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聖ニコラスの生涯

サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(20)飢餓の到来

2025年5月28日20時23分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(1)孤児ニコラス+
聖ニコラスの肖像画(画:ヤロスラフ・チェルマーク)

紀元295年――それはニコラスが司教に就任してちょうど5年目のことだった。未曾有の大飢餓がルキア地方を襲った。あたり一面、目につくものは乾いてひび割れた土ばかりで、人々は雑草を全て掘り返して食べ尽くした。

山頂から海辺に至るまで、道端には死体が累々と横たわり、死者を埋葬することが当面の急務となったため、ニコラスたちは来る日も来る日もその作業に追われた。子どもたちは皆痩せ細り、泣く力もなく、家の中でじっと身を潜めているきりだった。

こんな状態なので、教会にやって来る子どもの数もめっきり減って、読み書きの勉強も中断された。それでも、アペレとサラは子どもの姿を見ると声をかけて教会に連れてきて、聖書の話を聞かせてやり、歌ったり、一緒に遊んだりした。

ニコラスは、ありったけの素材を使って彼らのためにパンケーキを焼いて食べさせた。以前ニコラスから菓子をもらったあの荷運びの子アカイコは、もう9歳になっていたが、相変わらず毎日教会に顔を出していた。

漁師の子マテオや網繕いの子ネレオはもう12歳になるので、親の仕事を手伝うことになり、普段はほとんど姿を見せなくなった。ネレオの妹ヌンパは以前と同じように来ており、アカイコは自分の妹のように彼女をかわいがった。

そのうち飢餓はいよいよ深刻になってきた。「貧しい人々に配給する小麦が大幅に減っています。どうしましょう」。助祭のシメオンと、今ではこの教会の執事になっているアペレが困り顔でやって来た。教会の倉庫に行ってみると、ほぼ空っぽの状態だった。凶作で小麦の収穫量が減っているので、市場にもほとんど在庫がなかった。

貧しい人々に小麦を配給することは、教会で行わなければならない大切な任務とされていたので、いかなる方法を用いても調達しなければならなかった。ニコラスは、アペレと共に町々、村々を歩いて余裕のある家からわずかずつ小麦を分けてもらうために出かけることにした。

「司教様が物乞いのようにお金や食物を恵んでもらうんですか?」この姿に驚いた町の人々は言ったが、貧しい人々への愛に打たれ、乏しい中から一握りの小麦粉を袋に入れてくれるのだった。

2人は、町中から市場に通じる道を歩いて行った。そこには裕福な暮らしをしている商人たちの豪邸が軒を連ねていた。ニコラスはその中の一軒の戸をたたき、わずかでいいから小麦を分けてくださいと言った。

すると使用人が顔を出し、不快そうに顔を背けて言った。「私らは皆、自分たちが食べていくだけで精いっぱいですよ。あなたたちにあげても、それを貧しい人たちにやってしまうんでしょう? なぜやつらに大切な小麦を分けてやらなくちゃならないんです」。皆同じような理由で2人を追い返すのだった。

さて、そこから少し行った丘の上に、キロスという貿易商人の豪邸があった。この家を訪れると、長いこと待たせた挙げ句にやっと出て来たこの商人は、不快そうに顔をしかめると言うのだった。

「あなたがた聖職者は、一体いつから物乞いに成り下がったんです。大きな体で、そんな汚らしい袋を肩にかけて。みっともないじゃありませんか。お帰りください」

と、その時である。奥の部屋から泣き喚く声がしたかと思うと、バタバタと使用人が駆けて来て言った。「旦那様、大変でございます。坊ちゃんが、たった今亡くなられました」

すると、キロスの顔は蒼白になり、ガタガタと体が震え出した。扉が開いて、彼の妻も顔を出したが、青ざめ、その頬は涙に濡れていた。「ああ、お願いでございます」。彼女はばったりとニコラスの前に膝をついた。「どうか息子を助けてくださいまし」

聞いてみると、彼らの5歳になる息子は重い肺炎を患っており、医者からも見放されていたのだった。ニコラスの心から憐(あわ)れみがあふれ出してきた。彼は子どものところに案内してもらうと、その前にひれ伏して祈った。

「この子の目に光を。そしてもう一度、生命の息吹を吹き入れてください」。すると、たちまち奇跡が起きた。子どもはかすかに身動きしたかと思うと、息を吹き返したのだった。

回心したキロスは、人が変わったようになり、金庫にある金を献金としてささげ、穀物倉からありったけの小麦を教会に届けさせた。

*

<あとがき>

紀元3世紀に、世界的規模の飢餓が小アジアをはじめ近隣の地域を襲ったことが歴史に記されています。ニコラスが伝道者として活動したルキア地方もその中に含まれており、人々は雑草を掘り返して食べ尽くすほどの惨状だったといわれています。

貧しい人々への小麦の配給は当時の教会の大切な務めの一つだったので、ニコラスも自ら麻袋を肩から下げ、執事となっていたアペレと共に小麦や金銭を集めるために托鉢(たくはつ)をして歩くことになりました。

キロスという豪商の屋敷を訪ねると、もともと慈善とか寄付というものに嫌悪感を持っていたこの男から門前払いをくったのです。ところがその時、奇跡が起きたのでした。

この豪商の子どもが重い肺炎のために息を引き取ったのですが、ニコラスが祈ると、イエス・キリストの癒やしの力が彼にも宿り、この子どもをよみがえらせることができたのです。

悔い改めてクリスチャンとなったキロスは、倉庫からありったけの小麦を出して教会にささげたのでした。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)刊行。また、猫のファンタジーを書き始め、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。20年『ジーザス ラブズ ミー 日本を愛したJ・ヘボンの生涯』(一粒社)刊行。現在もキリスト教書、伝記、ファンタジーの分野で執筆を続けている。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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