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背徳の街のマリヤ

続・背徳の街のマリヤ~神の花嫁~(1)ま白い光 星野ひかり

2019年11月1日17時55分 コラムニスト : 星野ひかり
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私が欲しいのは美しい心。
人をねたまず、人を愛し、
病んだ人や年老いた人の世話をする、
花を愛するおとめの心、
その潤った白桃色の唇からは、
生きていることを喜ぶ歌が絶えることがない。
そんなおとめになりたかった。

*

虹色の光がサダ姉を包んでおりました。その光の向こう岸に、ダイヤモンドのように固く建った、ま白い都が陽炎のように見えては消え、見えては消えておりました。

サダ姉は、神様が与えてくださった白衣に身を包んでおり、それはまるでサダ姉があこがれた花嫁衣裳のようでした。傷だらけであったはずの体は、白桃色につややかであり、傷の一つも見当たりません。頭には風のように薄いベールがかけられ、その縁取りはシロツメクサの花輪でした。

み使いたちの声が光の中から聞こえます。それは、「もういいよ」「もういいよ」と歌うようであり、サダ姉の道のりのすべてを赦(ゆる)しながら天の都にいざなうような、優しい響きをしていました。

サダ姉の心は喜びとともに、悲しみに包まれました。あまりに美しい世界への道が、その足の下に敷かれているのです。それなのにサダ姉は、歩みを進めることができません。サダ姉は純真なおとめのように、はらはらと涙を流しながら告白しました。

「神様、お許しください。私はまだあなたのみそばに行くことはできないのです。私はまだゆけません。あなたの美しい都にも、シロツメクサは満開に咲き誇っていることでしょう。しかし私の生きた、あの町のシロツメクサの一輪も愛することなく、私は行くことはできないのです」

み使いたちは、虹色の光の中で「いいよ」「いいよ」と歌うようです。見えては消え、見えては消えていたま白い都は、波が引くように遠ざかってゆくようでした。そしてやがて、見えなくなり、サダ姉は光の渦に包まれました。光はサダ姉の体をしっかりと包んで、抱きしめてくれるようでした。

何も怖くはありませんし、不安でもありません。インマヌエル・・・神はともにおられる。その約束は光となってサダ姉を確かに包んでくれておりました。神様はサダ姉を、光の糸でできた繭でしっかりとくるんで、その霊を地の果て、闇の渦巻く「あの町」のはずれに、ゆっくりと降ろしてゆきました。

そこは悪魔のねぐらの「背徳の街」。悪魔の支配に昼も夜も震える街です。この街で悪魔を恐れずに生きたいのなら、悪魔を受け入れ悪魔の愛児になるよりほかはありません。長い月日を「私は悪魔の花嫁」と、悪魔とのつながりを誇りながら生きたサダ姉は、今度は神の花嫁のように純白の衣装に身を包みながら、ゆっくりと背徳の街のはずれ、貧民街の病院のベッドの上へと降ろされていったのです。

うっすらと目を開けると、サダ姉は、顔中に何かが巻き付けられているような窮屈感を覚えました。手を当てようとしても、手は鉛のように重く動きません。両脚は石膏のようなもので固められ、びくともしませんでした。

「誰か・・・」。サダ姉は声にならぬ声でそう伝えました。視界は布のようなもので遮られておりました。鈍く首を少しだけ動かすと、小さな窓が見えました。その向こうには真昼の光を受け止めて、羊雲が輝いておりました。サダ姉はその雲の美しさに見とれ、涙を流しました。今まで雲を見て涙を流すことなどありませんでしたから、思わず流れる涙にサダ姉は驚きました。

「目が覚めたのね」。しわがれ声が聞こえると、サダ姉の顔をのぞき込む白衣をまとったおばあさんの姿が見えました。「ここはどこですか」。吐息でサダ姉はそう伝えました。「ここは十字病院と言ってね、猫楽街の病院だよ。ご飯がよく食べられるようになったら包帯もとれるから安心しなさい」

猫楽街・・・そこは猫吊り通りで猫たちが捕まることのないように、猫たちをかくまうことで有名な貧民街の呼び名でした。この通りではまるまる太った猫や犬たちがのびのびと昼寝をして道をふさいでいるのです。そして悪魔に逆らって、神を信じる人たちが暮らすことでも有名な街でした。それが悪魔の怒りを買ってか、この町に住む人たちは「現実逃避の愚か者」と揶揄(やゆ)されて、仕事も与えられず貧しさに苦しんでいると聞いていました。

「どうして私が猫楽通りの病院に?」「・・・あんたは猫吊り通りの大火事で、ひどいやけどを負ったんだ。どの病院でも引き取り手がなくてね、この病院で引き取ったんだ。あれはひどい火事だった。でも不思議な火事でね、あれだけの火事だったのに、誰一人死にはしなかったというんだよ」。おばあさんはそう言うと、しわくちゃの顔をクシャっとゆがめて笑いました。

「そうですか・・・」。サダ姉はつぶやき、一面の炎の中で、「聖いお方」が現れて、サダ姉に花嫁衣装を着せてくれたことを思い出しました。そして、夢うつつの中で不思議な幻を見ていたことも思い出しました。

「神様」。つい先ほどまでその方と共におり、まるで自分の父であるように、兄であるように、そして夫であるように慕わしく近しく、その方を感じていたのです。その方はま白い光そのもののような、疑いようのない愛そのもののような方でした。その方のもとで、「神」や「人」や「人生」に対して抱いていたあらゆる疑いや軽蔑や憎しみも、溶けてゆくようでした。

それが幻ではなかったように、まるで生まれ変わったかのような、新しい心が与えられていることに気付きました。そして、ほのかな希望がサダ姉の胸に浮かんでいたのです。神を信じ、人を愛し、人生を歩む力が、ボロボロに傷んだサダ姉の体の先まで満たしている気がしたのです。

サダ姉はそれから何日もベッドの上で雲を見て、夜は星を見て過ごしました。星なんて一つも見えないはずの背徳の街であるはずが、ここ「猫楽街」は明かりがほとんどないために、星空に恵まれていたのです。まるで新しい世界に来たように、すべてが美しく涙を誘うのでした。月の美しい夜に、一杯の白湯が与えられました。喉に下る湯は少しずつ全身にいきわたり、サダ姉に力を与えてくれるようでした。

サダ姉が身を起こせるようになると、白衣のおばあちゃんは一冊の本をサダ姉に与え、ベッドサイドの小さなテーブルにろうそくの明かりをともしてくれました。その本には、神様の言葉が書かれていると言うのです。サダ姉は、そんな本は読んだこともなかったはずなのに、本に書かれた言葉の一つ一つを知っているような気がしました。それは、猫吊り通りの孤独な部屋に響いた言葉の一つ一つであり、炎の中で、ま白い光の中で、確かに聞いた言葉であったのです。

あの部屋・・・悪魔と共に暮らした「猫吊り通り」のオレンジ色のじゅうたんの小さな部屋に、こんな言葉を必死に伝えてくれた少女がおりました。その少女は自分よりずっと若い、可憐なおとめのような少女でした。名前も知らない少女なのに、なぜ自分のようなものを救おうとしたのか、サダ姉は不思議に思いました。

その本の言葉は、幻で見たま白い光のように完全な「愛」でできていました。その言葉を読み進めてゆくごとに、ま白い光がサダ姉に迫るようでした。

胸に言葉が響きました。「わたしにつながっていなさい」(ヨハネ15:4)。それは、猫吊り通りの部屋の中、炎の中に、確かに聞いた声でした。(つづく)

次回へ>>

◇

星野ひかり(ほしの・ひかり)

千葉県在住。2013年、友人の導きで信仰を持つ。2018年4月1日イースターにバプテスマを受け、バプテスト教会に通っている。

■ 星野ひかりフェイスブックページ

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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