Skip to main content
2025年7月3日12時43分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
み使いダニエル

(み使いダニエル)ユミのものがたり 星野ひかり

2020年5月21日23時03分 コラムニスト : 星野ひかり
  • ツイート
印刷
(み使いダニエル)リカのものがたり 星野ひかり+

ユミは隣に寝ている夫を起こさないように、そっとベッドから抜け出しました。音を立てずに寝室を出てキッチンに入ると、換気扇の下に置いてあるタバコに火をつけ、深く息を吐きました。

時計は朝の5時を指しております。夫は、あと2時間は眠っていてくれることでしょう。物憂げに小窓からのぞく景色を眺めると、いつもと変わらずに朝日が家々の屋根を明るく照らしており、薄い雲も、ゆっくりと流れておりました。

冷蔵庫を開けてロース肉を取り出すと、まな板を軽くふいて肉を薄く切りました。ネギと生姜を出し、大きく切って、お肉と一緒にビニール袋の中に入れると、醤油やみりん、酒といった調味料も流し込んでビニール袋を固く結わきます。次はかぼちゃを手に取り、お味噌汁の準備です。皮を落として種を取り、大きめに切ってお鍋にお湯を沸かします。・・・そうこうしているうちに少しずつ、心は平安で満ちてきます。ユミにとって、朝のこの時間はあまりに大切なものでした。

ユミの夫は先月、会社を辞めて帰ってきました。働き盛りの50代に突入してすぐのことでした。朝の6時に出社する必要のなくなった夫は、一日中家にいて、求人雑誌をめくったり、ニュースを見てぼんやりとしておりました。今までうっすらと描いていた人生の計画表がびりびりと破ける音に、ユミの心は震えました。「助けてください」。ついそんな言葉が漏れて、台所にうずくまったこともありました。

「助けてください」。その叫びに気付いた者がおりました。それは神様のみ使い、ダニエルです。ダニエルが神様から頂いた優しく大きな心には、世界中の人々の祈りや叫びが響き続け、ダニエルは心を震わせて、その声のもとに飛び立つのです。

見えるでしょうか? 空には光が満ちています。夜空にだって、無数の色の光が満ちています。その光は、この世界に遣わされている幾億ものみ使いたちが身をひるがえし飛び交っているからこそ、きらめき続けているのです。神様のそのお優しい心は、ご自身の心で出来たみ使いたちを生み出しました。み使いたちは神様の心のままに、悲しみのもとに、叫ぶ者のもとに遣わされ続けているのです。

神様は「ご自身の瞳」のように人間の一人一人を愛しておられ、「ご自身のまぶた」のように一人一人を守りたい、そう思っておられるお方です。み使いたちは一人も残さずに神様のもとに招くために、今日も一生懸命働き続けているのです。

「神様に何ができるのか? 困難ばかり与えるじゃないか」。神様をののしる声も聞こえそうです。とんでもない。神様は何でもおできになります。神様を頼ってくれさえすれば、神様はこの闇の世界を迷わずに歩くための道灯り、ともしびとなって一人一人を照らし、時に慰め、時に励まし、導き歩いてくださいます。

台所で出来立ての朝食を盛りつけていたユミの手が、か細く震えました。「もう生きてはいけないな」。「すべてがおじゃんだ」。そうささやく悪魔の声が、ユミの心に突き刺さったのです。「そうね・・・これからどうやって暮らしてゆけばいいのかしら」。唇は青みを増し、気丈にテーブルの上に器を並べました。

寝室から、夫がパジャマ姿で出てきました。夫は何も言わずにテーブルに腰掛け、並べてある朝食の前で手を合わせます。ユミも腰掛け、同じように手を合わせ、2人とも箸を取りました。ご飯とかぼちゃのお味噌汁、筑前煮に納豆と、豚ロースのねぎ焼き。デザートはヨーグルト・・・。

(今日はこんなに食べものもあるけれど、いつまでそれも続くかしら。)ユミの瞳はかげりました。ユミもパートに出ておりましたが、そのお給料は光熱費を払ってしまえば消えてしまうほどの、ささやかなものでした。また、夫がずっと家にいて、時に頭を抱えたり、ぶつぶつとつぶやきながら求人雑誌に目を落とす姿を一日中見続けなくてはならないのは、つらいことでありました。

小さな家に悪魔の影が忍び寄り、少しずつ出口のない檻が組み立てられてゆくようで、それはあまりに恐ろしいことでした。なぜなら、悪魔の檻は「絶望」や「落胆」で出来ており、「希望」や「夢」が入り込まないように換気口もついていないのですから。悪魔は人の心に付け込み、「不安」や「心配」の隙が出来るや否や、そこに足場を組んで着々と住を構えます。恐ろしいささやきを響かせて、人の恐怖をあおりながら・・・。

ユミは次第に食欲も落ち、原因の分からない微熱が続くようになりました。夫が起きてくるだけで、頭痛がするようになっていました。ずっとやめていたタバコにも手を出し、その本数は日増しに増えてゆきました。小さなことでいら立って、夫を責め立て、自分を嫌いにもなりました。

「たすけて・・・」。ダニエルは、悪魔に足場を固められた小さな家を見つめ、つぶやきました。「あなたはきっとこの策略から抜け出すことができるでしょう。しかしあなた自身の力で、この策略を打ち壊さなければならないのです」。悪魔はダニエルの気配に気付いてつぶやきました。「この家はもはや私の手の内に落ちています。あなたに何ができるのでしょうか」

悪魔の笑みが、夜の深みに広がります。家の花壇に咲いたばかりのチューリップたちも、その笑みにのまれるようにこの晩のうちにしおれてしまいそう。ユミの眠りの中にもその笑みは忍び寄り、ユミは嫌な汗をかきながら、歯を食いしばって寝返りを打ちました。

脂汗にまみれてユミは目を覚ましました。その汗は、なにか恐ろしい物の粘液のように感じられ、飛び起きてお風呂場に行き、熱いシャワーを浴びました。お湯に打たれながら、しゃくりをあげて泣きました。ひとしきり泣いて心が落ち着くと、ラベンダーのシャンプーで長い髪を洗いました。体もゴシゴシと泡でいっぱいにして洗います。そういえば、もう何日もシャワーも浴びていなかったことに気付きました。

湯船に入ってお湯で顔をぬぐうと、浴槽の上の小窓から風が吹き、ユミの頬をなぜました。気が付くと、湯船に1枚の桜の花びらが浮かんでおりました。それはまるで、見えざる何かが、「大丈夫、そばにいるよ」そう言ってくれたように感じました。

そういえば、今は桜の季節です。毎年大好きだった桜の季節でありましたが、今年は桜を少しも見なかったことに気付きました。透明な湯船に浮かぶ花びらは、ほのかなピンク色。ゆらめきながら、ユミの心を少しずつ解きほぐすようでした。「そうだ、明日は夫と桜を見に出かけよう」。そう、思い立ちました。

お風呂を上がると、体中から花の香りがして、気持ちは晴れやかです。まだ少し早いけれど、久しぶりにアールグレイの紅茶をゆっくり飲みたくなりました。お湯を沸かしながら、ダイニングのカーテンを開けました。まだ暗みがかっている空に、朝日が昇ってゆく様子を見つめてみたくなったのです。

空は藍色。藍色の空に枯れた木々がコントラストをなしています。まだ灯っている街灯は虹色の輪っかで包まれており、鳩の鳴き声がどこからか聞こえてきました。クルッククー、と喉を鳴らす声さえも、いとおしく思えます。こんなに優しい気持ちは久しぶりでした。いつの間に、自分は世界から取り残されていたというのでしょう。世界はユミが心の暗闇にふさぎ込んでいる間も、こんなふうに命にあふれた毎日を繰り返していたというのに。

アールグレイの紅茶がにじんで、複雑な香りを放っています。空は藍色と青のはざまの言いようのない美しい色に染まっていました。紅茶を一口すすると、ユミはなんだか眠くなり、子どものようにテーブルに突っ伏してうつらうつらとしてきました。

不思議です。何にも心配などないような、そんな気持ちが広がるのです。眼差しを感じていました。その眼差しは、まるで祈りのようにユミを愛し、尊ぶような眼差しなのです。その眼差しの主は神様・・・そしてダニエルでした。ダニエルはうつらうつらとするユミの隣に腰掛けて、静寂に溶け込むささやきで話しかけていたのです。

「私の主人である神様が、こう言っておられるのです。『空の鳥を見なさい。種まきもせず、刈り入れもせず、倉に納めることもしません。それでも、あなたがたの天の父は養っていてくださいます。あなたがたはその鳥よりも、ずっと価値があるではありませんか。あなたがたのうちだれかが、心配したからといって、少しでも自分のいのちを延ばすことができるでしょうか。なぜ着るもののことで心配するのですか。野の花がどうして育つのか、よく考えなさい。働きもせず、紡ぎもしません』と(マタイ6:26~28)。・・・空の鳥がそうであるように、野の花がそうであるように、神様ご自身があなたがたを育てて養ってくださいます」

ユミはふと窓辺の花瓶に目を留めました。もう何日も水を替えてやらなかったというのに、ピンク色のカーネーションは咲き誇っておりました。ユミが忘れている間も、カーネーションを咲かせ続けている大いなる力は、ユミさえも守ってくださる、そんな気持ちが沸き起こるのです。熱すぎたアールグレイの紅茶も、ほどよく冷ましてゆく、その力はどこから来るというのでしょう。それは自然というにはあまりにも、深い意思を持ったものであるようでした。

「こんな所で寝ていたら風邪ひくぞ」。夫の声に目を覚ましました。窓からは明るい光があふれており、部屋中に注いでおりました。夫はキッチンを眺めて、何も用意されていないことに気付くと、「たまには外に食べに行こうか」と言いました。ユミはふと、「おにぎりを作るから、桜を見に行きません?」と口走っておりました。

ユミはバッグにおにぎりと水筒を入れ、玄関を出ると、久しぶりに夫の手を握りました。夫は戸惑いながらもうれしそうにはにかみました。桜の咲く公園に出ると、もう葉桜になろうとしている頃でした。花びらのわきっちょから小さく新芽を出しています。

ユミは花を見上げて、「この際だから、旅に出るのもいいと思うの」と言って夫を驚かせました。「遠い町や知らない所に行って、見たこともない景色を見たいわ。こんなに一緒にいられることもないんだから」。ユミは見てみたくなったのです。神様を信じずにはいられなくなる・・・そんな自然のありさまや、さまざまないのちの生きるさまを。「それもいいかもしれないな」。夫もまんざらでもなさそうです。

桜の花びらがひらひらと落ちて、地面をピンク色に染めてゆきます。降り注ぐ光はユミたちを照らし、その光は、まるで言葉のようでした。いいえ、この世界のすべて、野に咲く花も、夕闇の空も、川面の鳥たちも、皆歌っているのです。神様の言葉を。・・・聞こえますか?

<<前回へ     次回へ>>

◇

星野ひかり(ほしの・ひかり)

千葉県在住。2013年、友人の導きで信仰を持つ。2018年4月1日イースターにバプテスマを受け、バプテスト教会に通っている。

■ 星野ひかりフェイスブックページ

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
  • ツイート

関連記事

  • 続・背徳の街のマリヤ~神の花嫁~(1)ま白い光 星野ひかり

  • 続・背徳の街のマリヤ~悪魔の花嫁~(1)「たすけて」 星野ひかり

  • 背徳の街のマリヤ(1)暗く深い闇 星野ひかり

  • はっつぁんとかおる姫(1)知っている景色 星野ひかり

  • のりぼと神様(1)のりぼという少年 星野ひかり

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • Gゼロ時代の津波石碑(3)日中韓、泥沼化する「桜の起源」論争 山崎純二

  • 篠原元のミニコラム・聖書をもっと!深く!!(233)聖書と考える「キョコロヒー」

  • シリア語の世界(27)シリア語旧約聖書の各書名と1章1節の和訳 川口一彦

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(225)エンディングを伴走して日本宣教を進めよう! 広田信也

  • ヨハネの黙示録(4)死とハデスの鍵 岡田昌弘

  • 賢い時間の使い方「ゆっくり、今すぐに」 菅野直基

  • シリア首都で教会狙った自爆テロ、25人死亡 現地のキリスト教徒ら、さらなる暴力懸念

  • ワールドミッションレポート(7月2日):バーレーン 湾岸諸国における霊的な戦略拠点

  • ワールドミッションレポート(6月29日):北朝鮮 大胆な一歩、北朝鮮で執り行われた秘密の洗礼式(3)

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 米国の福音派牧師は半数近くが兼業している 調査で判明

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(225)エンディングを伴走して日本宣教を進めよう! 広田信也

  • ヨハネの黙示録(4)死とハデスの鍵 岡田昌弘

  • シリア首都で教会狙った自爆テロ、25人死亡 現地のキリスト教徒ら、さらなる暴力懸念

  • 花嫁(28)伝道の思い 星野ひかり

  • 全ての人の主イエス・キリスト 万代栄嗣

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(7)人は「単独者」である 三谷和司

  • 篠原元のミニコラム・聖書をもっと!深く!!(233)聖書と考える「キョコロヒー」

  • ワールドミッションレポート(6月29日):北朝鮮 大胆な一歩、北朝鮮で執り行われた秘密の洗礼式(3)

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 米国の福音派牧師は半数近くが兼業している 調査で判明

  • 篠原元のミニコラム・聖書をもっと!深く!!(233)聖書と考える「キョコロヒー」

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(225)エンディングを伴走して日本宣教を進めよう! 広田信也

  • 全ての人の主イエス・キリスト 万代栄嗣

  • ヨハネの黙示録(4)死とハデスの鍵 岡田昌弘

  • シリア首都で教会狙った自爆テロ、25人死亡 現地のキリスト教徒ら、さらなる暴力懸念

  • Gゼロ時代の津波石碑(3)日中韓、泥沼化する「桜の起源」論争 山崎純二

  • 花嫁(28)伝道の思い 星野ひかり

  • ワールドミッションレポート(6月30日):インドネシア 静かに進む魂の変革

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.