたことが伝えられています。

ニコラスは、ミラの教会の司教になって、毎日子どもたちを教会に集めて接しているうちに、いつも十分にパンが食べられず、おなかをすかせた子どもたちが、もの欲しそうに教会の奥を眺めているのを見て、一人台所に入り、子どもたちのためにパンケーキを焼くことを思いつきます。

彼はかつて故郷のパタラで、靴屋の三女アンゼラにもらった「天使の微笑」というお菓子のレシピを大切に持っていました。これをもとにしてたくさんのパンケーキを焼いては大きな袋に入れて、山の上の農家や海辺の漁師の家を訪ね、子どもたちに配ったのでした。

サンタ・クロースが大きな袋を担いで歩く姿が伝説となったのも、こうした背景があったためと思われます。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)刊行。また、猫のファンタジーを書き始め、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。20年『ジーザス ラブズ ミー 日本を愛したJ・ヘボンの生涯』(一粒社)刊行。現在もキリスト教書、伝記、ファンタジーの分野で執筆を続けている。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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