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み使いダニエル

(み使いダニエル)コータのものがたり 星野ひかり

2020年6月4日21時13分 コラムニスト : 星野ひかり
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(み使いダニエル)リカのものがたり 星野ひかり+

「お前は向こうに行っていなさい」。そう言ってリビングから追い出されたのは、小学校5年生に上がったばかりのコータでした。コータはリビングのドアの前にしゃがみ込んで、両親がののしり合う声、父親が母親をぶつ耐えがたい音をじっと聞き続けておりました。

こんなことは珍しいことではありません。料理の品数が少ないといった些細なことから、物や壁が壊れるほどに両親は争い合うのです。音がやんだと思ってのぞき込むと、いつものように床に倒れてうずくまる、母の背中が見えました。父は寝室に行ったようで、コータは母に近づきました。

「お母さん、大丈夫? 床で寝てたら風邪ひくよ」。コータが声をかけても、母は震える声で「あっちへ行っていなさい」と言うだけでした。

コータは自分の部屋に戻り、机に腰掛けて宿題を広げました。鉛筆を握ってみても問題を解く気にはならず、ノートの角にぐるぐると円を描き続けました。ぐるぐる巻いて、こんがらがって、もはやほどくこともできない線。それはコータの心のようでした。もうコータは自分が悲しいのか、いら立っているのか、寂しいのか、泣きたいのかさえ、分からないでいたのです。心が固いしこりのようで、鉛のように重たくて、痛みも悲しみも感じない、そんな心が少しずつ出来上がってゆくようでした。

いつものように朝が来ましたが、コータはなぜか起き上がれずに毛布の中にくるまっておりました。すると、鬼のような顔をした父がずかずかとコータの部屋にやってきてカーテンを開け放ちました。あまりのまぶしさにコータは布団にもぐりました。

「いつまで寝ているんだ。さっさと起きろ」。おびえて、コータは毛布を握りしめました。「なんだか具合が悪いの。体がとっても重いのだもの」。そう言うコータに「また仮病か」と父は舌打ちをし、布団ごとコータを蹴り上げました。「学校を休めるなんて思うなよ」。そう言い捨てて部屋を出ました。

コータの顔には子どもらしい輝きがほとんどなくなっておりました。灰色の影を帯びた陰鬱(いんうつ)な顔は、「かわいげのないやつ」と父や母、同級生や先生にさえ思わせてしまうほどでした。コータは足を引きずるようにゆっくり歩いて学校に行き、そして永遠にさえ思えるほどながい授業と休み時間をただ耐えて、下校の時間を迎えるのです。

帰り道、コータはたくさんの家々を見つめながら歩きます。背の高いマンションの窓のひとつひとつも見上げます。このたくさんの家のどこかに、「お帰りなさい」と優しく自分を迎えてくれる、そんな家がありはしないかと探すのです。

しかし、物欲しげに家々の窓を見つめるコータに気付く大人がいたとしても、「どうしたの? 早くおうちに帰りなさい」。そう言うだけでコータを入れてくれる家なんて、この世界のどこにもないんだ、と思いました。

ある晩、父と母はまた激しく言い争い、父は母の髪の毛をつかんで「出ていけ」と玄関から追い出しました。母を探しに忍び足で外に出ると、母親はガレージの車の中で泣いていました。コータは自分の毛布を抱えると、母のいる車をノックしました。

「お母さん、風邪ひくよ」。そう言って毛布を渡しました。そして自分も母と一緒に毛布にくるまろう、と車に乗り込もうとしましたが、「コータは部屋に戻りなさい。一人にして」と母は言いました。その顔はちっともコータを見てはくれませんでした。(お母さん、こっちを見て。笑って。)コータはそんな思いを口に出すこともできず、とぼとぼと部屋に戻りました。

またある晩の真夜中に、母がコータの部屋のベッドの中に忍び込み、コータを抱きしめながら泣いた日もありました。柔らかい母の腕に久しぶりに抱かれながら、コータは母の悲しみを必死で受け止めておりました。

コータは今夜も母の泣いている気配を感じながら、床についておりました。コータの部屋は家の2階にありましたが、1階の母の寝るそばに、頬を寄せるような気持ちでした。

そしてちょうどそのように、コータの痛みをひしひしと、すべて分かろうとしていた者が居りました。神様のみ使いのダニエルが、コータの胸に耳を当てて、その心を聞いていたのです。コータの心はドクドクと信号を発しておりました。

(僕さみしい。)ダニエルはうなずきました。(知ってる。)
(僕こわい。)ダニエルはうなずきます。(知ってる。)
(僕は・・・僕はね。)(知ってる。知っている。)

いつの間にかコータはうつらうつらとして、夢の中に落ちてゆきました。

不思議です。ここはどこだというのでしょう。コータは真っ白な光の世界におりました。空も花も木々もコータも、光の粒で出来ていて、とりどりの色彩で光り輝いておりました。光が混ざり合い、いつくしみ合うように、世界のすべてがつながっているようでした。

白い衣を着た背の高い天使さまが、黒糖のような瞳でコータを見下ろしておりました。天使さまは、瞳からまばゆい光の粒をこぼしながらコータを見つめておりました。天使さまの優しいまなざしの光が自分の頬に染み込んでゆくことを感じました。天使さまは、何も言葉を言わなくともすべて分かり合える、そしてずっと知っていた兄のようであったので、コータは何も言う必要もなく、自然と手と手をつなぎました。その手のぬくもりは、ただ優しくて、胸の中心が熱くなり、全身が光であふれてゆくようでした。

コータはうっすらと目を覚まし、いつもの部屋に寝ていることに気付きました。自分の手をじっと見つめました。まるでこちらの世界のほうが、すべてがおぼろげな幻の世界であるような気がします。先ほどの世界こそ本当であって、あそこにいた天使さまだって、本当にいる。そう信じて、熱い涙が流れました。

ふと、いつかお母さんに連れられて行った、町はずれの古い教会のことを思い出しました。三角屋根の古びた木で出来た教会には、天使さまの絵が掛かっていたのです。そこでコータはおいしいおはぎをもらったのです。お母さんがそこに住むおじいさんとお話をしている間、おばあさんが天井の十字架を指さして、なにやら話してくれました。

「十字架は、神様の世界の入り口なんだよ」・・・たしかそんなお話でした。コータにはよく分かりませんでしたが、不思議と十字架が十字架以上の意味を持って、光り輝いて見えたのです。

お母さんはよくコータを連れて、いろいろな教祖さまやいろいろな先生の所に行きました。コータを仏壇の前に立たせて、悪霊が付いていると言った先生もおり、白い房の付いた棒でお祓いをされたこともあります。また、「前世」の話を聞き、「すべて前世のせいだ」と言われて、泣いていたお母さんも隣で見ました。

でも、どんな教祖さまや先生よりも、コータはあの古い教会が好きでした。おはぎはとってもおいしくて、おじいさんもおばあさんも、コータを本当の孫のようにかわいがってくれましたし、不思議と輝いていた十字架のことも忘れられなかったのです。

・・・コータの日々は、暗く陰鬱な影の中にありましたが、そのような中にも優しさや、慈しみがなかったわけではありません。でもきっとどこかに、本当の、光あふれる世界があって、そしていつかそこにたどり着ける・・・そんなことを、コータは夢見ずにはいられませんでした。

コータの人生はまだまだ始まったばかりです。神様はコータに過酷な道をお与えになりました。コータにとってどこかにある「光」を信じ続けることはとても難しいことでありました。それでもコータは「光」を求め続けて生きてゆこうともがきました。時にはぐれそうになったり、親や他人を憎んでみては心に血をにじませたりして・・・それでもどこかにあるはずの「光」を信じ続けたのです。

光・・・それは本当は「愛」というべきものでしょう。しかし、愛というにはもはやこの世界において、あまりに使い古された不完全な響きを持っていました。愛・・・それは結局どこまでも、自分勝手で気まぐれなものとしかコータには思えなかったのです。だからコータは、コータの求めるものを「光」と呼んでいたのです。

それは、けして揺らぐことも移ろうこともない愛であり、人間をはるかに超えた力であって、意思を超えたあまりにまぶしい力であって、「光」と呼ぶ以外にほかに言葉は見つからなかったのです。

さて、コータはどんな大人になったでしょうか。世を憎んで、神様を憎んで、悪だくみをする大人になってしまったかしら? 厭世(えんせい)的になって、人にも世の中にも興味を示せなくなったかしら?・・・そう、そうなってもおかしくはありませんでした。でも、どんなに過酷な道のりも、コータから、どこかにあるはずの「光」を探す心は奪うことはできなかったのです。

「求めなさい。そうすれば与えられます。探しなさい。そうすれば見出します。たたきなさい。そうすれば開かれます」(マタイ7:7)。神様は、そのお約束の通りに、コータが求めただけのまぶしい光を与えたでしょう。その光とは、神様ご自身でしかなかったのですから。

神様は、この世界のすべての光を集めても足りないほどのまぶしさで、コータの前にその身を現したことでしょう。求め続けた光の正体を見たコータは、どれだけうれしかったことでしょうか。神様は、コータを特別に取り扱いました。あまりに厳しく、ご自身のもとに招き続けました。神様は涙を絞って、コータを育てあげたのです。コータの流した涙と同じだけ、神様も泣いて、コータを育てあげたのです。

「求めなさい。そうすれば与えられます。探しなさい。そうすれば見出します。たたきなさい。そうすれば開かれます。だれでも、求めるものは受け、探す者は見出し、たたく者には開かれます。あなたがたのうちだれが、自分の子がパンを求めているのに石を与えるでしょうか。魚を求めているのに、蛇を与えるでしょうか。このようにあなたがたは悪い者であっても、自分の子どもたちには良いものを与えることを知っているのです。それならなおのこと、天におられるあなたがたの父は、ご自分に求める者たちに、良いものを与えてくださらないことがあるでしょうか」(マタイ7:7~11)

この世界には、求める者たちだけがたどり着く世界があるといわれます。必要なのは、この暗闇の影の揺れ動く世界において、ただ、求めることだというのです・・・。

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◇

星野ひかり(ほしの・ひかり)

千葉県在住。2013年、友人の導きで信仰を持つ。2018年4月1日イースターにバプテスマを受け、バプテスト教会に通っている。

■ 星野ひかりフェイスブックページ

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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