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み使いダニエル

(み使いダニエル)タエのものがたり 星野ひかり

2020年6月18日10時59分 コラムニスト : 星野ひかり
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(み使いダニエル)リカのものがたり 星野ひかり+

たくさんお金がありました。幼いころから、ゆとりのある暮らしからは縁がなかったタエにとって、それはとってもうれしいことでありました。

今日はデパートで高級な生地をいくつも見比べ、蔦の刺繍の生地でカーテンを注文してきました。デパートの店員は、外に出るまでタエを見送ってくれて、まるで自分が特別な人間になったような気がしました。

玄関の鍵を開け、廊下を進むと広いリビングが開けます。高級な家具が上品に並び、あちらこちらに花の生けられたリビングには陽がさんさんと降り注いでおり、それを見渡すだけでタエの心は満たされます。遠い国の王室ご用達の紅茶を淹れると、まるで自分まで貴族の優雅なティータイムにあずかるような気がしました。

時間は有り余っておりますから、(これから手の込んだ夕食づくりでもしようかしら)と、退屈すらも楽しんで、憂鬱(ゆううつ)だって友達でした。ふと立ち上がってみては、壁一面に埋め込まれている鏡を見つめ、軽くポーズをとってスカーフを直します。週に2度、フランス式のエステでお手入れしている肌は、50代とは思えないほどに艶めいており、人に会うたびに褒められます。まるで少女時代を取り戻すように、花やレースや刺繍にあふれた美しい毎日を生きているようで、広い床でくるっと回り、ターンを決めることもありました。

そんな上機嫌な暮らしを与えてくれたのは、3人目の夫でした。タエは、20代に1度、30代に1度、そしてつい数年前と、3度の結婚をしておりました。1人目と2人目の夫の間に子どもを授かり2人の娘がおりましたが、もう2人とも大きくなって各々の暮らしを始めていました。人並みに苦労して育てたつもりであったのですが、2人ともタエを嫌ってか、お金をねだるとき以外、連絡すらほとんどよこさないありさまで、タエも「もう、子どもとは思わない」と意地を張っておりました。

夕食づくりに取り掛かる前に、「この幸せをお友達に話したい」そう思い立って電話を握りしめるのですが、なぜでしょう、この頃友達はほとんど電話に出てくれません。出てくれたとしても、面白くなさそうに相槌を打つばかりで、「お金は私が持つから、一緒に旅行に行きましょうよ」そんな提案をしてみても、「そうね、いつかね」とつまらない返事が返ってくるだけでした。「私の喜びをともに喜んでくれはしないなんて、本当の友達じゃなかったのかしら」そんな気さえするのです。

今夜の夕食は、自家製カッテージチーズの人参サラダと、白身魚のビネガーソース。白ワインによく合う料理です。ちょうど出来上がったころにタエの主人が帰ってきました。

20歳年上の主人は、タエの子どもじみた振る舞いもわがままな注文もいやな顔一つしない穏やかな人でした。今日は、2人で教会に出かけ、夜のオルガンコンサートを聴きに行く予定です。早々と夕食を済ませると、とっておきのお洋服でおめかしをしてお出かけです。タエは本棚から聖書を出すと、スカーフに包んでバックにしまい、高いヒールの靴を履いて主人の腕を取りました。

バレエやオペラも主人は教えてくれましたが、タエは月に1度開かれている教会のオルガンコンサートも好きでした。名高い書物である「聖書」を開き、先生のお話を聞いて、荘厳なオルガンの調べの中で祈る・・・なんだか自分が少しだけ特別な人間になったような気がするのです。

牧師先生は聖書を開き、「あなたがたが祈り求めるものは何でも、すでに得たと信じなさい。そうすればそのようになります」(マルコ11:24)と読み、お祈りを神様は聞いてくださることを話してくれました。オルガンが静かに始まり、祈りの時が始まります。タエも、まわりの人たちと同じように手を組み、頭を垂れて祈り始めました。

「どうか幸せになれますように」。「地震や災害からもお守りください、主人の仕事もこのまま順調でありますように」・・・そんな祈りをつぶやき続けるタエの隣には、タエには見えぬ神様のみ使い“ダニエル”が腰掛けており、頭を垂れて祈りをささげておりました。

やがて、オルガンがやむと、皆そぞろに立ち上がり、教会を出始めました。タエたちもその列に加わって歩いていると、牧師先生が声をかけてきたのです。

「こんばんは。もう何度もお越しくださっておりますね」。タエは盗みが見つかった少女のように怯えました。「ああ、はい。素敵なオルガンで・・・」。牧師先生は優しくほほ笑んで聞きました。「神様を信じる心が、起こされましたか?」

タエは一目散に逃げたい気持ちに駆られました。「いえ、そこは慎重に・・・」。そう言うと、主人をせっついて教会を出ました。(危ない、危ない)と心はつぶやきました。(教会は素敵な所だけれど、ああいう信者と一緒になると思われては困ってしまう)そう息せき切りました。

(神様を本気で信じるなんて、それは現実を見つめられない心の弱者のすることよ。神様っていうのは、いるかいないか分からない存在として、心のどこかに置いておけばいいのよ。)

ダニエルは後ろ髪が引かれる思いで、タエのあとをついてゆき、その心の揺れ動きを見つめていました。

タエは入浴後、ドレッサーの前でお肌を手入れしておりました。鏡に映る自分は、美しく、またオペラや聖書にも精通している教養にあふれた女性であるように思えました。

(教会の人たちはとても真面目で優しそうだけど、堅物な考えでつまらない人生を生きているような気がするのよ。)タエの心はつぶやきました。(まるで、おちおちお洒落もできないし、贅沢だってひんしゅくを浴びてしまいそう・・・お酒を浴びるように飲んだり、明日のことも忘れてはしゃぐことも我慢しなくちゃいけないのじゃない?)

「それではもう行かないかい?」そうささやいたのはダニエル、そして悪魔でした。タエは首を振りました。(いいえ、だって教会って素敵じゃない。「愛」や「悔い改め」や「祈り」・・・嫌いじゃないわ。)「そうだね」。ダニエルも、そして悪魔もそのように言いました。

肌を整え終わったタエは、寝つきの良くなるハーブのサプリを真水で飲むと、シルクのガウンを引きずってベッドに入りました。先に寝ていた夫は、「おやすみ」とタエに布団をかけてくれました。

するとおかしいのです。タエは眠りに落ちた瞬間に、ベッドで目を覚ましました。ごうごうという不穏な音に気付いて見渡すと、天井も壁もルビーのように赤く輝いていたのです。見えない炎が、めらめらと部屋中にたかれ、すべてが焼け落ちてゆくことを感じて、タエは震えました。

そのルビー色の炎の中に、大きな翼を持つみ使いがたたずんでいるのが見えました。「助けて、火を止めて」。タエは声にもならない叫びを発しましたが、そのみ使い自身が炎であることに気付いたのです。

その炎は、タエの家を燃やし、家具や花たちも炎にのまれ、跡形もないがれきの山に変えました。炎はじりじりとタエの肌を焼いてゆきます。自慢の美しさもはげ落ちて、艶めいた黒髪も、焦げて香ばしいにおいを放ってゆきます。隣にはぶざまに焼けただれた夫が助けを求めて手を伸ばしており、タエは「汚い」とその手をはねのけました。半裸のタエは叫びました。すると炎自体が語るように、言葉が響いたのでした。

(あなたがたは裸で生まれ、裸で死んでゆくだけの命ではなかったでしょうか。なにか失ったものがありましたか?)「失ったものですって? すべてよ、すべてじゃない!」(それならあなたは、なにもないのですね。)タエは逆上して叫びました。「そうよ! なんにもなくなったわ!」

(そう、なんにもない。)タエは、その言葉の響きに驚きました。それは責めるのでもなく、ばかにするのでもなく、ただタエの存在をありのままで包むような響きであったのです。まるでまだ見ぬ父や優しい兄が語り掛けてくれたようでありました。

「・・・なんにもない」。(そう、それでいい。)その言葉はただ優しくて、タエを慈しみの眼差しで見つめる美しいみ使いの姿が、声色の向こうに見えた気がしたのです。み使いは優しく訴えます。(なにもなくていい。)

タエは初めて自分を見つけてもらえたような気がして、しくしくと泣きました。「なにもなくても、いいの?」タエは初めて安心できたような気がしました。気が付けば、炎はやみ、暗闇に包まれたベッドルームでタエは身を起こして泣いていました。

(なんにもない。)そんなことタエはよく分かっておりました。何もないからこそ、何かを必要として生きてきました。少しでも見栄えの良いように、少しでも人にばかにされぬよう・・・タエなりに頑張って生きてきたのです。

そんなタエを滑稽だと言うように、娘たちも離れてゆき、友達もいないも同然でした。そのさみしさが胸に押し寄せ、タエは声を上げて泣いていました。

「どうしたんだ」。タエに気付いて身を起こした夫に、タエは甘えるようにしがみついて泣きました。「私にはなんにもないの」。そう言って泣きじゃくるタエに夫は困りながらも、父親が娘にそうするように背中をなぜてくれました。タエの心は次第に落ち着いてきて、夫にしがみつきながら安どして眠りに落ちました。

翌朝、タエはすがすがしい目覚めを迎えました。ベッドの上で伸びをして、床に足を下ろします。「ずいぶん頑張って生きてきたんじゃないかしら」。なんだかそんな気持ちがするのです。一生懸命ガラクタを寄せ集めて身を守っていた裸んぼうの鳥のような自分が、愛おしくさえ思えるのです。

昨夜、天のみ使いに出会ったことを思い出しました。タエを優しく見つめてくれた眼差しを思い出すと、心は甘く満たされます。「なにもなくていい」。そうつぶやくと、ずっと背負っていた重荷がおろせたような気持ちになるのです。

タエは自然に手を組み、頭を垂れると、ふいに祈りが漏れました。「おろかな私をお許しください・・・」。まるで、昨夜の教会の人たちと同じように祈っている自分に驚きました。そしてその時、牧師先生が言っていた「祈りは聞かれる」その言葉の意味が少しだけ分かったような気がしたのです。

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◇

星野ひかり(ほしの・ひかり)

千葉県在住。2013年、友人の導きで信仰を持つ。2018年4月1日イースターにバプテスマを受け、バプテスト教会に通っている。

■ 星野ひかりフェイスブックページ

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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