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背徳の街のマリヤ

続・背徳の街のマリヤ~悪魔の花嫁~(1)「たすけて」 星野ひかり

2019年8月2日22時08分 コラムニスト : 星野ひかり
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「お父さん、まだ帰ってこないのかしら」。マリヤは、不安げに窓の外をのぞきました。「大丈夫よ。寄り道をして、マリヤにプレゼントでも買っているのかもしれないよ」。そう言って笑う母親は、台所でコロッケを揚げています。マリヤはそわそわとして、カーテンを握りしめてつぶやきました。「それにしたって、遅いわ」

今日はマリヤの誕生日です。お母さんは、マリヤの大好きなコロッケを、10個も20個も揚げていました。マリヤはテーブルの上を片付け、布巾をかけました。そしてチェックのクロスをかけると、マッチで火をおこして、テーブルの上のランタンに明かりをともしました。

そして、愛しい人に語らうように、つぶやきました。「あなたがたは、世の光である。山の上にある町は隠れることができない。また、あかりをつけて、それを枡の下におく者はいない。むしろ燭台の上において、家の中のすべてのものを照らさせるのである」(マタイ5:14、15)。そしてじっと手を組み、少しの間祈りました。

今日でマリヤは16歳になります。背徳の街からマリヤが帰ってきてから、早2年が過ぎておりました。帰ってきてからというもの、父はマリヤと共に聖書を学びました。マリヤは父に、背徳の街で聞いた「神様の不思議な声」の話をしました。父はじっと耳を傾け、そして熱心にマリヤに聖書を教えてくれるようになったのです。そのあまりの熱心さに、母はあきれるほどでした。母は聖書にあまり興味を持ちませんでしたが、マリヤも父も、生まれ変わったかのように謙遜でよく自分を省みる人と変わっていったので、それは不思議そうに眺めていました。

父はよく働くように変えられて、あれほど好きだったお酒もやめました。マリヤが庭で育てた花などを、父はリヤカーに乗せて隣町まで売りに行きます。マリヤは母と一緒に育てた花や薬草で塗り薬やお茶なども作りました。それがよく売れており、一家は食べることに困ることはなくなっておりました。

しかし、マリヤは家と庭の外に出ることはほとんどありませんでした。背徳の街での経験はマリヤを大人にし、そして、臆病にしていたのです。悪魔はまたいつ、自分たち家族をつけ狙うか分かりません。安穏としていると、いつの間にか罪の誘惑に陥り、燃えカスになるまで焼き尽くされます。その恐ろしさが身に染みているように、マリヤも父も聖書の言葉を大切に読み合い、身を寄せ合って守り合うように暮らしていました。

「身を慎み、目をさましていなさい。あなたがたの敵である悪魔が、ほえたけるししのように、食いつくすべきものを求めて歩き回っている」(1ペテロ5:8)。その言葉の通り、マリヤは悪魔の気配をよく感じておりました。戸棚の陰に、夜闇の隙に、悪魔の視線を感じていたのです。

悪魔は砂糖菓子のような甘い声でささやきます。「戻って来たっていいんだよ」。そんな気配を感じるとき、マリヤはランタンに火をともし、「ここは主の家です。近寄るのはやめなさい」と悪魔に伝えておりました。

背徳の街でのことも、マリヤはよく思い出します。マリヤは悪魔の虜となり、罪の深い淵まで落ちてゆきました。そして悪魔と親密に語らい、マリヤは命の最後の一滴まで、悪魔にささげようとしていたのですから。その頃のことを、時に生々しく思い出しては、骨までカタカタと震えるのです。

「ただいま」という声とともに、玄関のドアが開きました。マリヤはとたんに明るい顔をして、父を迎えに玄関に走り寄りました。「おかえりなさい。今日もたくさん売れましたか?」。父は帽子を脱ぎながら首を振りました。「だめだな。少しももうけが出なかったよ」

マリヤはそう聞き、うつむきました。すると、父は大きなクマのぬいぐるみを背中のかげから持ち上げて、「だって、マリヤにプレゼントを買ってしまったからね」と言って笑いました。マリヤはクマのぬいぐるみを抱きしめ、母も振り向いて笑顔を見せ、あたたかな笑いにあふれました。

不思議なことです。あれほどに憎んだ故郷であったはずなのに、今はマリヤを守ってくれるあたたかな故郷でありました。寒々しく、色彩のない乾いた暮らしに耐えかねて、家を出たはずでした。しかし、今ではあたたかな光と神様にささげる歌にあふれた、明るい暮らしが与えられていたのです。

毎日庭の花やハーブを手入れして、それを摘んでお茶にします。そして母と2人で、テーブルの上に花や薬草を敷き詰めて、それを煮たり炒ったりして、商品の塗り薬やお茶や香り水を作ります。部屋は花の香りにあふれ、心を満たしてくれました。父は勤勉に聖書を研究して、マリヤに話を聞かせてくれます。いつしかの凶暴な暴君はそこにはおらず、神によって砕かれた、弱く、慈しみ深い父の姿がありました。

そんな守られた暮らしの中でも、マリヤには気がかりなことがありました。それは「背徳の街」の広場で共に暮らした少女やおじさんたちのことでした。新聞には毎日のように背徳の街で起こった事件のことが書かれていました。ねたみの炎が殺人を生み、孤独の炎が自殺を生み、毎日たくさんの人が死んでおり、欲情の炎や高ぶりの炎に焼かれて燃え上がる町の様子は、まるで戦火のようでした。マリヤは背徳の街のことを聞くたびに、心が締め付けられました。まるで悪魔の口から滴る油で人々が焼かれるようで、そのうめきが耳鳴りのように聞こえてくるようでした。そして、その街に今でも暮らしているだろう、広場の少女やおじさんたちのことを想いました。

ある晩など、少女が悪魔の涎(よだれ)で溶けていき、皮膚の溶けた少女の屍と共に広場が真っ赤に燃えている夢を見て、冷たい汗をかいて飛び起きました。「自分だけこんな所で、のうのうと暮らすことが許されるのだろうか」。マリヤは神様に問いました。

(この暮らしも、私がマリヤに与えたかったものなのだよ。)そう神様は優しくおっしゃるようでした。「でも、天のお父様。何よりも、私はあの年端も行かない少女のことが気がかりなのです。たしか名をアンナといいました。アンナは、私が飢えていたときに、食べ物や下着を分けてくれた少女なのです。胸騒ぎがするのです、アンナが無事ではない予感がするのです、どうしてでしょう」。そして、聖句を読みました。

「あなたがたは、世の光である。山の上にある町は隠れることができない。また、あかりをつけて、それを枡の下におく者はいない。むしろ燭台の上において、家の中のすべてのものを照らさせるのである」と。マリヤは震えました。あの街の恐ろしさを、骨身に染みるほどに知っているのですから。そして、そうやって祈るマリヤを、目を細めて笑う眼差しがありました。悪魔はその腕を広げて、背徳の街にまで追いやれば、今度こそマリヤを捕らえ、命の最後の一滴まで搾り取れるのではないかと、心躍らせていたのです。

その晩マリヤは、クマのぬいぐるみを抱きしめて眠りました。しかし何度眠りに落ちても、すぐに目をさましてしまうのです。そんなことを夜通し繰り返し、疲れ果てて朝を迎えました。白い木枠の窓の向こうからは、ジャスミンが花開き、ほほ笑んでいるようでした。マリヤはジャスミンに聞きました。「どうしてこんなに胸騒ぎがするのかしら」。ジャスミンは風に揺れて、遠い背徳の街の方を見上げました。

朝焼け空が怪しく色づき、誘っているように感じました。マリヤは、背徳の街を愛しかけていたことも思い出しました。虚飾に身を飾り、虚栄で身を隠し、高ぶっては自分を特別なもののように思いながら、あの魅惑的な街の自分を嫌いではなかったのです。罪は蜜のように甘く、マリヤは喜んで悪魔から与えられた杯を飲みました。それはまるで麻薬のように、マリヤに快楽を与えました。そうやって骨までしゃぶられて、生きる屍のようになったのです。その時に、差し伸べられた手、現れた光こそが、神様ご自身でありました。

「こんな愛があるのなら、その愛のもとに行ってみたい」。そう思って、神様の手を取りました。そして、それからは、「そして彼らはわたしの民となり、わたしは彼らの神となる」(エレミヤ32:38)という言葉の通り、マリヤは神様の民として生きはじめ、神様はマリヤの神様となってくださいました。

聖書では、人を羊になぞらえます。それは、羊のようにか弱くて、そして目が悪く、すぐに迷子になり、一人では生きてゆけないものだからです。「わたしの羊はわたしの声に聞き従う。わたしは彼らを知っており、彼らはわたしについて来る」(ヨハネ10:27)という言葉の通りに、マリヤはその声を聴いたときに、この方こそが自分の牧者であるということに気付きました。この方についてゆく以外に、自分の力ではどうにも生きてゆけないと思ったのです。人は皆か弱く盲目な子羊です。自分の力で歩こうとしてもつまずいて、つまずく痛みをごまかすために、あらゆる誘惑のとりこになります。神様・・・この牧者を必要としない者などあるのでしょうか。

そんな昼下がりに、郵便屋さんがポストの鈴を鳴らし、見慣れない封筒がはらりと落ちてゆきました。その宛先はマリヤでした。母はポストから封筒を取り出すと、裏庭で薬草を干していたマリヤに手渡しました。

「送り主の名前も書いていないじゃないの。変な手紙じゃないかしら」。母は心配そうな顔で言いました。マリヤはいぶかしみながら封を開けました。いろいろな色のラメで飾られた派手なカードが顔を出します。ポールに絡みつく女性の絵も描いてあります。卑猥(ひわい)なお店の案内状のようでした。裏返してみると、マリヤは目を見張りました。

か細く震えた文字で、一言「たすけて」と書いてあったのです。その時とっさにアンナの顔が浮かびました。なぜでしょうか、アンナに違いないと、マリヤは確信したのです。(つづく)

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◇

星野ひかり(ほしの・ひかり)

千葉県在住。2013年、友人の導きで信仰を持つ。2018年4月1日イースターにバプテスマを受け、バプテスト教会に通っている。

■ 星野ひかりフェイスブックページ

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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