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世界はわが教区―ジョン・ウェスレーの生涯

世界はわが教区―ジョン・ウェスレーの生涯(13)あめにはさかえ

2021年3月24日13時31分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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関連タグ:ジョン・ウェスレー
世界はわが教区―ジョン・ウェスレーの生涯(1)猛火から救われて+
ジョン・ウェスレー(1703~91、画像:Frank O. Salisbury)

その頃ウェスレーは、刑務所の改善に尽くしていたジョン・ホワードと出会い、親交を結ぶようになった。2人はたそがれ迫るロンドンの町を歩いていた。

「ごらんなさい。まるで地獄だ」。ホワードは言った。「ジンをあおって道路に寝転ぶ浮浪者。スリや強盗が人を脅し、孤児は辻にたむろして通行人からパンや金をせびっている。また売春が当たり前のように行われている。繁栄の町といわれるロンドンがこんな状態ですから、他の町はもっとひどいでしょう」。2人はやがて「浮浪者収容施設」の前にやってきた。「ここはいわゆる人生の掃きだめと呼ばれる場所です」。再びホワードは言うのだった。

その時、一人の男が大鍋を下げて庭に出てきた。すると、あちこちから着物は破れ、髪はボサボサ、首筋にはあかがこびりついている男たちが駆け寄ってきた。そして、手に手にブリキの缶を差し出し、奇妙な声を上げた。すると、男は乱暴なやり方でひしゃくに一杯ずつ鍋のスープをついでやるのだった。それは水より薄い、何の具も入っていないスープだったが、彼らは一息で飲み干してしまった。「これじゃ、腹の足しにならねえよ」。彼らは鍋を持った男に躍りかかると、その鍋を奪い取った。もうスープは一滴も残っていなかった。すると彼らはだしに使った鳥の骨を手づかみで拾い上げると、互いに奪い合いを始めた。

「何て浅ましい」。2人は顔をそむけた。「パンをくれよう!」男の一人が目をギラギラさせて詰め寄ってきた。ウェスレーとホワードは、それぞれポケットからありったけのお金をはたき出し、スープを配っていた係員に渡した。「これでパンを買ってこの人たちにあげてください」。係員は、近くのパン屋に行き、パンを買ってきて浮浪者たちに与えた。「さあ、情け深い方たちがパンを下さったぞ。感謝して頂きなさい」。すると、彼らはパンに飛びつき、それをむさぼるように食べた。

ウェスレーは、ここで少し話をさせてほしいと言い、語り始めた。「皆さん、聞いてください。私たちはパンがなくても生きられます。着るものがなくても、住む家がなくても生きられます。でも、愛がなければ生きることができません。私たちがこうして生きているのは、神様の愛があるからです。思えば、この世にあるものはすべて神様の愛によって造られたのです」

そして彼は、神が罪人である人間を救うためにイエス・キリストをこの世に遣わして、十字架でその罪の代価を支払ってくださったことを切々と語った。いつの間にか、薄暗い建物の中に浮浪者たちが詰めかけ、押し合うようにしながら話に聞き入っていた。「先生、私はイエス様を信じるよ」。突然一人が叫ぶと、次から次へと手が上がった。そして何とその日に15人が洗礼を受けたのであった。その中には、スープを配っていた係員の姿もあった。

2人が外に出たとき、ちらちらと雪が降り出した。「今夜はクリスマス・イブですね」。ジョン・ホワードが言った。そこへ、チャールス・ウェスレーが、シー・キンチンという人の家で集会が開かれると告げに来た。彼はもうすっかり病気も癒え、健康を取り戻していた。

――と、そこへ、突然警官が一通の手紙を手にして現れた。「ウェスレーさん。残念ながら、議会の名において、今後あなたは一切英国国教会の中に足を踏み入れることも、説教することも禁じられました。もしこの法を破った場合には、逮捕します」。そして、手紙を渡すと行ってしまった。ウェスレーは、しばらく手紙を握りしめたままそこに立ち尽くしていた。

「私は、牧すべき教区を失った」。彼は、ポツンとつぶやいた。「しかし、今や世界が私の教区だ」。この時、チャールスは群がる人々の中から男の子と女の子をつれてきて並ばせた。「兄さんに、この賛美歌をささげます」。たちまち、かわいらしい合唱が流れ出した。それは、後に世界的に有名になり、大人にも子どもにも愛された「あめにはさかえ」(讃美歌98番)であった。素晴らしいクリスマス・イブとなった。

*

<あとがき>

社会事業家のジョン・ホワードと共にロンドンの裏町を歩いていたウェスレーは、そこにたむろする下層階級の人々の悲惨な姿に胸が締め付けられる思いでした。そして、2人が「浮浪者収容施設」の前を通りかかると、ここでもスープのだしに使った鶏ガラを奪い合うあさましい人々の姿を目にしなくてはなりませんでした。ウェスレーは、こうした社会から見捨てられた人々に心を込めて福音を語りました。

その後、裏町をたどって行くと、突然一人の警官がやってきて彼に手紙を渡しました。それは英国国教会の名において、二度と教会の中に足を踏み入れることも、説教することも禁じるというものでした。悲しみに打ちひしがれるウェスレーに、この直後、素晴らしいクリスマス・イブの贈り物が与えられました。ここにやってきた弟のチャールスが少年少女を集めて自作の賛美歌を歌わせたのです。この「あめにはさかえ」は世界的に有名になり、今なお教会の内でも外でも親しみを込めて歌われています。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。12年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。その他雑誌の連載もあり。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:ジョン・ウェスレー
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