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戦国に光を掲げて―フランシスコ・ザヴィエルの生涯

戦国に光を掲げて―フランシスコ・ザヴィエルの生涯(7)戦争嫌いの城主

2017年12月13日06時52分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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関連タグ:フランシスコ・ザビエル

マノエルとアマドールを失った悲しみに耐えつつ一行は旅を続け、やがて山口に差しかかった。しばらく行くと、高い石垣のある遊廓の前に出た。そこに行き交うきらびやかな着物姿の男女に見とれていると、いきなり悲鳴とともに1人の娘が髪を振り乱して逃げて来た。

しかし、彼女は石につまずいて転び、たちまち追いついた男たちに捕まってしまった。「逃げてもむだじゃ。客が待っとるぞ」「いやっちゃ!放してくだされ」。娘が身をもがいて逃げようとすると、1人がその顔を殴りつけた。そして、無理に引きずって行った。たまりかねた一行が、娘を放してやるよう男に頼むと、たちまち彼らは殴る蹴るの暴行を働いた。その時である。

「大の男どもが、たかが娘1人のために打ったり張ったり、みっともなか」。見物人の中から大きな体つきの男が現れた。片目の上、足を引きずるように歩き、肩から大きな琵琶を吊るしている。

「何ィ」。彼らは今度この男に飛びかかろうとしたが、男はカラカラと笑い、懐からずっしりと重い金袋を出した。「さあ、みんなやるから持って行きや。そして娘さんを放してやれ」。彼らはペコペコと頭を下げて金袋をつかみ取ると、あっという間に姿を消した。

「さあ、おまえさんは自由じゃ。どこへでも行きなされ」。娘はそこに膝をつくと、うれし泣きに泣き崩れた。彼女は両親を亡くし、叔父に引き取られたが、金に困って遊廓に売られたのだという。多恵という名であった。

「おまえさまがたは、どこから来たんか?」。琵琶法師は今度ザヴィエルに尋ねた。そして、一行が日本にキリスト教を伝えるために南方からはるばるやって来たことを聞くと、太いため息をつき、肩から琵琶を外すと落ち武者の悲しい最後を語って聞かせた。それから丁寧に一礼すると、どこへともなく去って行った。彼は後にイエズス会士となるロレンソその人であった。

その時、見物人の中から身なりの良い老夫婦が進み出て声をかけた。「あのう、差しつかえなければ、その娘さんを預かりましょうや」。そして彼らは、大きな呉服屋をやっているが年もとってきたし、跡取りもないので、この娘を養女に迎えて婿をとらせたい――と言うのであった。願ってもない幸運にザヴィエルは大いに喜び、彼らを祝福して送り出した。

それから3日後、空き家を見つけて寝泊まりしていたザヴィエルの一行は、この山口の城主大内義隆の住む築山館に招かれた。この城主は、一行が町の辻で語っているのをたまたま通りかかった際に聞き、興味を持ったのであった。

「よく参られた。さ、遠慮はいらぬ」。丸顔で穏やかな顔つきの武将は、針のように尖った髭(ひげ)をなでつつ言った。そして、茶や菓子を運ばせて、丁寧に一行をもてなした。それから手を叩いて城で抱えている楽士たちを呼ぶと、客に歌や踊りを披露するよう命じた。

間もなく、彼らは笛や太鼓で優雅な曲を奏でると、それに合わせて舞姫がしずしずと舞い始めた。ザヴィエルは、久しぶりにその心が温かくくつろぐのを覚えた。

「わしは他の大名たちと違って戦争が大嫌いなのじゃ。それよりも学問や芸術を保護し、この日本に偉大な文化を育てていきたいという野望を持っておる。戦国大名としては失格じゃが、自分は人が互いに殺し合う時代が早くなくなればよいと思っておる」

「あなたは、たぐいまれな高潔な心をお持ちです。神の祝福がありますように」。ザヴィエルは感動して言った。この日、2人は心が通じ合うのを感じ、良き友となった。しかし、彼らには任務があった。そこで、引き止める城主にもてなしを感謝しつつ、さらなる旅を続けるために山口を後にした。

いくらも行かないうちに天候は崩れ、氷雨がみぞれに変わり、やがて北風が吹きつけると、氷のつぶてとなって襲いかかった。彼らは目を開けていることができず、一歩一歩手探りでよろめくように進んで行った。

そのうち、崖淵を必死になって小枝をつかみながら渡って行くうちに、つまずいたザヴィエルは危うく転落しそうになったのである。とっさにベルナルドが手を差し伸べて帯をつかみ、彼は体の均衡を保つことができたが、片方の靴が脱げて落ちてしまった。崖の下に降りるわけには行かず、彼ははだしで歩き出した。

(このままでは凍傷になってしまう)。ベルナルドはとっておきの手拭いを出すと、それを足に巻きつけ、上から少し太めのひもで何重にも縛った。何とかそれで靴の代わりになった。そうして彼らは歩き続け、木の洞で眠り、何日かするとようやく村が見えてきた。

*

<あとがき>

一行は山口に入り、そこで男たちに暴行されている娼婦をかばったために、袋叩きに遭います。その時、大きな体つきの、片目の琵琶法師が大金を投げ出して娘を救います。彼はそのまま立ち去りますが、後にイエズス会士となり、ロレンソという霊名を与えられ、日本の宣教に尽くしたと伝えられています。

また、一行は山口城主大内義隆の招きを受け、歓待されます。義隆は戦争が嫌いな柔和な人物で、子どものように純真な心をもってザヴィエルを慕います。彼はキリシタン大名にはなりませんでしたが、ザヴィエルたちの伝えるキリスト教に深く傾倒し、大道寺という大きな寺を与えたのです。ここで日本初のキリスト教事業が行われるようになったのも実に不思議な神の摂理です。

このようにザヴィエルの日本伝道は、当初実りがないように思われても、彼らが道すがらまいた種が思わぬところで芽吹き、やがては迫害をくぐり抜け、日本の教会の礎(いしずえ)となったのです。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。派遣や請負で働きながら執筆活動を始める。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。動物愛護を主眼とする童話も手がけ、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で、日本動物児童文学奨励賞を受賞する。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝の連載を始める。編集協力として、荘明義著『わが人生と味の道』(2015年4月、イーグレープ)がある。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:フランシスコ・ザビエル
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