「十戒」を習近平国家主席の言葉に差し替え 進む「宗教の中国化」

2019年9月23日17時33分 印刷
+中国・北京・天安門広場
中国の首都・北京にある天安門広場(写真:Guarding TianAnMen)

中国中部・河南省洛陽市にある多くの教会で、教会の壁などに掲げられていた「十戒」が習近平国家主席の言葉に差し替えられたという。中国の迫害情報を扱うニュースサイト「ビター・ウインター」(英語)が20日、報じた。

ビター・ウィンターによると、洛陽市では、政府公認の三自愛国教会のほぼすべての教会と集会所から十戒が撤去され、習主席の言葉に差し替えられたという。中国共産党による「宗教の中国化」の一環とみられる。

十戒は、古代イスラエルの指導者モーセが神から授かった、ユダヤ教やキリスト教における最も基本的な戒めで、「あなたには、わたしをおいてほかに神があってはならない」「あなたはいかなる像も造ってはならない」など、10の戒からなる。これが洛陽市の諸教会では、習主席が2015年の中国共産党中央統一戦線工作部で語った下記のような演説の一部と差し替えられたという。

「『社会主義核心価値観』(中国共産党が2012年以降、提唱している価値観)と中国文化は、中国のさまざまな宗教が(中国に)根を下ろすのに役立つでしょう。宗教の思想、教義、教えを、時代の進歩のニーズに合致する方法で解釈することにより、宗教団体を支援しよう。西洋のイデオロギーの侵入を断固として警戒し、過激主義思想の影響に意識的に抵抗しよう」

匿名の情報筋がビター・ウィンターに語ったところによると、命令に従わなければ共産党に反対しているとみなされ、十戒の差し替えを行わなかった一部の三自愛国教会は閉鎖されたり、他の教会は政府のブラックリストに載せると脅迫されたりしているという。

ある牧師はビター・ウィンターに、中国共産党はキリスト教の教義を侵食することによって、三自愛国教会を組織的に破壊していると語った。

「政府が最初に行うのは、宗教的な語句を禁止することです。それから、十字架や星を撤去し、国旗と『社会主義核心価値観』を掲げるよう教会に命じることで、『四進運動』(宗教団体の「中国化」を目指す運動)を行います。(教会には)信者と宗教活動を監視するカメラが設置されています。そして最後には、十戒を習近平の演説に差し替えるのです」

「共産党の究極の目標は(党が)『神になる』ことです。これは悪魔がいつもしてきたことです」と、その牧師は付け加えた。

また別の信者はビター・ウィンターに、中国ではクリスチャンに「まったく自由がない」と訴えた。「中国は一党独裁です。人々は共産党に従うこと、そしてそれによってコントロールされることだけが許されています」

中国共産党が教会に十戒を取り除くよう要求したのはこれが初めてではない。昨年11月にも洛陽市の三自愛国教会で、教会の壁に掲げられていた十戒のうち、第一戒の「あなたには、わたしをおいてほかに神があってはならない」を、視察中の政府職員がその場で取り去る出来事があった。

この際、職員の一人は、習主席が「この言葉(第一戒)に反対している」と言及。「(習主席に)あえて協力しない者がいるだろうか。同意しないなら、その者は国と戦っているのだ」とし、「これは国家の政策だ。おまえは状況を明確に理解すべきだ。政府に歯向かうな」と警告するなどしていた(関連記事:公認教会にも伸びる中国政府の手 「ほかに神があってはならない」十戒第一戒の削除を強要)。

中国共産党はこれまで、国内の宗教団体に対する海外からの影響を排除しようとし続け、最近では教会を閉鎖したり、信者を逮捕したりしている。昨年2月には、宗教に関する主要法である「宗教事務条例」の改正法が施行され、引き締めが強化された。聖書の書き換えも試みられている。

「宗教の中国化」は、2016年4月に15年ぶりに開催された「宗教工作会議」以降本格化した。習主席はこの会議で、「宗教の社会主義社会への適応を積極的に導くために、中国の宗教の永続性を『中国化』という方向において支援することが重要な課題である」と述べている。

こうした「中国化」の動きについては、さまざまな報告が伝えられている。今年9月上旬には、中部・河南省禹州(うしゅう)市の三自愛国教会の牧師らが、聖書の教えと孔子の教えを融合させた新しい本に基づいて説教を行うよう要求された。

さらに6月には、東部・山東省青島市にある複数の三自愛国教会が、伝統的な賛美歌の代わりに、政府公認組織である「中国基督教協会」が作った新しい愛国的な賛美歌を歌うように命じられた。

南東部・江西省余干(よか)県では2017年に、何千人ものクリスチャンが、家からイエス像や十字架、聖句を取り去り、それらを習主席の肖像画に差し替えるよう命じられた。これは「宗教の信者を党の信者に変える」ことを目的とした、地元政府の貧困救済プログラムの一部だった。地元政府内に、宗教的信仰が住民の財政的困窮をもたらしているという考えがあったためだ。

余干県にある村の人民代表大会議長は、香港の英字日刊紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」に対し、次のように語っている。

「多くの貧しい世帯は、家族の病気によって貧困に陥りました。一部の人々は、自分たちの病気を治すためにイエスを信じることに走りました。しかしわれわれは、病気になることは肉体的なことであり、本当に彼らを助けてくれるのは共産党であり、習近平総書記だと伝えようと努力しました」

迫害監視団体「米国オープン・ドアーズ」は、キリスト教徒に対する迫害がひどい国をまとめた「ワールド・ウォッチ・リスト」で、中国を27位に位置付けている。米国オープン・ドアーズはその報告書において、中国の一部の地域では「政府の権力増大と習近平国家主席の支配により、開かれた礼拝が困難になっている」と警告している。

※この記事はクリスチャンポストの記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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